表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

5.少女の復唱


 剣はその手から零れ落ち、ただ下を向いて泣く少女。

 それを見たユウトは、危険だという考えが浮かばず、トモエに近寄った。

「ミツヤさん──」

「私、ユウト君のことが好きなのに──。やっぱりユウト君は──


──先輩が好きなんだね」


 涙し嗚咽しならが、紡ぎだされた言葉にユウトも胸が詰まるのを感じた。

「ミラージュワールドの記憶を失ったくらいじゃ……私には振り向いてくれない」

 彼女の言うとおりだった。

 俺は。

 結城ユウトは。

 中北ハルカのことが好きなんだ。

「私、馬鹿だったね。さっきの一撃で目が覚めた……」

 トモエがゆっくりと立ち上がる。

 そして、そのままユウトに抱きついた。背中に回された腕はユウトを強く締め付けた。

 どうしてよいか分からず、ただその場に立ち尽くすユウト。

 それから10秒ほどして、彼女を慰めようと、手を髪の毛に回して、その頭を優しく撫でた。

「ミツヤさん……」

 ここで好きだと言ってあげられたら、どれだけか救われるか。好きだといえば、今この瞬間は、楽になる。

 でも、それはできない。

 だから、彼女をこの瞬間だけは抱きしめてあげる事にした。


   …


 それからどれだけの時間がたっただろうか。

 ようやく落ち着いてきたころ、トモエは突然ユウト腕を解いた。そして、おもむろにメニューを開き、ボタンを押していく。エクストラメニューの一番下。普段は絶対に押さないボタンに手が伸びる。

「──ミツヤさん!?」

 その手を止めようとするが、その前にそのボタンは押された。

 徐々に減っていくHPゲージ。

 彼女が押したのはDCコマンドだった。

「いろいろとごめんなさい。ユウト君に迷惑かけた」

「ミツヤさん……」

「ええっとね。ここの記憶がなくなったら、多分また……」

 

 彼女のHPゲージはゼロの値を示した。

 

 そして、彼女の体は光に変換され、ミツヤトモエというアバダーはミラージュワールドから姿を消した。

 

   …


 次の日。

 学校には全てを忘れた三矢さんが居た。

「優斗君、おはよう」

「うん……おはよう」


 一緒に放送当番をこなした。

 今日は当番期間の最終日。

 無邪気に笑うその顔を見ていると、胸が詰まるのを感じた。一体彼女はどれだけのもの背負っているのか。それを考えるとますます苦しい。

 今日の放送の終了を告げる。

「ねぇ……ユウト君」

「……何? ミツヤさん」

「私は────

 彼女からゆっくりと、あのときの言葉が繰り返された。


優斗くんのことが──ずっと好きでした」










 いや──。

 なんとかミラージュワールド2の連載を終了することが出来ました。

 あとがきは明日投稿したいと思います。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ