巴の告白(2)
次の日。学校には巴の姿は無かった。
優斗自身も気持ち悪くなり、1時間目が終わったあと保健室に行き、早退の手続きを取った
帰り道。
「そういえば……三矢さん、家ここって言ってたっけ」
小さな一軒家。表札を見ると『野口』と書かれていた。
気がつけば、優斗の指は呼び鈴を鳴らしていた。
「……はい」
巴が出てくる。
「あ、その俺。優斗」
「……優斗くん?」
小さな呟くそうな声がインターフォン越しに聞こえる。
「その大丈夫?」
「……」
大丈夫なわけが無かった。
「……優斗くん。上がってくれる?」
「え?」
「大丈夫。誰も居ないから」
「あ、うん……」
数十秒後、玄関の扉が開く。
そこにはパジャマ姿の三矢が居た。
「学校は?」
「……なんか気持ち悪くて早退してきた」
「そっか」
リビングに案内される。
「……優斗くん」
優斗の目をじっと見つめる巴。
そして、次の瞬間、優斗と巴の距離がゼロになった。
唇に柔らかい感触。それは紛れも無く、巴の唇だった。
数秒後、巴が唇を離す。
「三矢さん……」
「優斗くんのことが──ずっと好きでした」
何と返事をしていいのかわからず、黙り込む優斗。
「優斗くんは……私のこと嫌い?」
「え?」
「巴が嫌い?」
「……いや、そんなことは……」
突然、彼女の手が、優斗の腰に回され、ぎゅっと抱きしめられる。
柔らかい感触と甘い匂い。
それが優斗をますます混乱させた。
そして、優斗は無意識に巴の手を振り払った。
「優斗……くん」
「……三矢さん……その、嫌いじゃない……むしろ好きだけど……俺は……」
と、突然巴の顔が無表情な顔になる。
「……ハルカ先輩のことが好き?」
「……」
その沈黙を、肯定と受け止めた巴は、大人しく手を下ろした。
「そっか……」
「その……ごめん」
「いいの。そうよね。仲いいもんね、先輩と。でもね。問題ないわ。だって──
巴は、後ろを向いて言った。
その言葉は、冷たい氷柱のようだった。
──だって、優斗くんを殺せば忘れてくれるでしょ」