クリスマスの夜は
「あーあ、疲れたぁ」
俺は仕事着を片付けながら呟いた。
この日はクリスマス。
スーパーで働いている俺は、ケーキやら惣菜やらの受け渡しを半日もやっていた。
「このあとは予定ってあるんですか~?」
同僚の茉梨がそう言った。
「え、ああ。帰ってメシでも食おうかなって」
そう俺が返すと、茉梨は笑った。
「相変わらずよね、イベントには興味ないって感じは~」
「仕方ないだろ、俺は独りもんだし」
「ごめんごめん~」
ふと気になった事を、彼女に言ってみる。
「そう言う夏川はどうなんだよ。彼氏とかと一緒にとか」
彼女は少し目を反らした。
察した俺は、すかさず「ごめん」と言った。
「……ごめんね、謝らせちゃって」
茉梨はそう言った。
俺はため息をした後……
「もし良かったら、一緒にメシでもどうだ。お詫びとしてさ」
「申し訳ないよ~」
茉梨は手を横に振る。
「一度、お前と話をしてみたいんだ。な?」
そう言うと、彼女は頬を少し赤らめた。
「え、あ、じゃ……一緒にご飯食べよっか」
こうして俺達は荷物を持って休憩室を出た。
▪▪▪
外はすっかり暗くなって、雪もちらちらと降っている。
「ねえ、浜田くん」
「なんだ?」
茉梨は頬を指で少し掻く。
「私ね……実は昨日、彼氏を振ったのよ」
まさかのカミングアウトだ。
「えっ?なんでまた……ああ、嫌なら言わなくても大丈夫だけど」
彼女は「あはは」と笑いながら、
「イブを一緒に過ごそうかなって思ったらさ、別の女の人と歩いていたのよ。二股ってやつで~」
「うわあ、そりゃ最悪だな。振って正解じゃん」
「そうでしょ、そうでしょう~?本当に最悪だったよ~」
俺はふと冷静になった。
どうしてこの話をしようと思ったのか……
それを彼女に伝えてみる。
「ああ、ね……彼氏の話をしたときに、一瞬ドキッとしちゃってさ~。そしたら、浜田くんはすぐに謝ったのを見て、貴方なら話しても大丈夫かなって思ったのよ~」
「それって、俺を信用したって事、だよな?」
「そうよ~。仕事も真面目にやってるし、性格も悪くないって思ってるからさぁ~?」
それを聞いた俺は、なんだか嬉しくなった。
だったら……
「なあ、夏川」
「なに~?」
俺は、茉梨の手を取った。
「俺、お前の事もっと知りたくなった。仕事の終わりとか、話をしてみたいと思うんだが……」
そう言うと、彼女は笑顔を見せた。
▪▪▪
あれから数年後、俺と茉梨は籍を入れた。
クリスマスの日は、良い思い出……と言っておこうか。
絶対に、幸せにしてみせるからな。




