第50話 「禁忌の真実と、進むべき道」
その後、クローバーに言われたとおり、カエン、健次、星影、ミンティの4人は、学園長室に集まった。
部屋にはクローバー、クロウズ教官、学園長が。
「……よく戻ってきた。皆の衆」
「アタイは仲間はずれだったけどな」
と、学園長の言葉にミンティは拗ねていた。
まあ、無理もない。
「レポートは呼んだぞ。星影ナツキよ。」
「ええ、色々とご迷惑をおかけしました」
「いや、もとは僕の目的のためだったし」
「気に病むでない。事実を一つ知ることができた。ただしあまり信じられないが。健次、君の探し人は、宇宙にいるとな」
そう、皐月は、ここから1000万光年も離れた、隔絶された宇宙迷宮にいるといっていた。
ただでさえ、ラボンス世界のことも何もわかっていないのに、自分を冒険に巻き込んだ張本人は、宇宙にいるという。
どこかの組織が幽閉しているわけでもなく。
悪い王子に捕まっているわけでもなく。
皐月は、篠山皐月は、到底たどり着くことはできない、宇宙にいる。
「はい、けど僕は助けたい、皐月を、星影だって手があるって」
「ええ。手はある。デルタトライナイトが残した古代遺物(アーティファクト)よ」
「……さすがマスターの力じゃな」
星影が言った瞬間、学園長は納得した。
「さっぱり話が読めねえ」
「アタイもだ。アーティストってなんだ?」
「それは演奏家とかそういうやつじゃ」
「アーティファクトよ。」
健次も突然出てきた言葉に何が何だか分からない状態だった。
「1から説明しよう。それにはまず、デルタトライナイトの伝説の、語り継がれていない芯の部分を話す必要があるからの。マスターを持っている星影なら、わかるのではないかの?」
「いえ、この力は使うリスクが高すぎるため、そこまではまだわかっていません」
「……なるほど、ここに、マクワドル家が2000年守り続けた書物がある、その内容について少し話して差し上げよう」
「私達が聞いても良いんですか?」
クローバーとクロウズは情報を自分たちが聞いても良いのか気にしていた。
「もう当事者じゃろうて。ただ、気にしての通り。今から話す話は世界の真実じゃ。くれぐれも他言無用で頼むぞ」
「デルタトライナイトは、宇宙に行ったことがあるんじゃよ。というか、宇宙で最終的に“悪魔”を倒したんじゃ」
「宇宙!?」
「そうじゃ。“宇宙船”を使っての。」
宇宙船……?
その時、健次の脳裏に浮かんだのは、
この世界に来る前の、一番最初に見た夢だった。
宇宙で戦う夢。巨大戦艦と人型兵器が戦う夢。
少し頭が痛くなる。
何か、大事なことを忘れている気がする。
けど、気がするだけで、何も思い出せない。
ただ、あの夢と何かが、つながっている気がする。が、それは思い違いだろう。
単なる夢と、今知ろうとしていることに、関連性はあまりないはず。
「……どうした? 新山健次」
学園長が声をかけると、はっと我に返る。
「い、いえ」
「話を続けよう」
急に、声が頭に響かなくなる。
なぜだ、今いちばん大事な話をしているはずなのに。
一瞬意識が飛びそうになった。
「学者、タレス・コンディションは、万能の知識を兼ね備えたエルザ・マスター、強大な力と権力を持ったガルグ・ストロングと手を合わせ、宇宙船を開発したんじゃ」
「けど、今の技術で宇宙船なんか作れるはずない」
ミンティが否定する。
「いいや、作れるんじゃよ。ただ作らせていないだけじゃ。そういったことを思いつかないように」
「……まさか、世界が宇宙へ行くのを政府は止めていた、というんですか」
「そのまさかじゃ」
星影の問に対して、学園長は頷いた。
ミンティが嘘だろ、と思わず声に漏らした。
「なんでそんなこと!? 意味あるだろ、宇宙にはまだよくわかんねこといっぱいあるってじいちゃん言ってたし」
「ワシも同感じゃ。宇宙に出ることで、ラボンスの文明はますます発展することができる。だが、ラボンスは、惑星ラボンスは今、危機的状況にある。その防御策なんじゃよ、宇宙に行かせないのは」
健次は、ラボンスもまた、惑星という概念があるのかと安心した。
「……伝承には、第二のデルタトライナイトが現れるまで、宇宙に言ってはならないとある。出た瞬間にヒトは、“悪魔”に命を奪われると」
「悪魔に命を奪われる?」
「そうじゃ。その意味を理解していなかった我々は、各国で宇宙に行くための船を作成していた。じゃが事件は起こった、時期は200年前じゃな」
「200年前って、ラボンスゲート革命の時期じゃねえか」
「そうじゃな。気づかんか? 魔法を世界が禁じたきっかけになる事件」
ミンティがラボンスゲート革命の時期を言うと、学園長は肯定した。
そう、レロッサ・アイスバイドがいたときに話した、ラボンスの歴史。
――正直、誰も知らん。何者かによって隠蔽されておってな。とにかく、素の状態で魔法を使っちゃいけへんで~ってなるきっかけになったんや
「まさか、犯してはならない“禁忌”って?」
「“魔法”を使って、宇宙に行こうとしたんじゃよ。マギアス・ソサエティの前身となる組織がな」
「……!?」
「マナの過剰消費による魔法の暴走、ってことですね」
禁忌の正体。
確かに、ダゼンスでも宇宙に行くのは、ものすごい量のエネルギーが必要と聞いたことがある。
エネルギーが違うだけで、魔法後からも、それと同義のようだ。
クローバーは魔法が暴走した原因について話す。学園長は頷いた。
「そうじゃ。これは2重の危険があって、魔法を使いすぎることによる禁忌と、それを使って行くことによる、“悪魔”からの警告。」
「悪魔は、ラボンスから宇宙に出た人間を、殺していた、ってことか」
「……ああ。デルタトライナイトが倒したはずの悪魔は復活。そしてその悪魔に、惑星ラボンスは200年以上支配されているんじゃよ」
「悪魔って、結局何なんですか」
「伝承には、悪魔の正体の詳しい事情については記述されておらん。」
宇宙へ行くのには強大なエネルギーが必要。しかし魔法を使えば、暴走して自分の身が持たなくなる。
そして、やっと宇宙に行けたとしても、それを防ぐ悪魔の存在。
それが、ラボンスがずっと宇宙へ行けなかった理由。
「……デルタトライナイトなら、それを突破できるんですか?」
「ああ。伝承によれば、トライスキルさえ揃えば、その悪魔を突破することはできるそうじゃ」
「なら、宇宙へ行くための1つの障壁を壊すためには、俺がなんとしてもトライスキルを手に入れる必要があるってことだな」
カエンが言うと、学園長はまた、頷いた。
「そうじゃな。そして、もう一つの障壁となる宇宙へ行くための手段。それは、各地に眠る、“宇宙船の部品”を探すことじゃ」
「部品? もうすでに宇宙船は完成できる状態にあるってことですか」
「そのとおりじゃ、なにせ、このウインドベル・ローレライ号は本来その目的のために造船されたといっても過言ではない」
「……なるほどね、それが、私の脳裏に浮かんだ、アーティファクトってこと」
「左様。各国に眠るアーティファクトを集めることが、宇宙へ行くための近道じゃ。ベルフライムの“ウインドベル・ローレライ”、イルリス帝国にある“ラボンスコア”、レリュール広告にある“羅針盤”。 そして、アイン共和国にある、“バリアブルストーン”。すでにワシは、各国の首脳へこれを受け取る準備をお願いしておる」
全世界にある、エド・マクワドル学園長が言う宇宙船の部品。
「ちょ、ちょっと待って下さい。ラボンスコアって、この惑星ラボンスそのもののエネルギーコアじゃないですか。いくらこんな事態とはいえ」
口を閉ざして聞いているだけのクローバーだったが、流石にその言葉には驚いたようだ。
「そうじゃな。じゃが止む終えまい。このまま200年も悪魔は我々をそのまま監視して追ったが、デルタトライナイトが現れた今、“悪魔”の動きが活発になっておる。うかうかしてはおれん。次第に、このラボンスは世界そのものが支配される手前まで来ておるからの」
「……」
「案ずるでない。“悪魔”の戦闘が終われば、通常の生活形態に戻れるようにしておるからの」
「それが揃えば、宇宙へ行けて、皐月を助けることができるんですね?」
「左様」
こうして、学園長から、宇宙へ行くための手段と、
ラボンスゲート革命前に起きた禁忌の真実を知ることができた。




