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9. どうしても魔王様と会わないとダメ?

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話の区切りがあまり良くなかったため、10話の内容を一部こちらに移動させました。

内容に変化はありません。

『生まれつきだから仕方ないって?

 ぼくばっかり、ひめさまに愛されててずるいって……?』


 カァ...


『まあまあ、贅沢言っても仕方ないでしょ。ゾンビとかよりはマシでしょ?』


 あ、ゾンビなら神聖魔法がよく効きそう。

 魔族全体によく効くと聞いたけど、中でもゾンビ相手ならピカイチね。

 そういう意味では、カーくんより怖くないかも?


『ひめさま、カーくんこう見えてかなり落ち込んでるから。

 素朴な感想で、追撃しないで。

 ついでに、魔族を倒すこと前提に話さないで!』


 癒しの魔法って、神聖魔法ですよね。

 過去の私が使った癒しの力は、神聖魔法にもかかわらずアビーの傷を癒せたんですね。


 慌てたアビーと、しょんぼりとうなだれるカーくんを見て


「ふふっ」


 思わず笑みがこぼれました。


『ひめさま?』

「ごめんなさい。でもおかしくて。

 こうやって魔族とお話をすることになるとは思わなくて」


 実は、人族も魔族も変わらない部分があるのかも。


 身一つで、魔族領に放り出されたときはどうなるかと思いましたが。

 こうしてアビーとカーくんに出会って。

 どうにか、ここでも生きていける気がしましたよ! 


 そんな中、アビーがおずおずと。


『ひめさま……お願いがあるんだけど』

「なに? 何でも言って」


『魔王様に、会って欲しいんだ』


 はい?

 ……一体、何の冗談でしょう。




◇◆◇◆◇


「魔王様って、あの魔王ですか?」

『うん。どの魔王なのかは分からないけど魔族の王様。ひめさまが想像してる通りだと思うよ』


 魔族の頂点。

 それは私たち人間にとっては、恐怖の象徴ともいえる存在でした。


「魔族の王様……。なんで、そんな偉い魔族が、私なんかと会いたがっているの?」


 それでも、アビーの頼みなら。

 ここで唯一の協力者を失うわけにはいきません。


『う~ん。内緒!』


 どこか面白がるような口調でアビー。


 わたしとしては気が気ではありません。

 私の脳内魔王が『今宵の生贄は、人間の少女か!』などと言いながら、むしゃむしゃと私を食べてしまいました。

 ……うん、魔王怖い。


 一度も会ったことはありませんが、まるで仲良くなれそうな未来が見えません。


「アビー? どうしても魔王様と会わないとダメ?」

『ひめさまお願い! 行かないなら魔王様、飛んできちゃうかも!』


 ヒエッ。

 なんで、魔王が直々に!?

 何か恨みをかうことでもしましたか!?


『もともと、カーくんとぼくがここまで来たのも、ひめさまをお迎えするためだったんだ。

 魔王様には信頼されてるんだよ!』


 さらにアビーから追加の情報。

 カァ! とカーくんが誇らしげに鳴き声を上げました。

 どうしよう……。

 と悩みましたが、考えたところで答えは1つしかでません。


「わかりました。魔王様に会いましょう」


 アビーたちの協力がなければ、魔族領で長生きはできないでしょう。

 ならば魔王に謁見するというミッションに挑むほうが、まだ生き残れる可能性は高そうです。


『ひめさま、ありがとう!』


 嬉しそうに足元に駆け寄ってきたアビーを抱きかかえます。

 目まぐるしく変わる状況には、ついていけません。


 ――ならば


 今たしかに腕の中にある、もふもふの手触りを楽しんで心を落ち着かせましょう。


 何やらもの言いたげな顔つきで、カーくんがこちらを見上げてきました。

 歓迎していた喜びを、殺気と捉えてしまった申し訳なさ。

 でも、それ以上に……


(やっぱり、この鳥苦手だわ……)


 特にあの鋭い目つきが。

 害意はない、と聞いた今でもその迫力は健在でした。


『ひめさま怯えてる。カーくん、笑顔!』


 カッカッカッカァァ!


 クチバシが大きく開かれ、こちらに向けられました。

 私は、人を安心させるのが『笑顔』だと教わったのですが、魔族領だと違うのでしょうか。


 あれは、どう見ても笑顔ではなく威嚇行為です。

 反射的にシールド魔法を唱えたくなりますよ!


『はあ、前途多難だね……。2人には、あとあと打ち解けてもらうとして。

 魔王様を待たせてる、行こう』

「どこに?」


 アビーは首だけちょこんとこちらに向けると、にっこりこう答えました。


『魔王城!』


 ですよねー?

 いかにも魔王が住んでいそうな名前をしています。

 生きて帰れるよう祈りましょう。

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