リンゴ
「夢でリンゴを見たから」
わたしはお母さんにお願いした。
丸くて赤くて甘いリンゴ。それをわたしは夢で丸々一個食べていた。
「リンゴだけだと身体に悪いよ」
お母さんは、朝ご飯にウサギのリンゴを切ってくれた。
カワイイけれど、これじゃない。
わたしはリンゴをまるっと食べたい。
「夢ってね、願いごとが見れたり、記憶の整理が見えるの」
お母さんは、夢の説明をしていた。
つまり、わたしはリンゴを食べたいから夢でリンゴを見た。
でも、リンゴの夢を見たから、リンゴを食べたくなった気もする。
モヤモヤしていると、わたしは学校に行く時間になった。
丸いものってなんで、こんなに心惹かれるんだろう。
心の形もきっと丸いんだ。
夢の世界も丸いんだ。
地球も丸いんだ。
丸々、正解したらマル。
赤色もいい色。
スベスベなのもいい手ざわり。
あ、リンゴっ。
と思ったら、赤い風船が空に上がっている。
リンゴだったら落ちてくるのに。
わたしは今日はリンゴを得れなかった。
お小遣いでリンゴを買おう。
そう思って、眠りについた。
わたしは、大きなリンゴをかじっていった。
わたしは小さな虫のように、リンゴに穴をあけていた。
穴あきリンゴをずっとシャリシャリと食べていた。
大きなリンゴを食べて、家のような形にしていく。
これがわたしの地球なんだ。
穴のあきすぎたリンゴが崩れた。
それで、わたしは目を覚ました。
「お母さん、リンゴを崩さないで、食べたい」
「そんなことできないわよ」
キレイに切られたリンゴが、さらに置かれていた。
同じサイズのリンゴが、広げた花のように飾られている。
「リンゴって見てるだけでも楽しいね」
「そうね。でも食べないと変色して傷んじゃうよ」
リンゴはおいておくと茶色くなってしまう。
塩水につけると、長持ちするらしい。
海水のおかげで地球は茶色くないの、と聞くと、そうじゃないよ、と返された。
「クリスマスツリーにリンゴがある」
「食品サンプルのリンゴ。ちょうどいいのがあったから買っちゃった」
ツリーの下のモコモコの雪に転がるリンゴを手に取る。
「リンゴの匂いがしない」
「食品サンプルだから。偽物なの」
見た目はリンゴなのに。触った感じもなんだか違う。
そういえば、夢のリンゴはどうだったんだろう。
満足してない。美味しくなかった?
偽物だから。
「サンタさん、本物のリンゴと夢の中のリンゴの味比べをしたいです」