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運命の日(前編)

 カウフマンなんて銘柄は高級レストランに行かなきゃ味わう事が出来ない高級ウオッカだ。ならば、フィファリンゲも極上のモンに決まってる。

 それから30分ほどで整地は終わった。

 しばらくすれば、ヒノモトの連中も降りてくる事が出来るだろう。


「おい、ポポフ」

「ん、なんだ? ドミトリー」

「副司令の言う事はとりあえず忘れちまえ。悩んでも仕方ないだろ」


 生き残ったエレベーターシャフトから、数台の車両が出てきた。

 舗装の終わった着陸場に空気や燃料を運ぶ補給車両だろう。作業艇の燃料も残りも少ないだろうからな。


「……確かになぁ。わかっても何もできないもんなぁ」


 ポポフは、ぼうっと補給車両の列を眺めていた。


「指揮車のアレクセイだ。半になったら基地に戻ろう」


 という事は、出発まであと20分くらいか…


「なあ、ポポフ」

「ん?」

「帰ったら、どうする?」

「そうだなぁ。サウナに入って、冷えたクワスを一杯、ってとこかな」

「はっは、それはいいな……」


 その場を支配していた心地よい沈黙は、アレクセイの叫び声で破られた。


「おい、見ろ! 地球が… 俺たちの地球が!」


 いきなり通信機から叫び声が飛び出してきた。


「なんなんだよ、一体」


 電子望遠鏡のスイッチを入れると地球の方に向けた。


「なん、だとぉ!?」


 ディスプレィに映る地球がいきなり輝きだしたのだ。

 金色に輝くそれは、すでに太陽よりも明るく輝いているではないか。


「なん、だ? 何が起こってるってんだよ」

「地球が ……爆発する?」


 しばらくすると、光は収まり、やがて地球が震えながら縮みだした。

 いや、脈を打つような振る舞いを始めたと言ってもいい。

 金色に輝いた地球は、しばらくすると元の色に戻った。そして、再び金色の光を放ち始める……


「なんか脈を打ってるみたいだな」

「ヤバそうだな、すぐに帰るぞ!」

「了解!」


 ブルドーザーは砂塵を巻き上げながら、基地への道程を急いだ。

 その間にも、地球は脈打つように光を放っていたが……

 ついに運命の瞬間がやってきた。


 地球はぶるっと、その身を震わせたたかと思うと、大きく膨れあがり…

 見渡す限りの大地が金色に包まれた。


「ちっ、カメラが焼き切れたか。おい、とりあr うわああ!」


 その時、月面基地は未曽有の大地震に襲われたのだ。ふたりは操縦シートから放り出された。与圧キャビンの壁が割けると、ごうっと音を立てて空気が吐き出されてゆく。

 宇宙服のバイザーがかちりと閉まり、空気の供給が始まった。


 それはわずか数秒のできごとだったが、その数秒が永遠に続くかのように不気味な時間だった。

 揺れが収まった車内では、ポポフが天井だったところで機材に埋もれていた。


「ポポフ、大丈夫か?」

「肩が痛い。とりあえずここから引っ張り出してくれ」

「ちょっと待ってろ、そっちに行く」


 ようやくの事で横転した作業車からはい出したポポフが見たものは、あちこちに横転している車両だった。ポポフ達のブルドーザーも、車体の半分が地割れに飲み込まれている。


「せっかく整地したのにな」

「最初からやり直しか。ついてないな」


 とりあえず熱いサウナに入って、それから考えよう。

 二人は基地に向かって歩き出した。

クアスというのは、ロシアで古くから呑まれてきたノンアルコール・ビール(のようなもの)です。

インスタントでよければ、日本でも手に入ります。



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