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第1話 異世界は突然に……

~成瀬七海のゆるゆる異世界ライフ、はじまりはじまり~


ーーー


眩しい、眩しすぎる!


「……え、ここどこ?」


目を開けた瞬間、成瀬七海は自分が青空の下、見知らぬ草原に寝転んでいることに気づいた。

ついさっきまで会社帰りの電車に揺られていたはずなのに。


「はぁ……これが異世界転生ってやつ? っていうか、スーツで転生って地味すぎない?」


足元には革靴、手には会社支給のトートバッグ。

状況が飲み込めないまま、ふいに、頭の中にやたら明るい女神?の声が響く。


「ようこそ!異世界へ!あなたのストレスフルな生活を労い、この世界では自由を楽しんでね!」

「使命?勇者?魔王?そんなのなしなし! じゃね♪」


「……あ、はい。え、そんな軽いノリでいいの?」


「ああ、そうそう。チート能力を3つ渡しておくね!旅が楽しくなるといいね!じゃね!」


やたら明るい女神は“歓迎のお土産”として3つのチート能力をくれた。


①万能の道具箱(無限収納&なんでも取り出せる、私の秘密兵器)


②超回復(ケガはすぐに治るし、風邪ひかない)


③気軽に宿屋建設(ここ重要。どこでも快適に泊まれる家が建てられる)


「……三つ目、やけにピンポイントじゃない?」


異世界初日。

見渡す限り草原、木陰もない。遠くに山と森が見えるけど、村らしきものはない。


「……これ、夜になったら野宿か……いやいや無理。虫とか寒さとか、絶対イヤ」


そこでふと、女神のくれた三つ目のチートを思い出す。


「えっと……宿屋、建てたい……」


バンッ!!


突然、目の前に木造二階建ての可愛らしい宿屋が現れた。

まるで中世ファンタジーのゲームに出てくるような外観で、窓からはあたたかなランプの光がこぼれ、

煙突からはほのかに湯気がのぼっている。


「うわ……すご、ガチの宿屋だ……」


思わず靴を脱ぎ捨て、浴槽にちゃぽん。温泉のようなお湯が心身を解きほぐしてくれる。

異世界初日、文明的生活が確保された瞬間だった。


「え……なにこれ最高じゃん。ビジホより快適なんですけど?」


数日後。

宿屋の快適さに味をしめた七海は、移動のたびに宿をポンポン建てる生活を送っていた。

そんなある日、川沿いの道で馬車が止まっているのを見かける。

荷台には、ぐったりした旅商人風の男性。


「す、すみません……妻が熱を……この先の町まで、あと半日……」


「うーん、救命行為とかじゃないし……まあ、宿屋くらいなら」


そう言って、川辺に宿屋を出現させる七海。

ベッドに女性を寝かせ、万能の道具箱から薬草茶と温かいスープを取り出す。

超回復は自分限定なので直接治せないが、温かい寝床と食事があれば回復も早いだろう。


「なんと……まるで城の客間のようだ……!」

「あなたは恩人です!」


七海は手を振って笑う。

「いやいや、ただの通りすがりです。……宿代は、出世払いでいいですよ?」


その夜、暖炉の火を眺めながら七海はつぶやいた。


「……戦わなくても、救わなくても、こういうのも悪くないかもね」


外は冷たい風が吹き荒れているが、宿屋の中は今日もぬくぬく。

こうして、七海の“ちょっと役に立つ”日々が静かに始まった。


基本一話完結です

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