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第76話 山のふもとで、風と記憶と
~静かな場所に、誰かの想いが残っていた~
七海は、ナビ牛の背中の模様を頼りに、山のふもとにたどり着いた。
そこは、木々に囲まれた静かな草原。風が通り抜けるたび、葉がささやくように揺れる。
「……ここ、なんか懐かしい気がする。来たことないはずなのに」
道端には、古びた石碑がぽつんと立っていた。
その表面には、誰かの名前と、短い詩のような言葉。
「風が吹くたび、君を思い出す……誰かの、大切な場所だったのかな」
七海は、道具箱をポン。
記憶の風鈴を取り出して、木の枝に吊るす。
風が吹くと、ちりんと鳴り、ふわりと映像が浮かび上がる。
映し出されたのは、かつてこの場所で過ごした旅人と、その仲間たち。
焚き火を囲み、笑い合い、別れを惜しむ姿。
そして、最後にこの石碑を建てて、風に想いを託した記憶。
「……誰かの“また会いたい”が、ここに残ってるんだ」
七海は、マグを手に、風鈴の音を聞きながらぽつり。
「世界は救えないけど、誰かの記憶くらいなら、そっと守れるかも」
夕方。空が淡く染まり、風が少し強くなる。
風鈴が鳴り、石碑の影が長く伸びる。
七海は、宿屋をポンと建てて、縁側に座る。
「……この場所、誰かにとって大切だったなら、私も少しだけ、大切にしてみようかな」
風が吹き、草原が波のように揺れる。
七海の旅は、今日も静かに続いていく。




