第3話 温泉村と湯加減チート
~異世界温泉開拓隊、出動します!~
旅の途中、山道を抜けた先で、七海は温泉村にたどり着いた。
「おっ、あれはもしや温泉村……らしいけど、なんか静かすぎない?」
温泉好きとしては素通りできないけど……
七海は村の入口で立ち止まり、覗き込んだ。
見た目はのんびりした田舎の村。でも、湯気はまったく上がっていないし、どの家も元気がなさそうだ。
宿の暖簾をくぐろうとしたその瞬間――
「……あれ?」
店先には『臨時休業』の札。通りを歩いていたおばあさんに聞いてみると、事情が判明した。
「最近、温泉の源泉が突然止まったしまってねぇ。村の商売も立ち行かず、みんな元気なくなったしまったのよ……」
「えっ……それは一大事じゃないですか」
温泉村からお湯がなくなったら、ただの山間の村じゃない。
七海は腕を組み、ちょっとだけ考えた。
――まあ、本来は自分に関係ない。でも……温泉、入りたいし。
「わかったわ!私に任せて!」
万能の道具箱から取り出したのは、小型の蒸気検知器。見た目はドライヤーと掃除機を足して二で割ったような謎の道具だ。
「こう見えて総務部出身、設備トラブルはちょっと得意なんですよ」
村人の案内で裏山に向かい、地面に向けて検知器を構える。
数分後。
「……おっ、このあたり反応あるわね」
村の裏山のふもとで、ほんのり温かい場所を見つけた。
「よーし、ここを掘り進めていくわよ~」
チートの力を駆使して、軽々と岩を動かし、地下を調査する七海。
地面をスコップで掘ると、じわっと温かい空気が上がってくる。
さらに掘り進めると――ぷしゅうっと音を立て、温泉水が噴き出した。
「やった、新しい源泉ゲット!」
村人たちも駆けつけ、みんなで大喜び。
◆
数時間後。村の浴場には再び湯気が満ち、湯船からは心地よいお湯の音がちゃぽんちゃぽんと響く。
「おお……これこれ、この香り……」
七海は肩まで浸かり、ほうっと息を吐いた。
外では村人たちが笑顔で湯加減を確かめ合っている。
「この温かさ……あなたが?」
「いやぁ、たまたまですよ。出世払いで入湯料いただきますね」
冗談を言いつつ、湯上がりにミルクを一気飲み。
「ふう~、これだから温泉はやめられないわ」
夕焼けに包まれた温泉村をあとにし、七海はのんびりと山道を下っていった。
「次はどこに行こうかな~」
のんびり温泉開拓隊、今日も元気に出発した。