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第4話 道具屋カフェ、一日限定オープン

~のんびりごはんと夕日タイム~


温泉村を後にした七海は、山を下りて次の街へ向かっていた。

相変わらず特に予定はない。おいしいものと、ゆっくりできる場所があればそれでいい、というゆるゆる旅だ。


「……あ~、お腹すいたなぁ。次の街まで何時間くらいだろ」


そんなことをぼんやり考えていると、道の先で数人の旅人たちが腰を下ろしているのが見えた。

荷物は大きく、顔には疲れと空腹の色。


「どうしたんですか?」


「いやぁ……途中で食料が尽きちゃって。街まではあと半日、持たないかもなぁって」


七海は腕を組んだ。

――本来は私の旅路と関係ない。でも……こういう顔は、放っておけないんだよね。


「じゃあ、食事でも作りますか」


旅人たちは目を丸くした。七海はにっこり笑って、万能の道具箱を取り出す。


「えっ、それ……そんなに大きい荷物、持ってなかったですよね?」

「そこは企業秘密ってことで」



まずはテーブルと椅子をぽん、と設置。

次にミニ焙煎機、ミル、コーヒーポット、そして袋からコーヒー豆が登場。

「うわ、いい香り……」と旅人たちの目がさらに輝く。


「せっかくだから、コーヒー淹れますね。あと……あ、焼き立てパンもある」


袋からは、湯気の立つ丸パンやバゲット、自家製ジャムまで出てくる。

一人の旅人が「なんでも出てくる魔法の箱か……」と感嘆した。


焙煎した豆を挽く音が心地よく響き、やがて濃く甘い香りがあたりを包む。

七海はコーヒーを丁寧にドリップし、パンにはたっぷりとバターを塗る。


「はい、お待たせしました。カフェ成瀬、本日限定オープンです」



旅人たちはパンにかぶりつき、コーヒーをすする。

「はぁ~、生き返る……」「これ、街の店でも飲めない味だよ」

七海は「出世払いでお願いします」と笑って、自分もコーヒーをひと口。


空はオレンジ色に染まり、遠くの丘が金色に輝く。

みんなでただ黙って夕日を眺める時間が流れる。


「……こういうのも、悪くないですね」

「ええ、また会ったら、ぜひ開店してください」


片付けを終え、七海は「さて、今日もよく働いた」と伸びをした。

次の街まではまだ少し歩くけれど、心はほっこりと温かい。


夕日の中、一日店長ののんびり旅は続く――。

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