表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/72

14. まあ、人間が魔王城に!?

 それにしても、魔王城に入った人間なんて私が初めてかもしれませんね。

 キョロキョロと辺りを見渡します。


 外から見たときは、おどろおどろしい風貌しか印象にありませんでしたが。

 こうして見ていると、中身はしっかりと手入れされた小奇麗な建物です。

 時々飾ってある魔族をかたどったインテリアが、良いアクセントになっています。


「改めて、侍女頭のリリーネです。

 フィーネ様と同じく人間です。きっと、少しはあなたの心労を理解できると思います」

「まあ、人間が魔王城に!?」


 ものすごく気が抜けました。

 こんなところで、人間と会えるとは思ってもいませんでした。


『魔王様に拾われたんですよ。

 前の職場で、人身売買の取引現場を見てしまいまして』


 口封じに魔族領に放逐されたんです、とリリーネは笑ってみせました。

 使用人の失踪は、きな臭い貴族の屋敷では珍しくはなんともないですが……。


「あなたも、苦労されたんですね……」

「ボンクラ王子を裏で支えた挙句、魔族領に放り出されるフィーネ様ほどじゃないわよ」


 魔族の支配する土地で出会えた、私と同じ人間族。

 肩の力を抜いて話せます、心強いです。


「あら、フォード王子はこの地でも有名なんですか?」

「ひめさまに迷惑をかけまくってるって悪評でね。

 アビーなんて、いつも文句言ってるわよ」


 ひめさま~! とじゃれついてくる猫の姿を思い出し、頬が緩みました。

 彼も、この地で出会えた貴重な友人です。


 それにしても……。

 ひめさまに迷惑をかけまくってるって悪評ですか……。

 国の情報、筒抜けじゃないですか。


 改めて魔族怖い。



「フィーネさん、ごめんなさいね。

 人間にとって住みやすい場所ではないと思うけど……」


 申し訳なさそうに、おずおずとリリーネさんが話しかけてきました。


「いえいえ。魔族領に追放されて、死ぬしかなかったんです。

 ここまで連れてきてもらえて感謝してますよ」


 私の立場で、文句を言うことなど許されないでしょう。

 生きているだけで感謝です。


 たしかに入口ではだいぶ驚かされましたが、そんなことは些細な問題です。

 これ以上、心臓に悪い魔族がいないと良いな……。


「まずは大浴場でゆっくり休んでくださいね。

 長旅の後だしね。体を休めるのも大切だよ」

「有り難いんですけど、良いんですか?

 魔王様が私に会いたがってるって、だいぶ急いで連れてこられたんですが……」


「気にしない。気にしない。

 細かなことを気にしてると、ここでは体がもたないわよ」


 ずいぶんと実感のこもった言葉です。

 リリーネさんも随分と苦労したんだろうな……。

 人ごとながら、同情しそうになります。

 

 ――全然人ごとじゃないですね……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ