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第14話 静かな湖畔で、ただ釣るだけの休日

~魚が釣れなくても、心は満たされる~

今日は旅の予定も用事もない。

「よし、今日は湖で一日中のんびりしよう」

七海は万能の道具箱から釣り竿を取り出し、湖畔のほとりへ。


水面は鏡のように静かで、時折小さな波紋が広がる。

近くの木陰には、鳥が一羽、じっと様子を見ている。


「ふふ、今日は誰とも話さず、ひたすら釣り……贅沢だなあ」


糸を垂らし、湖面を眺める。

……数分後。


「……釣れない」

いや、焦らない。今日は“釣る”よりも“ぼーっとする”のが目的だ。


風が頬をなで、水音がさらさら耳に心地いい。

七海は竿を持ったまま、うとうと……


――パシャッ!

「え、今のアタリ!? …あ、葉っぱか」



昼頃。おにぎりを頬張りながら、七海は湖を眺める。

「釣れないけど、おにぎりは裏切らないなあ」

足元には、どこからともなくやってきたアヒルが二羽。

「え、君たち魚じゃなくておにぎり狙い? だめだよ、これは私のランチ」


アヒルたちは諦めず、七海の横でずっと座り込み。

結局、おにぎりの端っこをちょっとだけ分けてあげた。



夕方。

「……結局、一匹も釣れなかったなあ」

でも、なぜだろう。胸のあたりはふんわり満たされている。


湖面に夕日が映り、風が少し冷たくなる。

アヒルたちは羽をばたつかせながら湖へ戻っていった。


「まあ、釣果ゼロでも心は大漁ってことで」

七海はそうつぶやき、釣り竿を道具箱にしまった。


湖畔には再び、風と水音だけが残った。

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