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デルタトライナイト  作者: 水原翔
第四章 ブラッド編
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第51話 「レンゲ」

 エド・マクワドルの話も続いたが、その話についてはこれからの話だった。

 宇宙へ行くための手段。

 それは、ラボンス各国がそれぞれ持つ、アーティファクト。


 ウインドベル・ローレライ号は、人の手で作られたが、ベースは古代遺物の船。デルタトライナイトが建造した船をベースに、100年前作り変えたようだ。

 そして、イルリス帝国にあるラボンスコア。

 ラボンスコアは、この世界の活力そのものといってよい。ダゼンスの僕らにとって、電気でもあり、石油でもあり、戦うための戦力でもあり、エネルギーそのものだ。

 イルリス帝国、ラボンス最大の帝国にそのコアはあるらしい。


 そして、レリュール公国。知っている人といえばレロッサ・アイスバイドさん。

 そこに、宇宙船の航行装置に必要な、アーティファクトの“羅針盤”が眠っているようだ。


 最後に、健次がフォグル工房で聞いた、“バリアブルストーン”。

 自分の力強化の意味も込めて、授業の合間にそれを取りに行くことを許可してもらった。

 バリアブルストーン。それがあれば武器を強化できるけれど、問題は、


「自分自身が、弱すぎるんだよな」


 そう。

 健次は、属性を返ることができるゲート魔法を持つが、それはすべて初級魔法しか使えない。はっきり言って戦力にならない。カエンや星影が主力戦力の状態だ。

 “コンディション”も、力ではあるがそれ単独で強烈な力があるわけではない。

 タレス・コンディションは、強さにはいろいろな形があると言ったけれど。


「もっと、強くならきゃ」


 カエンが行っていた、素振り。

 見様見真似だけど、隠れて毎晩やっていた。

 それができる場所を探していたが、この甲板が丁度いいだろう。

 

 練習用の木刀の素振りを行う。

 筋力もあまりない。筋トレもしないと。

健次は、自分ができることからトレーニングを地道に進めていた。

 

 より一層励もうと思ったのは、皐月の居場所を知ったときだ。

 宇宙にいるなんて、聞いてないよ。

 そして、あまりも無残すぎる。


「……皐月を、助けるために」

「手で下ろすだけではだめだぞ、後輩」


 その瞬間、声がした。

 後ろを振り向くと、屈強な男。そして鍛錬をしている女子生徒に、男子生徒が一人。

 女子生徒は黒髪和柄の忍者装束。軽い身のこなしだ。

 そして男子生徒は盾を持ち女子生徒の攻撃を交わしていた。

 実践訓練を行っているようだ。


「え、ああ、」


 健次は突然の声に驚き、木刀から手を放した


「すまない、驚かせたな。しかしあまりにも動作が滑稽だったもので、つい。な。後輩、腰を使え。すべての動作は腰が大事だ。手で振りかざそうとすれば力は入らないし、あと、肩の力を抜け」

「はい……」

「ああ、すまない、私の名はゴロウ、今戦っている二人は俺の妹のレンゲあとゼレングだ。よろしく。ケンジ・アラヤマ」

「ど、どうも」


 女子生徒は会釈をする。


「ゼレング・バルギアでござる。鍛錬を重ねるのは良いこと。ただ基本を知らないといけないでござるな」


 男子生徒、もといゼレング・バルギアは、盾を一旦起き、健次


「ご、ござる!?」

「拙者の口調に違和感が?」

「違和感ありまくりだよ」


 ラボンス世界にも昔の侍みたいな口調をする人物もいるんだなと、ケンジは思った。

 ただなんか、違う気がする。


「まあ第一印象は大事でござるからな。この口調でよく覚えてもらえるので楽なのでござる」

「兄上、ゼレング、続けましょう?」

「すまないレンゲ、鍛錬の邪魔をしたな」


 レンゲ、という少女は話を切り上げたがっているようだ。

 というよりも、何か自分が睨まれている気がする。

 なぜだろうか。


「……レンゲ殿、今日から同じ学友になる同士、親睦を深めるのも悪くないでござろうに」

「いまは鍛錬のほうが大事でしょう? 一分一秒も無駄にしたくないし」

「焦りは禁物でござるよ? ケンジ殿、拙者とレンゲ殿は、同じ組でござるから、明日からよろしく頼むでござるな」

「う、うん。よろしく」


 なんだか居心地悪くなった健次は、会釈をしてその場を立ち去った。


「続けるわよ」

「レンゲ。お前素直じゃないな。手が震えてるぞ。ちゃんと話せなくて悔しかったんだろ?」


 ゴロウがそう言うと、うんうんとゼレングは頷いて、


「そうでござるなぁ。レンゲ殿は人見知りでござるからなぁ」

「うるさい!! だ、だまれ!!」


 レンゲは顔が赤くなっていた。


「顔が赤いぞ。因縁をつけたがる気持ちはわかるけど、挨拶ぐらいできないと、お前もやってけないぞ」

「か、からわからないでください兄上。私はただ、嫉妬しているだけです」

「そういう正直なところがいいんだよなぁお前は。人見知りだけど」

「そうでござるなぁ。自分は一生懸命に頑張ってベルフライムに入学したのに、急に入ってきて表彰。星影やカエンは強いと評判でござるが、あの少年だけあまり何も前評判がないでござるからなぁ、それにあんな感じであると、嫉妬になるのもわからぬこともないでござる」

「……本当のこと言わないで!!」

「いやぁああ本当にかわいいなレンゲは。そうやって素直だから見てて飽きない」

「そうでござるなぁ」

「だまれんしゃあい!!!」

「その素直さを、もう少し初対面の人間に打ち明ければ、人気バク上げ間違いなしでござる」

「そうだな。ダスクナイツも安泰だ。わっはっは」

「……いいから続ける!!」


★ ★ ★


「おきろーけんじーあさだぞー」


 カエンが起こす。もう、朝か。

 体のあちこちが痛い。まだまだだな、自分も。

けれど、ゴロウさんのアドバイスは確かだった。

 刀の振り方をまともに知らなかった健次だったが、基本動作を行うことで実践することが出来た。


「……珍しいわね。貴方が朝遅いなんて」

「おはよう星影。はは、ちょっとね」


 寝癖を直しながら、身支度をする。


「朝食は簡単に用意しておいたから、それを済ませて。今日は初日よ」


 そうだった。

 いろいろな出来事があって忘れていたけれど。

 健次は、この巨大飛空艇、“ウインドベル・ローレライ”号に作られた学園、スカイベル学園の学園生活が、始まるんだった。

 制服に袖を通し、星影が用意してくれた朝食を口にする。

 あれ、星影って料理できたんだ。意外にうまい。


「……それ、アタイが作ったんだ」

「ミンティが?」

「おう、盗賊時代に団員のメシ係だったからよ、短時間でできるやつは色々知ってるぜ、あとカエン、星影。ゲートの不調があればアタイがなんとかできるから、金かけて工房つかわなくてもいいぜ」

「おお、さすがミンティ、助かるぜ」

「頼りにしてるわ。その点だけは」


 しかし、ミンティも機械だけの人間ではなかったのか。

 それもさらに意外だった。


「その点、は余計だよ!!」


 色々あったが、朝が始まった。


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