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第5話(完)

   祝日。今日はみんなとショッピングに行く。何買おうかな? それと、彰くんと未織ちゃんのことも考えないと。




「お待たせっ!」


「よう、宮下」


「お姉ちゃんおそーい!」


「こんにちは、宮下さん」


   まだ集合時間になっていないのに、もう雅人くんと未織ちゃんと彰くんが来ていた。


「ごめんね未織ちゃん、用意に手間取っちゃって」


   笑って未織ちゃんに言う。視線を移すと、雅人くんがわたしを見ているのに気づいた。


「? わたし何かおかしなところとかある?」


「い、いや! 全然おかしくないぞ!」


   大げさな仕草で否定する雅人くん。


「それにしても、秋吉のやつ遅ぇな」


「え? まだしずるちゃん来てないの?」


「私ならここにいるわよ?」


「「うわっ!?」」


   急にしずるちゃんが出てきてびっくりした。雅人くんもわたしと同時に驚いた。


「ど、どこから出やがった!?」


「何よ、人を化け物みたいに。ずっとそこにいたわ」


   そう言ってわたしたちから死角になっている場所を指さすしずるちゃん。


「…いつからいたんだ?」


「んー…紀野君が未織ちゃんといちゃいちゃしながら来たところから?」


「いちゃいちゃしてねぇよ! しかも、おもいっきり最初からいたんじゃねぇか!」


「だから言ったじゃない、ずっとそこにいたって」


「何のためにそんな…」


「何のためって…からかうために決まってるじゃない」


   さも当然といった顔で答えるしずるちゃん。唖然とする雅人くん。そこまでするかなぁ…とはわたしも思ったけど。


「こんにちは、秋吉さん」


   気を取りなおして、しずるちゃんにあいさつする彰くん。


「しずるさん! こんにちわです!」


   そう言ってしずるちゃんにおもいっきり抱きつく未織ちゃん。わたしと同じくらいの背丈の未織ちゃんを、しずるちゃんはちゃんと受けとめる。


「みんなそろったみたいだし、何か食べようか」


   彰くんがみんなに食事を勧める。


「そうだな。秋吉なんかに構ってないでさっさと…っておい! おれをおいてくな!」




   建物の入り口から移動して、手頃なファーストフード店に入って食事を済ませ、服などを買うためにお店をまわって行く。


「会った時から思ってたんだけど、秋吉さんが髪留めしてるなんて珍しいね」


「そうそう。それに、その髪留めかわいいね」


「しずるさん、すごく似合ってます!」


   彰くんの発言を発端にして、わたしと未織ちゃんが続けて言う。


「そう? ありがとう」


   しずるちゃんは少し照れたように笑った。しずるちゃんが照れ笑いするなんて珍しい。


「ほんとだな…気づかなかった」


   雅人くんはたった今気づいたみたいだ。


「そんなだから紀野君はいつまでたっても…」


   哀れむように言って、途中で言葉を切るしずるちゃん。


「な、なんだよ!? 言いたい事があるならはっきり言えよ!」


   しずるちゃんの物言いに、たじろぐ雅人くん。


「なんでもないわ。気にしないで」


   満面の笑みで言うしずるちゃん。納得しかねる顔をしつつも、押し黙る雅人くん。それにしても、しずるちゃんは何が言いたかったのかな? ちょっと気になった。




「そうだわ。紀野君、ここの店の服着なさい」


   あるお店に入ると、何か思いついたのか、雅人くんにこの店の服を着るように勧めるしずるちゃん。


「…おまえはバカか?」


   わたしたちが今いる店は、女性用の服だけを売っている店だ。


「え? どうして?」


「何不思議そうな顔してんだ! この店の服は女物だろうが!」


「そうよ?」


「わかってるなら、な・ん・で・おれに着せようとするんだ?」


「いいからとりあえず着なさいよ」


「よくねぇよ!」


   ひと通りしずるちゃんと雅人くんが話し終えてから、しずるちゃんがわたしの方まで来た。小声で、雅人くんに女物の服を着るように説得してもらえないか、としずるちゃんに頼まれる。なんでそんなに雅人くんに女物の服を着せたいのか分からないけど、しずるちゃんに頼まれたら断るなんてできない。今までたくさんお世話になったし。 


「あの…わたし、雅人くんが女の子の格好してるのみてみたいなぁ…なんてっ」


「! ほ、ほんとにみたいのか?」


「う、うん!」


「…わかった。着てやるよ」


   しぶしぶといった感じで承諾してくれた雅人くん。…こ、これでよかったのかなぁ?


「これなんかどうだ?」


「さすがね須藤君。用意がいいわ」


   さっそく彰くんがもってきた服を試着する雅人くん。


「お兄ちゃんすっごく似合ってる! あははっ!」


「紀野。おまえって、そんな隠れた才能があったんだな…」


「雅人くん、かわいいよ!」


「さすがね、紀野君」


   みんなは茶化して言っていたけど、わたしは純粋にかわいいと思った。


「な、なんか足がスースーするな…」


   雅人くんが今着ているのはワンピースだ。雅人くんは恥ずかしそうにスカートを抑えている。


「じゃあ今から紀野君は、この格好のままお店をまわるわよ」


「は!?」


「すいませーん。これくださーい」


「えっ!? ちょ待てよおま…」




「これかわいいね」


「こっちもかわいいです!」


「どれにしようかしらね」


   結局、雅人くんはそのままの流れでワンピースを着たままでお店をまわっている。今いるお店は、アクセサリーが置いてあるお店だ。雅人くんと彰くんはいっしょにお店の外にいる。もうすでに、メイクするための道具と靴を買いそろえた。あとは、アクセサリーを買って、雅人くんにメイクを施すだけだ。


「これにしましょうか」


   三人の意見が一致したものを買って、いよいよ雅人くんをメイクする。


「動かないでよ…」


   しずるちゃんとわたしとで交互にメイクを施していく。


「よし出来た! はい!」


「「お~!」」


   彰くんと未織ちゃんが雅人くんの変わりように驚く。


「え? おれ今どうなってんの?」


   みんなで一斉に写メを撮る。


「撮るなぁ!」


   もう撮っちゃった。てへっ。


「で、おれ今どうなってるんだ?」


「紀野君にはみせないわ」


「は? なんでだ?」


「だって、そのほうがおもしろいじゃない」


「…おまえなあ」


  


   そのあとも雅人くんは女の子の格好のまま、みんなで建物内のゲームセンターにいく。遊んでいるとき、わたしたち以外のまわりの人たちの視線が雅人くんに集まっていた。




「そろそろ帰る時間ね」


   しずるちゃんがみんなに伝える。


「今日はすっごく楽しかったです!」


「そうだね」


「わたしも!」


「ええ、そうね」


   未織ちゃんの感想に、彰くん、わたし、しずるちゃんの順に答える。


「…おれはどう言えばいいんだ?」


「雅人くんは、楽しくなかった…?」


「ま、まあ楽しかったけどよ…」


   わたしの質問に、微妙な顔をして答える雅人くん。


「じゃあ、帰りましょうか」


   そうしずるちゃんが言って、みんな帰ろうとする。


「ところで紀野、その格好のままで帰るのか?」


「え?…ああ! す、すぐに着替えてくる!」


   彰くんが気づいて雅人くんに伝える。雅人くんは近くの服屋さんにダッシュ。…違和感無くなってて気づかなかった。


「あと少しだったのに…」


「秋吉! てめぇ覚えてろよ!」


   そのあと、雅人くんが着替えてから、みんなで帰った。



   

   家に帰って寝る前に、今日のことを思い出す。今日もいろいろあって楽しかったなぁ…。あっ! そういえば、彰くんと未織ちゃんとのことすっかり忘れてた…。まあ、楽しそうだったからいいかな? またみんなで遊びたいなぁ…。そしてわたしは眠りについた。




   しずるちゃん、雅人くん、未織ちゃん、彰くん、他のひとたち。みんながいるこんな賑やかな場所が、わたしのいるところなんだと、感じながら―――






        


ここまで読んで下さってありがとうございます。


今後も、何かしらを書き続けていこうと思います。


気が向いたら、後々に書くであろう小説も読んで頂けると幸いです。

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