第15話 旅は続く、どこまでも。のんびりと。
~世界は広くても、歩幅はマイペース~
昼下がり。七海は、ふと立ち寄った村の小さな茶屋で湯のみを手にしていた。
窓の外には、畑のあぜ道を行く村人や、干し野菜を裏返すおばあさんの姿。
「はぁ……平和っていいなあ。もうずっとここに住んじゃおうかな……いや、やっぱり移動式の家持ってるし」
そんなとき、隣の席で耳に入ってきたのは、どこか聞き覚えのある名前。
「あのリリィって魔法使い、この前、大会で優勝したらしいぞ」
「へぇ~、あの少し寂れてた温泉村、今結構人気なんだってさ」
どうやら、以前旅先で出会った仲間たちの近況らしい。
七海は思わず、湯のみを手ににっこり。
「みんな、自分の道を歩いてるんだなぁ……私の影響がちょっとはあったのかも。いや、きっと偶然だな」
◆
茶屋を出て、のんびり村を歩く。
井戸端では、子どもたちが水遊び中。
「おねーちゃんも入る?」と誘われたが、全力で丁重に辞退した。
「だって、今全身ずぶ濡れになったら、荷物ごと洗濯になっちゃうからね」
畑道を抜けると、心地よい風が頬をなでた。
草の香りと、どこか甘い花の香りが混じっている。
「……こういう匂い、ずっと覚えてたいなあ」
◆
村の出口で、小さな犬がとことこ近寄ってきた。
足元にまとわりつき、尻尾をぶんぶん。
「……もしかして、また飼い主と間違われてる?」
(猫耳の町のことを思い出し、軽くため息)
犬はしばらく七海の後をついてきたが、やがて村の青年が迎えに来て連れて帰っていった。
「また来てやってくれよな!」と手を振られ、七海も振り返して手を振る。
◆
こうして今日も、小さな出会いと笑いがあった。
世界を救うわけじゃない。でも、ほんの少しだけ、誰かの人生に足跡を残せたかもしれない。
「さて、次はどこ行こうかな……パンが美味しい町もいいし、肉も捨てがたい……」
そんなことをつぶやきながら、七海はまた気ままに歩き出した。
空は広く、道はどこまでも続いている。
一旦息抜きします―