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生抜同盟 ―白黒傭兵の冒険手記―  作者: 白崎凪
第一章:王国騒乱篇
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第一話「ステイタスとスキル」

『スフォルツァ帝国』――帝都「スフォルティア」


 大陸の中心部に位置するこの国は、三大国に数えられる列強の一つだ。

 北部には広大な湖が広がり、

 西部には山脈が連なっている。

 南部は見渡す限りの森林で埋め尽くされており、

 その鉄壁の地形配置から〝天然要塞〟と呼ばれている。


 そんな帝都の宿屋の一室――


 二人は緊張の面持ちで鎮座していた。

 

 特にアインは時計に穴が開きそうなほど凝視しており、心做しか鼻息も荒い。

 

「そんなに意気込んでも結果は変わらないだろ」

「馬鹿言え! 俺たちの命運を分ける大事な儀式だぞ!! 

 大体お前は普段から自分の命を軽く見過ぎなんだよ! もっと危機感を持って――」


 いつも通りのアインの説教を聞き流したアレフは、時計へと目を向ける。


「熱弁してるとこ悪いんだが、もう時間だぞ」


 時計の長針と短針――その双方が数字の零を示した時、

 二人の手の甲に青く、そして淡い光が満ち溢れ、瞬く間に文字が記されていく。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


〈名称〉 アレフ

【種族】 人族(ヒューマン)

【体力】 47

【魔力】 42

【攻撃力】 27

【防御力】 29

【魔法攻撃力】 41

【魔法防御力】 61

【敏捷力】 79

【運力】 17

≪スキル≫ 【瘋癲(ふうてん)の詐術師】〖爆破〗「錬成」「軟体化」「跳躍」


〈名称〉 アイン・リベラティオ

【種族】 人族

【体力】 50

【魔力】 26

【攻撃力】 35

【防御力】 82

【魔法攻撃力】 29

【魔法防御力】 31

【敏捷力】 3

【運力】 67

≪スキル≫ 【音速の貴公子】〖変身〗〖毒牙〗「防御力上昇(小)」「隠蔽」「安眠」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「こいつは酷いな……」

「ああ、バランスが悪すぎる」


 互いのステイタスとスキルを見せ合った二人は、思わず愚痴を溢す。


 ステイタスは全八項目、1~100までの数字がランダムに割り振られる。

 またスキルは《白金(プラチナ)》・【(ゴールド)】・〖(シルバー)〗・「(ブロンズ)」の四種類から成り、

 合計1~10個が分配される。


「魔法適正の方がマシだが、肝心の魔法スキルがない。完全に無駄ステイタスだな」


 ランダムに割り振られる関係上、

 無駄となるステイタスやスキルがどうしても生じてしまうのだ。

 この現象は、基本的に魔法関連で起こることが多い。


「俺なんて敏捷3で【音速の貴公子】だぜ? ネタにしても笑えないんだけど……」

「【音速の貴公子】は完全にステイタス依存だからな。

 以前敏捷70オーバーで授かった時は、天にも昇る心地だったのを覚えている」

「勢い余って海にダイブした奴が言うと洒落にならないだろ……。

 ああ、それはそうと〝技能(スキル)教本〟貸してくれないか?」


 技能教本とは、これまでに貸与されたスキルを網羅した一冊の本のことで、

 複数の冒険者や傭兵の協力によってつくられた、この世界における必需品である。


「……買い直しておけと何度も言ったはずだが?」

「いやー、あれ滅茶苦茶高いし……。アレフが持ってるからいいだろ?」

「危機感の無さをお前だけには指摘されたくないな……。――次はないぞ」

「サンキュー! 持つべきものは良き相棒(パートナー)だな!」


 心底嫌そうな顔をしながらも、アレフは取り出した一冊の本をアインへと手渡した。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇ 以下、技能教本より抜粋 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「探査」… 唯一システムの縛りを受けない、すべての生物に備わる危機管理能力。

      自身の周囲に存在する生物を検知できるが、その詳細までは分からない。


「隠蔽」… 自身と触れているモノを透明化する。

  「探査」のセンサーを掻い潜ることが可能だが、

      相手が「探査」スキルを集中的に展開(他の能動(アクティブ)スキルを解除している状態)

      している場合は存在を知覚されてしまう。


【瘋癲の詐術師】… 無差別な幻覚作用。自傷行為が発動条件(トリガー)

          発動者が意図的に解除するか、スキルを失わない限り継続する。

【音速の貴公子】… 敏捷の大幅上昇。上昇率は基礎ステイタスに依存。


〖爆破〗… 爆発を引き起こす。接触が条件だが防御貫通可能。

〖変身〗… 視認した生物の容姿をコピーする。十分につき間隔(インターバル)三十分。

〖毒牙〗… 特殊な毒による状態異常攻撃。

      発動者が解毒するか、スキルを失わない限り継続する。


「錬成」… 物質の変形及び、異なる物質への変換を可能とする。

「跳躍」… 高く跳ぶことができる。

「安眠」… いつでもどこでも快眠不可避。

「軟体化」… 身体を柔らかくする。一分につき間隔三分。

「防御力上昇(小)」… 防御力を少し上げる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「【瘋癲の詐術師】は結構使えそうじゃないか? ただでさえ金は優秀なのが多いんだしよ」

「スキル自体は悪くないんだが、攻撃面が心許ないな。

〖爆破〗は防御貫通のくせに、威力は攻撃依存ときた」

「確かになぁ……。今月は戦場に出るのを諦めるか? それか死体漁り(スカベンジャー)でもやる?」


 ステイタスとスキルの更新は二十一日に一度、深夜零時に行われる。

 その結果次第で、冒険者や傭兵たちは、自身の身の振り方を考えることになる。


「〝鈍足の貴公子〟様に死体漁りが務まるのか?」

「へいへい。じゃあ宿屋に引き(こも)るのか? 前回は行商やって、痛い目見ただろ?」


 そう言うアインは大赤字の末に幕を閉じた、以前の行商を思い浮かべていた。


「そうしたいのは山々だが、今月は休むわけにはいかない」

「どうしてだ?」

「昨日酒場で聞いた話だが、リヴァリエ王国の王が崩御したらしい。

 その隙を狙って近隣諸国の動きが活発になっている」


『リヴァリエ王国』は『スフォルツァ帝国』から見て南西に位置する港市国家で、

 その間には、龍の如く連なる山脈――通称〝龍骨山脈〟が存在している。

 山脈には幾つかの洞窟(トンネル)が開通しており、比較的交通の便が良い。

 

 アレフからの情報を聞いたアインは、少しだけ声の調子(トーン)を落として言った。


「国落としは報酬高いからな……。あんまし気乗りしないけど」

「今更何言ってるんだ? 俺たちはもう綺麗に生きる道は捨てたはずだ」

「時折、この国の民衆が羨ましくなるけどな……」

「この国ですら、いつ襲われてもおかしくない状況なんだぞ? 

 その時何も出来ずに死ぬのが嫌だからって、こんな仕事続けてるんじゃないのか?」

「分かってるよ……。そもそも俺は死ぬことを許されていないんだ……」


 アインは俯き加減にそう言うとすぐに顔を上げ、アレフの顔を正面に見据える。


「これからもよろしく頼むよ、相棒」

「何だ、改まって気持ち悪い。明日は作戦会議するから早く寝るぞ」


 魔道具の一種である(みどり)色のランプ。

 その灯を消すと、外から差し込む月の光がより一層輝いて見えた。

スキルの発現は5歳~


1年=21か月

1か月=21日

1週間=7日 

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