3話 遊びって体力がいるんだな
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龍王なんて化け物相手に1人で戦って勝てると思うほど自惚れてはいないわ!
「あ!後ろに珍しい生物が!」
「え!?どこだどこだ!?」
よし、今のうちに逃げよう。地面を思いっきり踏んで全力で駆け出した…のに隣にいるんだけど…
「何もいないじゃんか、嘘つきめ」
龍王はそういうと俺の額に親指で押さえた人差し指を近づけてきた。え?デコピン?
「えいっ」
*
川から遠く離れた森の中。普段は静かな森の中に爆音が鳴り響いた。立ち並ぶ大岩を勢いで粉砕する音や周りの木々をへし折る音。その爆音は3分ほど響いていたがやがて音は小さくなっていきそれから少しすれば音は完全に聞こえなくなった。
*
ヤベェ、めっちゃ飛ばされた。デコピンでこの威力って何よ、反則じゃない!そんなの卑怯よ!
岩や木とかにぶつかりまくったから体中がいてぇ、ヤッベ女の子に痛めつけられるとか興奮する。
「なーんて、ふざけてる場合じゃねぇな」
額からは大量に血が流れ出してるし、背中とか骨にヒビが入ってるだろ、コレ。冗談抜きでヤバイよ。
「ヒャハハっ、みーつけた♡」
「ヒャハハっ、見つかっちゃった…♡」
いや、俺が言ってもキモいだけだな、うん。
てか剣とかないの!?剣がないと戦えないよ!?
必死になって辺りを見渡すが剣なんて落ちてるわけもなく、剣を見つけるより先に2発目の追撃が俺に飛んできた。
「ガハッ」
尻尾を横に振るう見た目はとても可愛らしい攻撃。
しかし威力は見た目ほど可愛くなかった。
腹に直撃したよ、昨日食べたもんぶちまけるぞ。口からもケツからもなぁ!
咄嗟に両腕で抱えるように掴んで威力を下げたってのにこのバカみたいな威力、流石は龍王。
「えっち♡」
えっちって!俺のような紳士になんてことを言うんだね、君って娘は!…あれ?でも龍王ってんなら、俺より…年上!?
「この見た目詐欺!!」
そのまま尻尾を掴んでぶん回す!オラっ酔えっ!
「キャハハっ〜!いいぞいいぞ〜!」
楽しんでやがる!チクショーめぇ!うっ!
「酔った…」
クソっ、先に俺が酔ってしまうなんて、完全に予想外だった。まずいまずい!とにかく遠くにぶん投げなくては!
「うおぉぉ!!」
「キャハハっ〜!!」
遠くにぶん投げると龍王は楽しそうな笑い声を上げて飛んでいった。
「い、今のうちに…うっ、逃げ、うぅっ!?」
駄目だ、気持ち悪りぃ。目がグラグラして足がフラフラする。こんなんじゃ逃げられねぇ…
「おい!今のもう1回やれ!」
もう戻ってきやがった、化け物すぎるだろ…
「ちょっと、待て、うっ!」
「だいじょーぶか?」
必死に胃から飛び出そうとしてくる反逆者たちと戦っていると背中を優しく撫でられた。 ムフフっ、
じゃない!何で急に優しくなるの!?怖いわ!!
「だ、大丈夫…」
ナデナデ
「大丈夫だから…」
ナデナデ
いや、コレどういう状況? 俺さっきまで殺されそうになってたよね?そうだよね?
「もうだいじょーぶか?」
「うん、だいじょーぶ」
やっとナデナデを辞めてくれた。何だったんや。
「じゃあ遊ぼう!」
…遊ぼう?遊ぼう、アソボウ、遊ぼう!?
え!?遊び気分だったの!?嘘でしょ!?
「さっきまでのが…遊びなの?」
「???そうだぞ」
コテンッと可愛らしく首を傾げる龍王。いや、龍王とかゴツいからリューたんと呼ばせてもらおう、心の中で。
「あ、あぁ、でもあれだけどお兄さんはこの後仕事があってだな!もう遊んでる時間がないんだ」
てかさっき勇者の力を見にきたとか言ってなかったか?俺の気のせいか?
「そうかー、仕事ならしょうがないかー…」
見てわかるほどにショボンと落ち込むリューたん。
思わず抱きしめたくなるが我慢だ。我慢。
「じゃあさじゃあさ!最後に1つ聞いていいか!」
「ん?何だい?何でもお聞き」
気分はもうリューたんのお兄さん。今ならどんなに理不尽な事が起きても怒らない自信がある。
「勇者がどこにいるか知らないか?」
泣いた