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17. 内心で絶叫、表では微笑

「うむ。楽しんでいるか、人間の娘?」

「お気遣いありがとうございます、魔王様。

 はい、魔族のみなさんにも良くして頂いて。

 こうして出会えたことに感謝しています」


 ――どどどどど、どうしましょう!?

 

 脳内でひたすら慌てふためいていますが。

 公爵家として育ってきた条件反射でしょうか、すごく無難な返しを選択。

 

「うむ。それは良かった。

 貴様のために用意した余興だ。

 余のことは気にせず、存分に楽しむが良い」


 魔王――ヴァルフレア様から、めちゃくちゃ冷たい視線を貰いました。


 ――聞いてたのと違いますよ!


 優しい方ですよ、ってリリーネさん言いましたよね。

 取り付く島もないじゃないですか!?


「お気遣いありがとうございます、ヴァルフレア様。

 このような場を開いていただいて感謝しておりますわ」


 そんな内心はおくびも出さずに。


 淡々と、そつなく返すことに成功。

 こんな状況であっても、私の笑顔の仮面は崩れません。


 本心を隠したまま無難な会話をするのは得意分野。

 これまでの経験が役に立っています。


「邪魔したな。

 何が困ったことがあれば、リリーネに申し付けるが良い。

 騒がしい場は好かぬ。余は一足先に自室に戻っていよう」


 ――あなた、私に用があったんじゃないですか!?


 内心で絶叫、表では微笑。


「では後ほど伺いますね」


 そう返すと、なぜかギロリと魔王様に睨み付けられました。


 ――え、何? 私なにか間違えた?

 

 なにも分かりません。

 さすがに笑顔の仮面が剥がれそうになります。


 スパーン!



 どうしようと困っていたら、とつぜんの良い音。

 なにかと思えば、リリーネさんがスリッパで魔王様の頭をはたいたのです。


「な、なにをする!?」


 狼狽した魔王様に


「ヘタレもいい加減にしておきなさいよ!

 フィーネちゃんが、この場にどれだけ怯えてるのか分からないの?

 それなのに……あんたの機嫌を伺って。

 それをおくびにも出さず堂々とした態度で…………」


 リリーネさんが腰に手を当てて一声。

 それはお城の入口で見せたときの様子と変わらぬものでした。


「それは……その…………。

 アビーに任せておいた方が良いだろう?

 そうして、みなと打ち解けてからなら余も……」

「これから国を背負っていこうて者が、そんなことでどうするんですか~~」


 しっかりしてくださいよ~、とリリーネは呆れ声。

 リリーネさんの勢いに負けて、どんどん小さくなっていく魔王様。

 さきほどまで感じていた威圧感が、嘘のようです。


 どうやら、初対面で怒らせてしまったというわけではなさそう?

 知らないうちに大失敗をやらかしたのかと心配していましたが、そうではなさそうで良かったです。


「あの、気になさらないで下さい。

 ゆっくりお話するには、この場が騒がしすぎるというのは同意見です。

 ですから後ほど部屋に挨拶に……」

「それはならんぞ。

 余はヴァンピーレ族の末裔。夜が深くなると理性を失って――」


 クワッと目を見開いて、全力で否定する魔王様。

 なるほど、習ったことはありませんでしたがヴァンピーレ族にはそのような習性が……?


 スパーン!


 リリーネさんのスリッパが、また一閃。


「魔王様! 適当なこと言わないでください!

 フィーネちゃん純粋なんですから! あっさり騙されてますよ!」

「貴様は、もう少し魔族の王である余を敬ってだな……」


「な・に・か?」


 リリーネさんの圧に、たじたじのヴァルフレア様。

 その様子を見ていて、当初感じていた恐れが薄れていくのを感じました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 上下関係での問題がなく、本当にアットホームな場所ですね!
[良い点] 最初は魔界に放り出されたフィーネさんを心配していましたが、素敵な形で予想を裏切ってくれました。 アビーさん尊いですね~。猫様を自宅にお迎えしたくなります。 そしてカーくんはどストライクで…
[良い点] www やっべぇこの魔王好きだわぁ。 リリーネもいい! 良き!
2020/05/22 16:38 退会済み
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