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第8話 星降る夜の即席宿屋

~寒い夜こそ、ぬくもりはごちそう~


高原の道は、昼間こそ陽射しが心地いいけれど、日が落ちると急に冷える。

「うぅ……空気が冷たすぎる……」

 七海はマフラーをきゅっと巻き直し、白い息を吐いた。


 そんな時だった。道の先に、焚き火を囲む数人の旅人たちの姿が見えた。

 毛布にくるまってはいるものの、肩を寄せ合い、明らかに寒そうだ。


「こんばんは、旅の方ですか?」

「……ああ、そうです。今日は町までたどり着けそうになくて……」

 彼らの吐く息も白く、指先はかじかんでいる。


 ――これは、ほっとけないやつだ。


「よし、ちょっと待っててくださいね」

 七海は腰の万能の道具箱に手を突っ込み、にやりと笑った。


「スキル発動――即席宿屋、建てちゃいます!」


 ぱあっと地面が光り、目の前に木の香り漂うログハウス風の建物が現れた。

 壁は厚く、窓からはあたたかな光が漏れ、煙突からは白い煙が立ちのぼっている。


「……す、すごい……!」

「どうぞどうぞ、中へ」



 中はふかふかのベッドが並び、暖炉にはぱちぱちと薪が燃えている。

 テーブルにはポットとマグカップを用意し、温かいハーブティーを注いだ。


「わぁ……こんなぬくもり、久しぶりだ」

「助かったよ……ありがとう」

 旅人たちはほっと息をつき、冷え切った手をマグカップで温める。


 七海もベッドに腰掛け、暖炉の火を眺めた。

 薪がはぜる音と、湯気の立つハーブティーの香り。窓の外には満天の星空。


「こういう夜って、ちょっと特別感ありますよね」

「ええ、寒かったけど……今は最高です」


 誰かの笑い声が静かに響き、部屋の空気がゆるりと和らいでいく。

 暖炉の火と、人のぬくもりが混ざり合う――そんな夜だった。


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