第5話 空飛ぶ島の空中ピクニック
~ふわふわ空の上で、のんびりランチ~
次の街へ向かう道すがら、七海はふと空を見上げて足を止めた。
「……あれ? 雲……じゃないよね」
白い雲の間に、緑の芝と小さな木々が見える。
しかも、ゆっくりと風に乗って移動しているようだ。
「うわ~、あれ、浮いてる島じゃん! ……どうしよう、行くしかないでしょ」
◆
万能の道具箱から、軽量浮遊マット(※空を飛べる魔法仕様)を取り出す。
ちょっとしたレジャーシートサイズなのに、乗るとふわっと浮かび上がる優れモノだ。
「よし、空中ピクニック、開幕!」
マットに腰を下ろし、ゆるゆると上昇。
やがて浮島に近づくと、そこには小さな花畑と澄んだ泉が広がっていた。
鳥たちが気持ちよさそうに羽を休め、島の端からはふわりと雲が流れ落ちている。
◆
「せっかくだから、ご飯もここで」
万能道具箱からは、サンドイッチ、フルーツ、紅茶ポットを取り出す。
ついでに、風よけ用の透明ドームも展開。
――これで空の上でも快適空間、完成。
紅茶の香りがふわっと広がり、サンドイッチのパンはほんのり温かい。
足元には青空と遠くの山並みが広がり、まるで世界を独り占めしているようだ。
「はぁ……贅沢すぎる」
島を通り抜ける風はやさしく、陽の光はちょうどいい温かさ。
七海はサンドイッチをかじりながら、のんびり空の流れに身を委ねた。
◆
食事を終えたころ、浮島の向こうから別の小さな島が近づいてきた。
そこには羊のような、でも空を泳ぐ不思議な生き物が群れで漂っている。
「……あれ、モコモコしてて可愛い。……連れて帰りたいなぁ」
と呟いたが、彼らは「ふわ~」と鳴いて、ゆっくりと雲の向こうへ去っていった。
◆
やがて日が傾き、空がオレンジ色に染まる。
七海は名残惜しさを感じつつも、浮遊マットでゆっくりと地上へ戻った。
「……空の上ランチ、クセになるかも」
そう呟きながら、また新しい冒険へのんびりと歩き出す七海だった。