第2話 開始
彼女くら部に入ってしまった良彦だが、悠が考えてきた彼女くら部のルールとは?
あの衝撃の一日からまだ抜け出せない良彦は朝飯の味も分からないままボッーとしていた。
頭の中に悠の「遥ちゃんがお前のこと・・・」の台詞が巡っている。
まさに男を腑抜けにさせる魔法の言葉だ。
「早く食べなきゃ遅れるわよ!!」
母の言葉で現実に戻された良彦は口の中に米を流し込んだ。
「何かいいことあったの?」
「・・別に」
「ふーん。早く行きなさい」
良彦は内心焦ったが平静を装った。
母にはすぐ嘘がバレる。
母いわくいいことあった時は口が開きっぱなしになるらしい。
良彦の父親は良彦が5歳の時に交通事故で死んだ。
母は1ヶ月泣き続けたらしいが、良彦の一言で強く生きていくと決めたらしい。
それが何っていったかは良彦は覚えていないし教えてもくれない。
学校に近づくにつれ緊張が襲ってくる。
門の前で綾波が待っていたらどうしよう( ̄ ̄;)
まさか告白なんて・・。
そんなことを考えていると学校に着いた。
はぁ・・現実はこんなもんだろなぁ↓↓
教室に入ると「ヨシおはよー」「・・あぁ」と言う会話を2,3回繰り返して席に着いた。
綾波は特進クラスだから普通クラスの良彦には4階と3階だから会う機会はあまりない。
今日も暇潰しに授業中にギターのコードを考えている。
良彦は曲は作るが歌詞は作らない。というか歌を歌わない。
カラオケに行っても聞き手に回る。
悠にいつも「そんなんじゃモテないぜ」といわれる。
「悠、遥ちゃんは人を見る目あるぜ」と伝えてやりたい。
4時間目が終わりのチャイムが鳴り周りが慌しく動き出した。
「よう!!」
悠が嬉しそうに隣のクラスからやってきた。
「イニは?」
「便所。それよりちゃんと作ってきたぜ」
「何を?」
「バカ。昨日言ってただろ」
「だから何だよ?」
「ヨシ昨日はちゃんと寝れたか?」
仁がいつもの笑顔でやってきた。
「うるせぇよ・・。てか悠が何かいってんだけど」
「ったく」
そう言うと悠はポケットから一枚のルーズリーフを出して二人の目の前に広げた。
ルーズリーフには汚い字で
〜彼女くら部〜
1、クリスマスまでに彼女を作る。
2、告白されたら断らない。
3、付き合ったら10日間は付き合う。
4、決まりごとを破ったら裸でグラウンド1周。
と書いてあった。
「いいだろコレ?昨日寝ないで考えたんだぜ」
悠はポカンとしている2人を他所に満面の笑みを浮かべている。
「はいはい。勝手にしろ。飯食おうぜ」
良彦は弁当の蓋を開けた。
弁当の中身はいつも手抜きだ。
ご飯だけがパンパンに入っててオカズは昨日の残り物だ。
今日は卵焼きにカツだ。
前にチャーハンとご飯の時があって悠と仁に爆笑された(ノ△T。)
「おい!良彦!昨日、約束しただろ」
「ばか。こんなの守れる訳ないだろ」
「まぁまぁヨシいいじゃねぇか。お前には遥ちゃんがいるだろ?」
「何言ってんだよ!別にまだ好きって決まった訳じゃねぇだろ!」
良彦は慌てて否定した。しかし心の中では
「いいこと言うぜ。イニ」と思った。
「とにかく約束だからな!彼女くら部の始まり始まりぃ〜♪」
こうなると悠は止められない。
「勝手にしろ」
そういって卵焼きを口にほうばった。この時は良彦は綾波と付き合うことしか考えてなかった。人生は理想と現実は違うものだと、後で思い知るのだ。