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リンテ視点「騎士」

 死ぬべき運命にある私が、こんな事を思うのはおこがましい事なのかもしれませんが、それでも、久しぶりに歩く外は気持ち良くて、寝不足での疲労や足の痛みさえ新鮮な物に感じられました。


 しかし沢山の方が亡くなった結果に得られた自由というのはやはり心苦しい物です。山の中で私を助けてどこかに去っていったという謎のお方も気になっています。本当はラル様に詳しくお話を伺いたいのですが、事情があるようなので無理をさせるのは悪いです。ラル様が生き残ってもらえただけでも喜ばしい事なのですから、あまり問い詰めるのは失礼という物でしょう。


 山を降りた私達は、港町ポラストに向かう事にしました。ラル様の提案で、途中にある町でもぐりの司祭様に私の呪縛の状態を見てもらう事にもしました。ただ、生きる事を勧めてくださるラル様には内緒なのですが、結果がどうであろうと私が呪縛を抱いて海に沈む事自体は変わらないと思います。私の存在価値がそれしかないのですから、仕方のない事です。


 しばらく街道に沿って歩いていると、町が見えてきました。

「あれがケールの町だ。大きくはないけど一応宿と教会と酒場と商館なんか一通り揃ってる。もう少しなんだけど……えっと、歩けるか?」


 久々の外で気持ちが良いなどと言っておきながら、実に情けない話なのですが、私の足は限界でした。ラル様が全く堪えてない所から考えると、明らかに私の身体が弱すぎるのが原因です。


「はぁ……はぁ……だ、大丈夫です」

「……しばらくその辺で休むか。確か近くに川があったから、そこで水汲んでくるよ」


 私は平たい石に腰掛け、ラル様は早足で去りました。いえ、早足なのではなくこれがいつものスピードなのかもしれません。私に合わせてゆっくり歩いてくれていたのです。ラル様は本当にお優しい方です。


 それにしても今日は良い天気です。雲1つなくて、陽射しがやや厳しいですが、風があるので蒸し暑さは感じません。なんだかんだ言ってもやっぱり外の世界は良い物です。そんな事を思いながら空を眺めていると、街の方から蹄の音が、段々とこちらに近づいてきました。


 馬に乗った騎士の方が6名、連なっていました。あっという間に近くまで来て、私の姿に気がつきました。先頭を走っていた方が合図をして馬を止め、私の顔を覗き込みました。


「……ん? んん? お前、リンテ・グレイシアか?」


「あ、はい、そうです」

 立ち上がって正直にそう答えると、騎士の方は周囲を見回した後、尋ねました。

「護衛の騎士はどうした? 馬車と棺桶は?」


「えっと途中で山賊さんに襲われてしまいました。騎士の方達は残念ながら殺されてしまったようです。馬車も捨てられて。棺桶はまだ山賊さんのアジトにあります」

「それなら何故お前は生きている? というかここまでどうやって来た?」

「私は見ていないのですが、通りかがりの優しい方に助けて頂いたみたいです」


 騎士さん達はお互いに顔を見合わせて困っていました。おそらく私の証言が信じられなかったのでしょう。


「……まあいい。とにかくすぐにポラストまでついてきてもらう。後ろに乗れ」

 そこでラル様の存在を思いだしました。私の為に水を取りに行ってくれているのです。

「あの、少し待ってもらえませんか?」


 私がそう言った瞬間、騎士さん達の1人が声をあげました。

「隊長!」

 その方が指をさした先には、ラル様が立っていました。何が起こっているのか分からない表情でしたが、手には水筒を持っています。


 しかし次の瞬間、ラル様は水筒を放り投げると、踵を返して走り始めました。

「待て! 貴様!」

 騎士さん達がラル様を追いかけます。


 あっという間にラル様は捕まってしまいました。人と馬の足では無理もありません。


 地面に転ばされたラル様。隊長さんが馬から降りてきて、私を後ろに下げると、剣を抜きました。それをラル様に突きつけて、威圧感たっぷりに質問します。


「貴様、馬車を襲った山賊の一味か?」

「ち、違う!」

 ラル様はそう答えましたが、騎士さん達の1人が出てきてこう言いました。

「最近、子供を使って馬車を止め、後ろから襲うという手口の山賊がいると聞きました。この子供、ひょっとして……」

「可能性はあるな。おい、真偽判定だ」


 また別の騎士さんが出てきました。

 

 騎士Aの祝福

 『真偽判定』 コスト:2

 使用者からされた質問は、必ず「はい」か「いいえ」で正直に答えなければならない。


「お前は山賊の一味か?」

「いいえ」

 答えた瞬間、ラル様が自身の口を塞ぎました。


「ではお前は山賊とは全くの無関係なんだな?」

「いいえ」

 ラル様は身体を捻って暴れようとしましたが、騎士様の力の方が強くて無駄なようでした。


「だがその山賊は、お前を囮にして馬車を襲ったのか?」

「はい」

 無理やり抑えようにも、言葉がぽろぽろと溢れてしまう様子です。これはまずいのでは?


「ふむ、よく分かった。おい、拘束しろ」

「ま、待ってください!」

 私は思わず声をあげました。

「い、一体ラル様をどうするんですか?」


 隊長さんは私の顔を見て、首を傾げながら答えました。

「どうするもこうするも無いだろう。騎士殺しは死罪と決まっている。君と同じように、呪縛をかけた状態で海の底に沈んでもらう」

「そ、そんな……!」


 私は思わず身を乗り出しましたが、別の騎士さんに止められました。

 それでも諦める訳にはいきません。私はありったけの力を振り絞って、暴れます。

 ラル様は命の恩人なのです。こんなに価値の無い私を助けてくれました。ここでラル様を見捨てるようであれば、私は死んでも死にきれません。


「絶対に駄目です!!」

 私は大声で叫びました。


「ラル様は私を助けてくれたのです。死刑になんて、なって良いはずがありません!」

「だが盗賊に協力したのは事実だ。それで君を守る為に2人の騎士が死んだ」

「そ、それはそうですが……でも!」

「もういい。その世間知らずのお嬢様を黙らせておけ」


 隊長格の男がそう言うと、リンテの側に立っていた男が動いた。


 騎士Bの祝福

 『強制睡眠』 コスト:2

 片手を対象の両眼の前に5秒以上置く事で対象を眠らせる事が出来る。

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