1話 入部
「よし!!俺は彼女を作る!!」
いきなりそう言ったのは相田悠だ。
相田悠・・・年齢18才。身長180cm。体重65kg。彼女いない歴23時間。
補足・・・ルックスはモデル並にいいが、ちょーーーー女好きであまり女の子の間ではいい噂をされていないが奴はモテる。かなりモテる。なんだかんだ言っても結局男は顔なのか(;_ _)口癖は「世界中の女と俺は付き合う!!」だ。お前英語できねぇだろと思った。
派手なファッションに茶髪染めた髪。教師達も手を焼いていた何か注意されると「俺は悪いことはしないし勉強もそこそこできる。まぁ個性が強いだけだから・・勘弁して!!」と手を合わせながらお決まりのフレーズを並べる。
「でました。得意の彼女作る宣言!」
テレビ画面を見たまま楽しそうに言ったのは上田仁だ。
上田仁・・・年齢18才。身長165cm。体重57kg。彼女いない歴3年。
補足・・・あだ名は仁をカタカナで呼んでイニと呼ばれている。元野球部の爽やかボーイだ。
最近引退して髪も伸びてきたがまだ真夏の中ボールを追いかけていた名残がある。まぁ世間一般で言う健全な高校生って奴だ。
しかしその実態は元彼のことを今でも好きだと言っている未練たらしい男だ。元彼には告白してOKだった時、あまりのうれしさにその場で号泣したらしい。
そして2週間で振られてまたその場で号泣したらしい(TдT)
なんともピュアな奴だ。違う言い方をすればアホな奴だ。
悠は椅子の上に勢いよく立つと
「今度という今度は3週間の最長記録を超える!!」
と拳を振り上げて叫んでいた。おいおいお前の家じゃねぇんだからと言いたかったが毎度のことなんで無視してゲーム機のコントローラを操作し続けた。しているのは野球ソフトだ。
仁とよく対戦するが勝敗は五分五分ぐらいだ。今は8回表の攻撃中だ。
ちなみに悠は話にならないぐらい弱くあまりしたがらない。
「ホント女好きだなぁ〜。なんでこんな男に女は引っかかるのかねぇ。なぁ、ヨシ?」
8回裏を抑えた所で仁が同意を求めてきた。相変わらず人に好かれるような爽やかな笑顔してやがる。
「あぁ・・だから女は神秘なんだろな」
ダルそうに意味の分からない言葉を返したのは渋谷良彦だ。
渋谷良彦・・・年齢18才。身長175cm。体重59kg。彼女いない歴18年。
補足・・・無愛想で初対面だと怖いとよく言われる。笑顔が苦手。ルックスは悪くなくモテない訳ではないが「好きです」告白されて「俺は好きじゃないけど」って言うぐらい無神経な所がある。自分的にはハッキリ言った方が相手のためだと思っているのだが冷徹な人間だと思われている。
趣味ストリートライブ。でも人が集まってくるとやめる。なんせ家でするとウルサイと母親のゲンコツが落ちてくるから外に行くのが理由で別に人に聞いてもらいたい訳ではないのだから。
暑いのが苦手で夏はエアコンを付けっぱなしでいる。それが災いして良彦の部屋はいつもたまり場になってしまう。男子からはヨシって呼ばれている。良彦と呼ぶのは悠だけだ。
「たっくお前達は女の素晴らしさを分かってない!!ほんとーに分かってない!!」
悠が話しているが、仁と良彦はゲームに夢中で適当に相槌を打っていた。
すまんがお前の話の587倍今はゲームが大事なんだよ・・(*-人-)と良彦は心の中で呟いた。
何故かは分からないが俺達は幼い頃から仲がいい。
この無愛想&爽やか&おしゃべり凸凹コンビは小学校からいつも一緒にいた。
一度だけ中学3年の時に悠が仁の元彼の新垣メイに手を出した時に大喧嘩をした。
その時は仁と新垣は付き合ってなかったし仁が新垣に好意を持っているのも知らなかったので3人でいる時に悠が
「今度はメイちゃんGETしたぜ!!」
と言った瞬間に悠に仁が殴りかかった。殴られた悠も喧嘩っぱやいのですぐに殴り返した。
良彦は唖然とした。
なんせ良彦はいつものことだと気にせず
「はいはい。ちゃんと大事にしろよ」
とお決まりの台詞を言ようとしたら、台詞をいう間もなく目の前で格闘技並の喧嘩が繰り広げられているのだから( ̄□ ̄;)
良彦は考えた末に止めもせずにボッーと見守ることにした。なんせ今まで喧嘩なんて一つもなかった親友同士が理由も分からずに殴り合っているのだから。
殴り合いは熱を増す一方でジッとしてるだけの良彦でさえ汗がダラダラ頬をつたう。
1分が1時間に感じたぐらい2人は激しかった。
生の喧嘩はリアルでグロかったしどっちか死んじゃうんじゃないかとさえ思えた。
ただただ良彦は最近ウルささを増した蝉の鳴き声に耳を傾けていた。
勝敗は身長も高く喧嘩経験もある悠が勝つと思っていたが違った。
仁のロシアンフックが見事に悠のアゴにヒットし勝負は終わりを告げた。
こいつらリングの上だったら金取れるんじゃないかと思うぐらいスゴイ喧嘩だった。
仁は野球で鍛えた鋼の体に新垣への愛を宿して体格差を物ともせずに勝ったのだ。
愛の力を親友が鬼の形相で手を真っ赤に染めているのを見て感じるとは夢にも思っていなかった。うずくまっている悠を見て仁は泣きながらその場を走り去った。
なんとなく仁の気持ちに気づいた良彦はあぁ可哀相な奴だなぁと思ったが
「ちっ。意味分からねぇし」
と血の混じった唾を吐く悠を見て意味の分からず殴られたコイツの方が可哀相だなと思った。
この騒動は事情を知った悠が新垣を酷い振り方をし仁が告白しそして2週間で振られて号泣して悠に慰められて幕を閉じた。良彦は一つだけ思った。
コイツ等は一体何がしたいんだろぅと(-_-;)
「だいたい良彦は何で彼女作らないの??」
悠は2人がゲームしているので暇なのかしつこく話しかけてくる。
一体この質問を何回されたのだろう。
「そんなのコッチが教えてほしいよ・・・」
「ヨシは悠と違って女に興味ないんだよ!な?」
微笑む仁に向かって、おいおい女には興味あるぞ!と思ったがゲームに集中した。
「あぁそうだよ・・」
「おいおい、女に興味ないってことは良彦が好きなのは男ってことか!?」
「ばか、んな訳ねぇだろ」
「はっは。さすがのヨシでも男はねぇだろ」
ゲームは最終回3対2で良彦がリードしていた。しかし仁が2アウトからヒットを打ってホームランを打たれたら終わりの状況だ。
「あっ!!良彦に言わなきゃいけなかったんだけど・・」
悠が何かいようとしたが大事な場面だったので良彦は耳に入れないようにした。
良彦の操作するピッチャーが振りかぶった。あとは仁が苦手な高めの外角に投げるだけだ。
「はるかちゃんがお前のこと好きらしいぜ」
「・・っは( ・_・)」
悠が言った言葉は聞こうとしなかった良彦の耳に剛速球のド真ん中で入ってきた。
それと同時に操作を誤ってド真ん中に玉を投げてしまい仁にホームランを打たれた。
画面ではデカデカとサヨナラホームラン!!と表示されて花火が上がっていた。
しかしそれを見ている良彦の心は画面の6倍は花火が上がっていた。
「マ、マジかよ!!」
良彦より先に仁が叫んだ。
「あぁホントらしいぜ・・俺もはるかちゃんのことずっと狙ってたからかなり凹む話しなんだけどな」
「へぇ〜学年1のアイドルがこんな男をねぇ〜」
「どうせ噂なんかじゃねの?」
「いや、はるかちゃんの友達の友香っているだろ?あのぉ〜ちょっとぽっちゃりの。あの子とメールしてて聞いたから確からしいぞ。何かお前に気があるから友達の俺から何とか言ってくれないかってさ」
「へぇ〜学年1のアイドルがこんな男をねぇ〜」
仁が同じ台詞を2回言うのも無理はなかった。
綾波遥・・・年齢18才。身長162cm。体重??kg。彼氏いない歴??年。
補足・・・学内1の美女。過去悠が2回振られている。頭脳明晰、スタイル抜群、女子からも好かれている。まさに非の打ち所がない。クラスは特待クラスで良彦達には縁のないクラスだ。目が大きく色白で過去何度も男達が挑んだが成功した者はいない。振られる台詞は決まって「今、好きな人がいるの・・」だ。
良彦は思った・・・。「その好きな人は俺かぁぁぁぁああ!!」と。
良彦からしたら今まで可愛いと思ってはいたが好きとかそんな感情を持ったことはないが好きらしいと言われれば気にしないにしようにも気にしてしまう物だ。
これまではそういう話を聞いても何とも思わなかったが人によって変わるなんて男はバカだ。
「ついにヨシも彼女いない歴に終止符を打つのか(T ^ T)」
「いやぁ・・別に好きでないし」
「てめぇ殺すぞ!!俺が2度も振られた女を良彦ごときが振るだとぉ〜??」
「意義なーし」
「おいおい!まだ好きだって本人から言われた訳じゃないだろ」
良彦が困ったように呟くと悠は体を震わしながら
「お前って奴はぁぁ!!」
と言葉にならないような声を放った。悠は思いたったように机に座りルーズリーフに何かを一心不乱に書き出した。
書き終えたかと思うと「強制だからな!!」と一枚のルーズリーフ目の前で突きつけた。お前は水戸黄門か( ̄- ̄;)
ルーズリーフには汚い字で[彼女くら部]と書かれていた。
「なんだよそれ?」
良彦と仁は思わずハモってしまった。
「なんか仁も部活終わって暇になっただろ?だから俺らで部活作って残りの高校生活楽しもうぜ!!」
自信満々に言う悠とは対象に良彦はバカらしいと相手にしなかったが仁が
「まぁ暇潰しにはなるかもな」
と言い出した。
「ばか!こんなくだらねぇ部活できる訳ねぇだろ!!」
一向に否定する良彦に仁は
「まぁまぁやるだけやってみようぜ。な?」
とやる気だ。
「イニは入るってよ。良彦どうすんの?」
「あぁぁ!もう勝手にしろ!くだらねぇ」
「よっしゃ!!もう退部できねぞ!やめたら絶交だからな」
悠は子供のようにハシャいでいた。
いつの間にかエアコンが効いていた部屋は熱を帯びていた。
「今日はもう帰るから活動については考えておくからな!いいな絶対やめるの禁止だからな」
念を押してくる悠に適当に相手をして帰り際に仁に何でするとかいったのかを聞いた。
「まぁ悠の考えることだからすぐ飽きるって」
相変わらず爽やかな笑顔を振りまいてきやがる。
2人が帰ってからベットに転がった。
年季の入ったベットがギシギシと音を立てた。
「綾波遥かぁ・・・。」
そう呟いて照れくさくなりぎこちない笑みを枕に埋めた。
テレビ画面は相変わらず花火が打ちあがりっぱなしだった。
そして良彦も同じ心境だった。