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デルタトライナイト  作者: 水原翔
第四章 ブラッド編
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第55話 「閉鎖空間」

「……しかし、さっきのは何だ?」


 ゴロウが尋ねると、カエンはつぶやいた。


「ブラッド家だよ。あいつは殺した人間をゾンビ化するゾンビ殺人のゾンゾ=ザス・ブラッド」

「ブラッド家だと!? どうしてこの船に」

「さあな、けど教官に伝えなきゃマズいぜ」

「同感だ。急いで戻ろう」

「ああ!!」


 甲板から船の内部に入ろうとした瞬間、妙な寒気がした。


「なんだ…!?」

「どうした、いくぞ」

「……おう」

「しかし、夜間とはいえ人気がなさすぎる気がするな」

「だな、とりあえず教官室だ」


 ゴロウとカエンは走る。


「昼間は、妹が迷惑をかけたみたいだな」

「妹、レンゲのことか。まぁいいんじゃねえか」

「寛容だな」

「勉強になったぜ、あのゼレングってやつも強かったし。いい機会だったと思うぜ」

「ならよかった。昔から曲がったことが大嫌いで、同族嫌悪的な気質があるからな、あいつは」

「健次と似てるってことか?」

「ああ。多分な。親近感を覚えたんだろう、そしてあまりにも弱い彼に、ため息が出た」

「……健次は強くなろうとしてるからよ」

「悪い悪い。無駄話が過ぎたな。ついたぞ」


 レンゲと健次の話をしながら走り抜けると、教官室へ。

 思いっきりこじ開けようとするが、鍵がかかっていた。


「妙だな、ここが閉まることはないと思うのだが」

「てかよアマトビ」

「ハヤトビだ」

「お、おう。ハヤトビ。人の気配、俺らしか感じなくねえか?」

「たしかにな。ずっと感じていた。さっきお前が戦ったブラッド家がいなくなった瞬間、船の雰囲気がまるっきり変わった。」

「健次もナツキもいねえのかな、ちょっくら行ってみるわ」

「待て」

「ん?」

「なにか来るぞ」


 ミシミシと、ゆっくりと床を踏みつけながら、現れるそれは。

 うめき声をあげながら、血色が悪く目が充血した、スカイベル学園の女子生徒だった。

 カエンはその姿を見た瞬間、なんとも言えない怒りを覚えた。


「……マジかよ」

「なんだあれば!?」

「さっきも言っただろ、ゾンゾ=ザス・ブラッドの能力」

「まさか、あいつはゾンビになったのか」

「クッソ!!」

「ツイデニハナセルヨウニナッタノダゾ」


 女子生徒自身の意志ではないことがわかる、奇妙な声。


「ゾンゾ=ザスが喋らせているということか」

「もう、躊躇はしねえ。火炎斬かえんざんッ!!!」


 襲いかかるゾンビ生徒を、カエンはぶった切る。

 ゾンビ生徒の体は真っ二つに割れ、地面に横たわる。

 そして、焼けて消えていった。


「お前……」

「俺が殺人者と見るか? もう、彼女は死んでるんだ」

「いや、お前の行動は正しい。しかし、またあの生徒がこの船にもいる可能性があるのか?」

「下手したら殆どやられてる可能性だってある、そうなる前に逃げたゾンゾ=ザスを追うぞ」

「理解したが、教官を呼ぶほうが先だと思うぞ」


 ゴロウの一言に、それもそうだな、と刀を収めるカエン。

 ゾンビ生徒は今の所、彼女一人だったようだった。

 そんな姿があるにも関わらず、他の生徒・教官の気配はない。


 まるで、自分たちしかいない、状況のように。

 カエンは思う。

 だったら隣のゴロウはなんだ?なぜここにいる?

 たまたまか?


 そんなことを考えているうちに、ゾンビ化した男子生徒が襲いかかってくる。

 ゴロウは頸動脈を手裏剣で貫いた。


「お前、忍者か」

「ハヤトビ一族はベルフライムでも有名な忍だ。レンゲもそうだぞ」

「彼女は姿でわかる。お前はなんかこう、クロウズ教官のように大剣を振るのかと」


 そうして背中に背負っていた大剣を見てカエンは言う。


「……これはフェイクだ。相手を油断させるためのな。体験はある程度振りかざすまでに時間がかかる。それを狙おうとする輩を油断させ、近づいた敵を殺る」

「えげつねえな」

「来るぞ」


 また、次々とゾンビ化した生徒が襲いかかってくる。

 かなりの数だ。


「畜生ッ! 烈破焼陣れっぱしょうじんッ!!」


 カエンの刀から、炎の衝撃派が発せられる。

 1ルシェほどの大きさの炎が、遅いかかるゾンビを焼き尽くす。


「お前の技も、なかなかだと思うが」


 そう言いながらもゴロウは、カエンの背後から襲いかかろうとするゾンビを

 いとも簡単に倒した。


「クロウズ教官の部屋に行こう」

「ああ」


 星影や健次たちとも合流したほうが良いと思ったカエンだったが、自分らよりも強い人間がいたほうが、良い。

 目的はわかっているのだ。

 デルタトライナイト誕生の阻止。

 そして、ゾンゾ=ザス・ブラッドはたしかに言った。

 トライスキルに目覚めていないお前を殺せば、と。

 だったら、ゾンビ化した生徒には申し訳が立たないが、狙っているのは自分ひとりだ。


 それに、この状況にかなり怒りが来ている。

 人の命を、本当になんだと思っているんだ。ブラッド家は。


 自分が冷静さを失っていることに、気づいている。

 それだけでも成長だ。

 これまでは、自分の怒りの赴くままに、刀を振りかざしていた。

 今は怒りもあるけれど、その怒っている、怒っている自分に気づいている。


 だからこそ、大人の判断がほしい。

 まだまだ、自分も子供だということを再認識させられる。


 クロウズ教官のいる教官部屋につく2人。

 ここも、固く扉が閉ざされていた。


「……チッ、なんだよこれ」

「本当におかしいな、ここ、ウインドベル・ローレライか?違う場所という

可能性があるかもな」

「可能性あるぜ。ナツキも健次もミンティの気配も感じないしよ」

「俺も試しにレンゲとゼレングに声をかけてみよう……だめだ、繋がらない」

「船、突き破ってみるか?」

「結構アグレッシブだなお前」

「一旦外に出てみれば状況わかるんじゃねえかと思ってよ、100年続いた船だ、穴が空いたって落ちやしねえよ」

「普通に出ればいいんじゃないのか」

「多分無理だ」


 そう、カエンが言ったとおり、教官室から離れ、出口へ向かう2人。出口の扉は非常用の機構用ゲートに触れてもびくともしなかった。


「なるほど」

「昔ナツキに聞いたことがある、エデンゲートの魔法の劣化版を悪用している噂があるってよ」

「ん?」

「知らねえかエデンゲート。異世界に通じる扉」

「いや、それぐらいの知識はあるが」

「エデンゲートってトンデモ魔法だけど、もとを辿れば俺たちが使ってる魔法ゲートと原理は似てるらしい。その魔法は、人間そのものを他の空間へ移動させる。ただしそれは現実に存在する空間、ああなんか頭いてえ」

「つまり、この空間もその原理を応用した、別世界ってことか?」

「すげえ理解力だな、ナツキが言ってたことを思い出しただけだけど、多分そうかもしれねえ、なら、ゲート魔法にはゲート魔法、だろ?」

「目には目を歯には歯を、ってことか。まあいいんじゃないか」

「じゃあ、遠慮なく行くぜ」

「待て、何する気だ」

業火無双撃ごうかむそうげきッ!!!!!!」


 おそらく今のカエンの一番の大火力になるであろう大技で、出口の壁に向けて放った。

 言い換えるなら、爆発が起きたという表現が近いだろう。


「うおおおおおおお!? 冗談かお前!?」


 あまりにもの勢いにゴロウは驚いた。

 そりゃ、ゾンゾ=ザス・ブラッドを驚かせた技でもあるし。


「あちゃーガス欠だ。マナ切れた」

「お前、馬鹿だろ」

「あん? 馬鹿じゃねえわ!!」

「いやそのぶっ放し精神。」

「それのどこが悪い!?」

「……脳が筋肉で出来てる類の人間か。お前は、しかし……」

「びくともしねえな、これ」


 ため息をつく2人。



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