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1話 追放されたい理由

見てくれてありがとうございます

人は生まれた時からその身にスキルを宿している。そしてスキルは個人差はあるが5〜6歳から使用できるようになる。

現在では様々な種類のスキルが確認されており

スキルによって人生の選択肢が決まると言っても過言ではない。

そして俺はスキルによって人生の選択肢を決められた。俺のスキルは『剣の勇者』。このスキルは剣を握れば最大限の力を引き出せるというもの。どんなにボロボロで使い道のないような剣であっても俺が使えば名剣のような切れ味となり剣に眠る特殊効果も使いこなすことができる。

こんなスキルを宿してしまったせいで俺は人並みの生活を送ることができなかった。


「お前は選ばれた人間なんだ」


「他の子供と遊んでいる暇があるなら剣の練習をしなさい。貴方は選ばれた人間なのです」


俺が生まれたのは王国から遠く離れた田舎の小さな村。だから両親は俺を王国に売る為に剣を振らせ続けた。子供とはいえ伝説と言われる勇者のスキルを持っているのだ。それは高く売れるのだろう。

村の子供と遊ぶことも許されず、いつも1人で剣の素振りをする。人々はこのスキルを神からの祝福だとか奇跡だとか大騒ぎしていたが俺は呪いにしか感じなかった。生まれながらにして戦うことを決められた呪い。


「ふざけるな…」


俺は戦いなんて好きじゃない。

他の子供のように無邪気に走り回りたい。

昼寝をしたい、恋をしたい、人並みの生活を送りたい。だけどその願いは叶わない。

10歳の誕生日、村に王国の騎士団がやってきた。

村長が呼んでいたらしい。村長と偉そうな騎士のおっさんが暫く話し合っていたが、やがて騎士のおっさんが俺の手を引いて歩き出した。


「頑張るんだぞー!」


後ろから声援が聞こえる。村の奴らが言っているのだろう。俺は振り返らずに歩き続けた。


「…」


どうする?どうすればこの呪いから逃れることができる?どうすれば俺は人並みの生活を送ることができる?


「…」


王国に連れてこられた後も俺はとにかく考えた。

剣を振っている時も食事をしている時も考えた。

そして王国に来てから3ヶ月。いつものように素振りをしながら考えていると2人の騎士の会話が耳に入ってきた。


「知ってるか?冒険者の間で最近追放が流行ってるんだとよ」


「追放?そりゃどういうことだ?」


「パーティーから弱い奴を追い出すのが流行っているらしいぞ、なんでもそれで成功したパーティーがあるとか」


「マジか、冒険者って怖いな。…その後に実は有能でしたとかあったら面白そうだな」


「意外と多そうだけどな、そういうの」


この会話を聞いた時にピキーンときた。

稲妻が走った。そうだよ!これだよ!追放だよ!

追放されれば自分は用済みということで戦わなくてよくなるじゃないか!これが俺の求めていた答えだったのか!ヤッベェ、テンション上げるわ〜。

いや、これ勝ったな。必勝法だな。


「ふふふ、ふふふふふふ」


この日から俺は追放について色々なことを調べた。どういう条件で追放されるのか。

どういう人がパーティーリーダーだったら追放してくれるのかなどを調べ尽くした。

調べて分かったことは人当たりの良さそうなイケメンや態度が傲慢なヤリ○ンがよく追放イベントを起こしてくれるみたいだ。

そしてもう1つ分かったことは旅の途中で追放されたほうが後が楽だということ。理由としては

今からだと王国での無能アピールは無理があるし、嫌がらせなどを受けるかもしれない。それは嫌だ。だが旅の途中なら追放されればすぐに自由になれるし嫌がらせも大したことじゃないだろう。


「下調べと作戦は完璧だ。あとはパーティーメンバーとリーダーが揃うのを待って、荷物持ちになれば俺は自由になれる!」


そう、この作戦で最も大事なのは荷物持ちになることだ。追放された人たちにアンケートを取ってみたところ、約89%の人が荷物持ちだったということが判明した。これは荷物持ちが追放されやすいということを示している。つまり荷物持ちになれば追放されやすくなる。完璧だ。中には恋人を奪われた人もいて割とガチで同情した。


それから4年、やっと俺以外の勇者が揃ったという知らせを聞いた。いや、長かったな。マジで。

稀少なスキルだから分かるけどさ、もっと早くしてよ。俺は早く自由になりたいんだよ。

顔合わせということで勇者たちがいる部屋に呼ばれた。


「ふぅ〜、ふぅ〜」


いや、緊張する。めちゃくちゃに緊張してる。

このメンバーによって追放確率は大きく変わる。

慈愛に溢れた女神様だったら大外れ。

優しいイケメン勇者だったら大当たり。

さぁ、自分の運を信じろ!自慢じゃないが俺は運が悪いんだ!


ガチャっ


扉を開き中へと入る。そして辺りを見渡すと3人。

ソファーに腰をかけている。

女2人に男が1人。全員顔立ちが整っていてなんか、勇者ですって感じがした。


「よろしく、僕は『光の勇者』レグレス」


「よ、よろしく 俺はシュークだ」


コイツ、大当たりじゃないか?イケメンで人当たりが良い。それに光の勇者とか勝確案件だろコレ!

そして一応挨拶しておこうと他の2人の方を向く。レグレスがパーティーリーダーとはまだ決まってないからな。


「えっと、シュークだ。2人の名前を教えてくれないか?」


「よろしくお願いします!シュークさん!私はメリシアです!ほらっ、あーちゃんも挨拶して」


「アリシア…」


ハズレや、メリシアはハズレや。

だがアリシアは意外と期待出来そうだな!


そのあとソファーに座って待っていたら王様が入ってきて何か言い始めた。


「おぉ、伝説の勇者が4人…これなら我が国の平穏は約束されたもの同然よ。」


それから長ったらしい話が始まってしまい、15分ほどして本題に入り始めた。


「お主たちには4人で冒険をしてもらい、4人の王たちを打ち倒してもらう。困難な旅になるだろう。勿論、王国から最大限の手助けはさせてもらうがそれでも限界はある。しかし勇者はお互いを信じ合うことでその力を高めると伝承では伝えられていた。故にお主たちはまずお互いのことを深く知り、仲を深めるのだ。そして1番信用できる人物をパーティーリーダーとし、この国に新たな伝説を作り上げてくれ。」


王様はそう言って部屋から出て行った。

いや、自分たちでリーダー決められるの?そんなんレグレス一択だろ。




あれから俺たちは話し合いでレグレスをリーダーと決めて4人の王たちを倒す旅へと出た。

そして旅に出て約半年、1人目の王を倒すことができた俺たちだが、俺には追放イベントの『つ』の字も出てこなかった。なんで!?完璧な荷物持ちを演じてきた筈だ、何が足りなかった!?

追放されるどころかドンドン仲良くなってるよチクショウ!最初は冷たかったアリシアとすら打ち解けちゃったよ!チクショウ!

駄目だこのままじゃ。このままじゃいつまでも自由になれない。

……次だ、次の旅で追放されるように努力しよう。俺はそう心の中で誓い自室の温かい布団の中で眠りについた。




温かい…

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