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生抜同盟 ―白黒傭兵の冒険手記―  作者: 白崎凪
第一章:王国騒乱篇
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プロローグ

 人は何故(なにゆえ)生きるのか。

 そんな凡庸な哲学に心を支配されながら、俺は疾走する。

 怪物たちの断末魔と、それに伴う人間の熱き咆哮。

 互いの(もたら)す真紅の血潮に染め上げられた戦場で、俺はあの日の邂逅を思い出す。


「死を望む人間というのは、総じて虚ろな瞳をしているものだ。

 君の瞳はまだ生きることを諦めてはいない。

 どうだ、生の先にある君だけの〝世界〟を見てみたくはないか?」


 何の変哲もない、ありふれた言葉の一つ。

 見るものすべてに衝撃を与える、苛烈な衣装。

 まるで、一人で矛盾という言葉を体現しているかのような人物だった。

 しかし、彼の放つ一言一句が俺の脳内を激しく刺激する――。


「今頃あの旅人は何をしているのだろうか……」

          

         *


「おい、アレフ! 聞いてんのか!?」


 一人の少年の声で俺は思考の檻から解き放たれる。


「悪い、アイン。もう一度最初から言ってくれ」

「お前はいつもそうだよな……。戦闘になるとすぐ自分だけの世界に入りやがる」

 

 深淵の如き黒髪に藍玉色(アクアマリン)の瞳――長身痩躯(そうく)を黒の外套(ロングコート)に包んだこの男の名はアイン。

 本名をアイン・リベラティオという。


 彼は俺の数少ない知人の一人で、()()()相棒(パートナー)でもある。


「いいか、よく聞けよ。俺が風魔法で奴らを誘導する。その隙にお前は背後から剣で――」

「回りくどい真似をする必要があるのか? 近付いていって斬るだけだ」


 俺は跳躍すると一気に加速し、眼前に捉えた「双頭の竜人(ツイン・リザードマン)」の頭を()ね飛ばす。

 竜人はその手に握る湾刀(サーベル)丸盾(バックラー)を構える暇もなく肉塊と化した。


「あーあ……。もういいや」


 何やらアインの諦めたような溜息が聞こえてくるが、意に介さない。


 俺はそのまま方向転換すると、次なる獲物を目指して疾駆する。

 他の傭兵や冒険者の集まるこの場所では、獲物の数は限られているのだ。

 故に一瞬たりとも、時間を浪費する訳にはいかない。


爆風(ウィンドブラスト)!!」

 

 やけくそ交じりのアインの詠唱を聞きながら、

 竜人の放つ剣尖を(すんで)の所で回避した俺はそのまま奴の懐に潜り込み――

 心臓部を穿(うが)ち抜いた。


『グァァァァァアァァ――!?』

『グォォォォォオォォ――!?』


 左右でやや趣の異なる竜人の断末魔を聞きながら辺りを見回すと、

 既にほとんどの依頼(クエスト)受注者達が各々の武器を仕舞い始めていた。


 右手に持っていた瑠璃色の片手直剣(ロングソード)

 その表面に付着した竜人の血を振り払いながら鞘に戻そうとする。


 しかしその瞬間、俺の琥珀色(アンバー)の瞳は遠くに映る、怒れる竜の(かしら)を捉えていた。


「おいっ! 行くなよアレフ!!」

「竜人のボスの御出座(おでま)しだあぁぁぁあ!!」


 アインと冒険者の一人が同時に叫ぶよりも寸刻(すんこく)先――俺の脚は地を蹴っていた。


「後で説教だからな! 覚え――」


 アインの恨み言を置き去りにして、俺はさらに加速する。

 竜人のサイズは通常個体の二倍ほどで、何故か首が三本付いている。


冥界の番犬(ケルベロス)に改名した方がいいんじゃないか?」


 俺は竜人の突貫を左手に装備した篭手でいなすと、

 そのまま奴の脇腹目掛けて、強烈な突きを叩き込んだ。


 流石は頭というべきか、左手に持っていた円盾で防御を試みてきたが――

 健闘空しく盾諸共串刺しとなり、絶命した。


「剣を新調しておいて正解だったな」


 俺は竜人の角を切断すると、アインのもとへと帰還する。

 するとその姿を見ていた傭兵達が――


「あいつ、〝白猟犬(ホワイトハウンド)〟じゃないか?」

「あの銀髪に、白の戦闘服(バトルスーツ)――間違いねえ」


 冒険者と傭兵、さらには合流した死体漁り(スカベンジャー)たちの視線を一身に受けつつ、

 アインに視線を合わせると――


「通常のクエスト時にボス個体を倒しても美味しくないって、何度言えば分かるんだ? 

 どうせなら帝都に誘導して、緊急依頼でも何でも出させればよかったんだ!」

「そんなだから〝黒山羊(ブラックゴート)〟なんていう不名誉な二つ名を付けられるんだぞ?」

「俺は結構気に入ってるんだけど……。

 とにかく、今後は無駄な戦闘禁止だ。貴重な体力を浪費するなよ」

「了解だ。腹黒羊」

「本当に分かってるんだろうな? 白髪頭」


 こんな取り留めもない会話をする程度には、互いの仲は良好な訳だが、

 こうでもないとやっていけない事情がこの世界には多すぎる。


 小国家の乱立から、常に争いが絶えないというのも要因の一つだが、

 それ以上に深刻なのは――



 この世界が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()であるということだ。


アレフ:17歳 アイン:18歳


初投稿です。

少しずつ良くなっていくと思うので、続きも読んで頂ければ幸いです。

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