表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

卓球部の俺がハットトリックを決められるはずがない。

作者: 里 稀美

高3の球技大会。

健一けんいちは午後の出番まで暇を潰そうと、フェンスの外からサッカーの試合を見ていた。


「あんたもサッカー選んでたらモテてたかもね~。」


隣を見ると、幼馴染の真弓まゆみがグラウンドを駆け回る選手たちを眺めていた。


「うっさいなぁ。」


健一が出場するのは、卓球だった。しかし花形のサッカーやバレーボールと比べると、卓球は試合も地味なせいか、観客も少なく、決して盛り上がる競技とは言えなかった。健一は中学時代に卓球部に所属していたという理由から、否応なく出場を強いられたのだ。


「卓球にも”ハットトリック”みたいな、かっこいい用語があればいいのにな。」


健一が口を尖らすと、真弓はケラケラと笑った。


「ハットトリックってずるいよね。もう響きからしてキラキラしてるもん。」


「卓球でも、なんか、かっこいい横文字があれば、脚光を浴びて俺でもモテると思うんだが。例えばラブゲームとか?」


「むりむり!知られてないし!」


相手を0点に抑えることをラブゲームというが、知名度はハットトリックと比べたらまだまだだろう。それに、ラブゲームは相手に失礼だという理由から、やってはいけないのが暗黙のルールだ。


「まあ、諦めなって。いくらオリンピックで金メダルとってても、高校生の球技大会レベルじゃ日の目を見ないよ~。」


そんなに言わなくてもいいじゃないかと健一は思いながらも、確かに自分の実力じゃ、観客を沸かせることは到底無理だなと、素直に諦めた。



丁度、学年一のイケメンが、3点目のシュートを決めて、女子がキャーキャー盛り上がっているところだった。





卓球場に向かっていると、後ろから真弓が追いかけてきた。


「私はかっこいいと思うよ。」

「なにが?」

「は?!だから…」


真弓はうつむいて、ぶつぶつと何か言いながら気まずそうに歩いている。


「どうせサッカー部だろ?結局みんな、ああいうやつが好きなんだよな。」


「…ちがっ!」


真弓が突然立ち止まって言った。

驚いて後ろを振り向くと、真弓は何か言いたげに、両手のこぶしを握り締めている。


「な…なんだよ。」


「わ、私は…!おんなじ奴が3回シュート決めるより、1回…あんたが卓球やってるところ…の方が、見たいって思う…。あんたが卓球してるところ…私は嫌いじゃない…。」


2人とも顔が赤かったのは、夕日のせいだったのだろうか。


その日の試合は1-11と散々だったが、健一は人生で初めて思った。


―卓球部も悪くないか。

青春いいなぁぁぁぁ。甘酸っぱい恋愛もいいですね(温かい目)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 青春いいですね!こんな短編大好きです!ツンデレなセリフが自然に巽さんの声で再生されました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ