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第67話 スローな郵便と、届かないラブレター
~時間と想いと、ちょっとした背中押し~
午後の陽ざしが、のんびり郵便村の石畳を照らしていた。
七海は、移動式の宿屋をポンと建てて、村の広場でマグを手にしていた。
「……この村、空気までゆっくりしてるなぁ。郵便屋さんも、徒歩で配達って……すごい」
郵便局の前では、青年が一枚の手紙を手に、じっと立ち尽くしていた。
その紙は、少し黄ばんでいて、角が丸くなっている。
「……出せないんです。3年前に書いたラブレターなんですけど、今さらっていうか……」
七海は、ふと道具箱を開いて、ぽん。
「勇気の封筒、出ました。これ、手紙を入れると、ちょっとだけ背中を押してくれるんです。たぶん」
青年は、戸惑いながらも封筒に手紙を入れ、ポストに投函。
その瞬間、ポストがふわっと光り、風が優しく吹いた。
「……え、今の何?」
「たぶん、封筒が“よし、行ってこい!”って言ったんじゃないかな」
翌日。青年は、村のパン屋で働く女性から声をかけられる。
「……手紙、読んだよ。3年前の気持ち、ちゃんと届いた。ありがとう」
七海は、遠くからその様子を見て、湯のみを傾ける。
「……世界は救えないけど、恋の配達くらいなら、ちょっとはできるかも」
郵便村の空には、ゆっくりと飛ぶ鳥の影。
時間がかかっても、想いは届く。そんな午後だった。




