第17話 間違いだらけの勇者召喚
~いやだから戦いませんって!~
城下町をのんびり歩いていた七海。
突然、地面に光の魔法陣が広がり――
「おわっ、なにこれ!?」
気づいたら王城の玉座の間に立っていた。
目の前には王様と偉そうな人たち。
「おお……ついに現れたか、伝説の勇者!」
「……いや、間違えてません? 私、ただの旅人なんですけど」
「謙遜するな。勇者よ!」
「いや、ほんとに。戦闘能力ゼロです。モンスター見たら即逃げます」
必死で否定する七海だったが、なぜか聞いてもらえない。
試しに道具箱からお茶とクッキーを出すと――
「な、なんと……癒やしの聖餐……!」
「伝説に語られる“心を安らげる供物”!」
「いやいやいや! ただのおやつだから!」
城中の人々は勝手に盛り上がり、七海は“支援系最強勇者”という称号を授かってしまった。
「勇者さま、どうかこの国を導き給え!」
「いや導かないってば!」
結局その日は、豪華なディナーとふかふかベッドだけ堪能して、こっそり退散。
「……勇者扱いとか荷が重すぎるでしょ。私はただ、ゆるゆる旅してたいだけなのに」
そうぼやきながらも、もらったお土産の“高級チーズ”だけはちゃっかり道具箱に収める七海だった。