砂の上
初めて筆を取ったのですが、あまりにも短いので恥ずかしい限りです。
ですがこの手の、手垢にまみれたような話も箸休めにはなると嬉しいです。
カッと目を見開くと砂の上にいた。
ここは砂漠だろうか。
それにしてはどうやら暑くない。
そもそも自分がなぜ、此処いるのか皆目見当もつかない。いや、自分が誰なのかもすっかり忘れてしまっているようである。
自分以外の人間は不在らしい。
蟻や蚤すらいない真の孤独のようだ。
あてもなく歩いていると硝子の壁にぶつかった。その壁は広がっており果てなどないように思われた。硝子の先は闇。私が、硝子に映った私を砂の中から見ている。
蹴っても暴れても、頑丈で壊れそうにはない。
気がつくと砂が足首の高さまで来ていた。徐々にかさが増しているのだろうか。闇を覗き続けるのはどうにも気が滅入って砂の方へ行くことにした。砂に足を取られながら前に進むと砂のなだらかな山が目の前にできていた。
どうやら上から少しづつ砂が落ち、降り積もっているらしい。私はふと思った。この砂が無尽蔵に降るならば、私はいずれ硝子の中で砂に飲まれてしまうのではないだろうか。
走った、走った、走った。
足にまとわりつく砂が重くなっていく。
砂が私の命に届くまで時間は残り少ないようだ。死ぬのは怖い。なぜ生きてきたのか、明確な理由も思い出せないのにただただ死ぬのは怖かった。
硝子の壁にたどり着いても砂は止まらない。腰まで届く砂に紛れて声が聞こえて来た。耳をつんざくような大きな声だった。気づけばそれは私の声であり、恐怖に震えて叫んでいた。
嗚呼、砂は肩を覆い尽くして動けない。硝子に手を当てながら上がろうとするが最早、遅かった。口の中に砂が入り、ついには声すら出なくなった。
視界も砂に埋まりかけ意識が朦朧とする最中、私はやっとここが砂時計の中だと気がついた。そうか、私は時間に殺されたのだ。
カッと目を見開くと砂の上にいた。
書き終えてみると荒削りな部分が多いですが、これで一旦の結びとさせていただきたく思います。
今後、短編以外でも長編を書くこともあると思いますのでまたいつか。