第10話 迷子の子ウサギ、森へ帰る
~小さな冒険も、家族のため~
森の小道をのんびり歩いていた七海は、草むらからかすかな「きゅるる…」という声を聞いた。
「ん……? あれは……泣き声?」
そっと覗き込むと、そこには小さな子ウサギが震えていた。毛はふわふわだけど、目は不安そうに見開かれている。
「わぁ、どうしたの?」
子ウサギはピョン、と後ろに跳ねると、茂みの向こうに逃げようとした。
でも、森の中には小さな魔獣の足跡もあり、危なっかしい。
――これは放っておけない。
「大丈夫、大丈夫。私に任せて」
七海は万能の道具箱を開き、まずは「子ウサギ用ブランケット」と「魔獣注意ベル」を取り出す。
ベルをチリンと鳴らすと、魔獣は驚いて森の奥へ逃げていった。
「ほっ……一安心」
子ウサギは安心したのか、七海の膝にちょこんと乗ってくる。
しかし問題はここからだった。
母ウサギの居場所がわからない。
「うーん……地図と足跡センサーがあれば……」
七海は再び道具箱をまさぐる。
ごそごそ……「よし、出てきた!」
地図は森全体の簡易マップ、足跡センサーは……非公式だけど、確実に小動物の足跡を追える便利アイテムだ。
七海は子ウサギを膝に乗せたまま、センサーを森の地面に置くと、ピコピコと赤い光が足跡を追い始める。
「おお、こっちだね」
小道を進む七海と子ウサギ。途中、木の枝にひっかかった帽子を見つけたり、謎のきのこに驚いたりしながらも、のんびり進む。
やがて小川のそばで、ふわふわの大きなウサギの姿が見えた。
「……お母さん!」
子ウサギが勢いよく跳ねて駆け寄る。母ウサギも優しく身を低くして迎える。
「よかった……無事に再会できた」
七海は微笑みながら、その光景を見守った。
森が再び静かになると、七海は子ウサギたちに手を振る。
「動物にも、ちゃんと家族があるんだなぁ……」
そう呟きながら、森を後にする七海の横顔は、ほのかに夜の森の光に照らされていた。
――小さな冒険も、家族の笑顔には敵わない。