第34話 ぷるりん、またね
~再会はぷるぷるご挨拶~
朝。七海は湖のほとりで湯気の立つマグを手に、ぼんやりとした時間を楽しんでいた。
万能の道具箱から取り出したのは、ハーブティー。
森の香りと混ざって、なんだか胸の奥までやわらかくなる。
「ふわぁ……こういう朝、最高だなぁ」
――そのとき。
足元で「ぷるっ」と小さな音がする。
「え?」と下を見れば……透明な青がぷるんと揺れていた。
「……ぷるりん!」
かつて森で迷子になっていたスライムが、七海の前にちょこんと跳ねていた。
「覚えててくれたの?」
七海が声をかけると、ぷるりんは全身を小さく震わせて「もちろん!」とでも言うようにぴかぴか光る。
嬉しくなった七海は、道具箱から甘い果実ゼリーを取り出した。
「これ、食べる?」
ぷるりんは飛び跳ねてゼリーに吸い寄せられ、嬉しそうにぷるぷる震えた。
「やっぱり甘いの好きなんだね」
二人(?)で湖畔に並び、七海はハーブティー、ぷるりんはゼリー。静かなピクニックの時間が流れる。
やがて、湖の向こうからぷるぷる仲間たちが迎えに来た。
ぷるりんは七海の足元にぺたりとくっつき、名残惜しそうに揺れる。
「大丈夫。また気まぐれに遊びに来てよ。私はどこにでも宿を建てちゃう旅人だからさ」
そう言って七海が笑うと、ぷるりんも小さく「ぷるっ」と鳴いて返事。
仲間のスライムたちと一緒に、湖の水へとぽちゃんと消えていった。
「……ふふ、今日の予定もこれで大成功って感じだな」
湖畔には、再び鳥の声と水音だけ。
けれど七海の心には、確かにぷるりんの温かい余韻が残っていた。
「さて、次はどんな“ぷるぷる”が待ってるのかな〜」
七海は空を見上げ、のんびりと宿をしまい込み、また歩き出した。




