第77話 古い教会と、祈りのような午後
~静けさの中に、誰かの願いが残っていた~
丘の上にぽつんと建つ、石造りの古い教会。
七海は、道端の看板に導かれて、ふらりと立ち寄った。
「……誰もいないのに、なんか誰かがいる感じがする……」
教会の扉は少しだけ開いていて、中には木のベンチと、色あせたステンドグラス。
光が差し込むと、床に虹色の模様が浮かび上がる。
七海は、そっとマグを手に、ベンチに腰を下ろす。
「……ここ、静かすぎて、逆に落ち着くなぁ」
祭壇のそばには、小さな祈りのノート。
ページをめくると、村の人々が書いた願いが並んでいた。
「家族が元気でありますよう”……明日もパンが焼けますように……」
七海は、道具箱をポン。
“願いのしおり”を取り出して、ノートにそっと挟む。
「これ、願いが風に乗って届くっていうアイテム。ほんのちょっとだけ、役に立つかも」
その瞬間、ステンドグラスがふわりと光り、風が教会の中を通り抜ける。
「……あ、今、誰かの願いが飛んでった気がする」
夕方。教会の鐘が、誰もいないのに一度だけ鳴った。
七海は、宿屋をポンと建てて、縁側でぽつり。
「世界は救えないけど、誰かの願いくらいなら、風に乗せてあげられるかも」
空には、ステンドグラスの色を映したような雲が、ゆっくり流れていった。




