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★「アレフの記憶」
――俺は時々、夢を見る。
目の前にある二つの影は小刻みに震えながら、今か今かとその時を待っている。
俺はそれを無感動に眺めながら、ただ立ち尽くす。
ふと窓の外に視線を向けると、そこは阿鼻叫喚の地獄絵図。
人々の叫び声と燃え盛る炎の旋律を耳に焼き付けていると、
突如沈黙を破る喧噪が室内に響き渡る。
それはやがて悲鳴に変わると、終いには沈黙へと立ち返る。
伸び切った影は、次第にその姿を変えていく。
それを最後まで見届けた俺は、地面に落ちる五本の蝋燭を拾うと、
燃え盛る炎にその身を委ね、自らの意識と別れを告げる――