第52話 「学園生活とバトル」
ホームルーム。
中学校の教室と近い感じがする。やっぱり異世界でも、こういった雰囲気は変わらないんだな、と健次は感じた。
しかし、一つだけ違うことがあるとするのならば、それは空に浮かんでいることだ。
窓の外を覗くと、雲ひとつない快晴の景色。地平線が見える。
「……すご」
飛行機の小さい窓から見る景色とは、また違う。
窓一面に広がる、大きな世界。
改めて見ると、ベルフライムは山岳地帯に囲まれた土地だということがわかる。
飛空艇のように空が飛べる乗り物が多いのも、頷ける。
ダゼンスも飛行機はあるけど、普段使うのは電車だ。
「いい景色よね。ここ」
星影とカエンが合流する。
「うん、海の上ならまだしも、空の上だしね」
「いやぁすげえよなぁ、こんな巨大な物体が浮いてるんだし、空ってすげわ」
「今日は天気も良いし、各国の様子がよく見えるわね」
「……あんまり気にしなかったけど、ベルフライムって山が多いんだね」
「ええ。飛空艇が活発ではない頃、人の流れや輸送はかなり困難だったそうよ。それでそれぞれの地帯が様々な文化や産業を単独で築き上げてきた」
「だからベルフライムはかなり地方色が強いんだよなぁ。それがいい面も悪い面もあるんだけどよ」
「そうなんだ」
「おはようでござるよ」
そう3人が話していると、2人、昨日健次が甲板で出会った、ゼレング・バルギア、と、レンゲだ。
レンゲはあまり興味がなさそうにこっちのことを見ている。
「おはよう」
「アラヤ・マケンジ殿でござるよな」
「区切り位置おかしいけど、ケンジだよ」
「これは失敬。改めてよろしくでござるよ」
ゼレングと握手をする。
「そちらの、カエン殿でござったか」
「まぁ表彰式で名前はわかるよな、ケンジの連れのカエンだ。あとこいつは星影ナツキ。」
「よろしくでござる」
カエンもゼレング握手をするが、星影はしなかった。よろしく、と一言つぶやいただけ。
そしてレンゲも、会釈する程度だった。
「行きましょうゼレング。授業が始まる」
「……そうでござるな、では、また」
初回からレンゲという少女にあまり好かれていないようだ。
健次はまあいいかと思いながら、席についた。
クラスは、思ったよりも少人数で、10人程度のようだ。
そして午前中のガイダンス。あと、体力試験のようなものがあった。
船の仕組みや、スカイベル学園の仕組みや成り立ち、授業の形式など。
どうやら、座学と実学を併用しているようだ。
スカイベル学園が、浮かんで他の土地に行く理由はそれだ。
机に座った学習だけじゃなくて、各地をまわり、各地の今を学ぶ。
それが学園の基本方針のようだ。
そして、体力試験、というか、ゲート魔法試験。
クラスメンバーが移動したのは、2層目の実践訓練施設だった。フロア一体をすべて使っている、かなり広い部屋になっている。
「実践教官のクロウズだ。よろしく頼む。今から行うのはそれぞれの体力テストのようなものだ、入試でも実施したが、それぞれのメンバーとの実戦の際、どのような立ち回りをすればよいのか、お互いに知ることが主な目的だ。まずは、私自身がお手本を見せよう」
クロウズが自分自身の武器とは違うゲートを作動させると、機械兵が動き出す。
そして、クロウズに襲いかかる。
クロウズは大きな斧を軽々しく持ち上げ、機械兵を一瞬で砕けさせた。
「まぁ、こんなものだな、人数分用意したからやってみろ。万が一負けそうになったら安全装置が働くから大丈夫だ」
おおーと歓声。
さすがクロウズ。余裕の表情だ。
「よっしゃじゃあいっちょやるか」
カエンも刀を構え、自分のゲートを開放する。
そして、目の前の機械兵をめがけて、いつもの技を繰り出した。
「火炎斬ッ!!」
クロウズの勢いには勝らないが、それでもカエンは余裕で機械兵を焼き砕く。
カエンの炎ゲートの斬撃で、機械兵は粉々になった。
なんだかんだ見てたけど、カエンも強いんだよな。
そして、星影。
「なんだかこういう感じ、久しぶりね。いくわよ」
自分の槍を構え、ゲートを開放する。
「月の衝撃」
星影の目の前にいた機械人形が、一瞬の突きで大きな穴が空き、倒れた。
なんだか“マスター”を手に入れて、力が増している気がする。
そして、ゼレング・バルギア。
彼が戦うのは、初めて見る。昨日はただ訓練をしていただけだから。
「拙者は盾と刀使いでござる。主に敵の攻撃を防御することで味方に攻撃の隙を与える役割でござるな」
そう、ゼレングが取り出したのは盾。かなり大きな盾だ。中央にゲートが埋め込まれている、黄土色のゲート。“土”属性だ。
機械兵が先手をうち、ゼレングめがけて斬撃攻撃を繰り出す。
しかしゼレングの大きな盾で防がれる。
そして、気づくと機械兵の足元に、土が埋め込まれていた。
「土眼斬ッ!!」
「うお、あいつ俺の攻撃パクりやがった!!」
カエンが反応する。確かにカエンの斬撃攻撃と名前のパターンが似ている。
「パクリもなにも、拙者の技でござるよ」
「しかも変な名前!! なんだよドガンザンって!!」
「土の眼で敵を捉えて斬るでござるよ」
「意味わかんねえし!!」
「……なんだか楽しそうね」
「うん、多分カエンと同じようなセンスの人がいて喜んでるんだと思う」
そう言いながら、横目で見ると、レンゲもまた、機械兵と対峙するのが見えた。
彼女が持っているゲートは手の甲に埋め込まれていた。あんなゲートもあるんだ。
「ゲート開放、ヘウド」
レンゲが繰り出したのは、“木”属性のゲート魔法、ヘウド。初期型の魔法で木屑を生み出しそれを敵にぶつける。
ケンジもエレメントチェンジで出したことがあるが、それよりも早かった。
ヘウドで機械兵の攻撃が遅くなった瞬間、軽い身のこなしでバク転。そして背後に立ち、
首をクナイでかききった。
「恐ろしい……」
「アサシンだな、あれは」
「まぁ彼女自身はアサシン的な経験はないでござるが、その気になればできるでござるよ、敵にしたくない部類の人間でござるな」
「な、なによ!! 悪かったわね!!」
「いや、褒めてるのでござるよ?」
そして、自分。
そういえば、これまでみんなに助けられてばかりで、自分自身がちゃんと敵戦うことはなかった気がする。
みんなのように、自分は技があるわけではない。
特別なことといえば、エレメントチェンジだが。
「ゲート開放ッ!!エレメントチェンジ!!」
健次は自分のペンダントのゲートを、“火“属性に変化させる。
「ファイア!!」
炎魔法を放ち、敵めがけて打つが、その威力は弱かった。
それも、かつてないほどに、
いわば、ガスがつきにくいガスコンロのような、それぐらいのショボさ。
「え……」
その後のことは、言うまでもなく、機械兵に頭を打たれたのだった。
「お、おいケンジ!?」
カエンと星影が自分のもとによる。
「大丈夫? あなたそんなに弱かったかしら」
「なんだか刺さるよ」
「あ、ああ、ごめんなさい、バカにしているわけじゃないの」
「どうしてだろ、もっと魔法が出せるはずなんだけど」
「……ふざけてるの?」
その光景をみて、レンゲがよってきた。
あまり挨拶もしていなかったのに、今になって。
「ごめん」
「“ごめん”? あなた、ここがどこだかわかって今みたいな魔法をうったっていうの? バカにしてる? 私達を」
「レンゲ殿、落ち着くでござる」
「いいえゼレング。私はイライラしてる。入学式から何も特別もなさそうなこいつが、表彰を受けて、大して強くもないのにここにいて、挙げ句の果てに機械兵すら倒せない。そんな人は、スカイベル学園にいらないわ」
「まぁおちつけレンゲ。そうだな。そんなに不服なら、勝負して確かめてみるか」
クロウズ教官は仲裁をしたかと思えば、別の案を出してきた。
「私の圧勝になりそうですけど、それでもよければ」
急展開だ。
たしかに自分の攻撃は弱かったけど、そんなに突っかかる理由はなんだろう。
レンゲはあんまり自分に興味なかったように見えたけど、そうじゃなかった。特別扱いされていて、弱い自分にイライラしていたのだ。
「……受けます。その勝負」
「ケンジ。安請け合いはやめときなさい」
星影が忠告する。
「いや、受けるよ。僕はまだ弱い。その弱さをちゃんと自覚する必要があるんだ。」
「いい度胸ね。で、この勝負のペナルティはどうしましょう?」
レンゲは乗り気だ。なんだかわからないけれどすごくイライラしているように見える。
「……好きに決めていいよ、」
「なら、私が勝ったら貴方はこの学園から出ていきなさい。」
「ちょ、ケンジ、そんな条件鵜呑みにしちゃ」
「僕がもし勝ったら?」
「そうね……何でも言うことを聞くわ」
「ちょおぉおっと待ったぁあ!!」
カエンがケンジとレンゲの言い合いの中に交じる。
「その勝負、ケンジだけとの勝負じゃアンフェアすぎるぜ、俺も交じる!!」
「ちょ、ちょっとカエン」
「俺はこいつと戦う!!」
「拙者でござるか。まぁ、この際だし受けて立とう」
ゼレングを指差すカエン。よっぽど技名がかぶったのが不服だったのか。
「はぁ。2vs2ってこと? それじゃどう決着つけるのよ」
「何いってんだナツキ、お前もやるんだぞ?」
「え?」
「ほら、ミンティいるし」
「いつの間に!?」
「よぉ。面白そうだからアタイも混ぜろ」
「あなた機械科でしょ!? 馬鹿なの!?」
「……機械科の授業終わってるしなぁ、サボりではないぞ。よし、即席で対抗戦を実施する。3vs3 、ケンジチーム vs レンゲチーム、他の学園生は防護フィールドの外で観戦だ」
「え、ええええ……」
こうして、ケンジ、星影、カエンと、レンゲ、ゼレング、ミンティとの試合が突如始まった。




