第49話 「パーティ」
……船は、動き出す。
いつか、乗ってみたいと空を眺めていた。
そんな空に浮かぶ、船に。
入学式のあと、船上パーティが催され、それぞれが楽しんでいる。
そこで打ち解けあう仲間もいたり。和気あいあいとしている。
そんな中カエンは一人、甲板に出て風に当たっていた。
「……。」
デルタトライナイト。
ケンジのコンディションの力。
ナツキのマスターの力。
そして、自分が取るべき、ストロングの力。
――坊主。復讐からは何も生まないッ!! それがお前の“弱さ”だ!! 深く考えろ、己が戦うべき、真の理由を!!
――さすれば我の力、“S”を授ける試練の門が開く。しかし今の坊主ではその門すら開かぬ!!
ガルグ・ストロングに言われたことを思い出す。
「わかってるんだ、わかってる」
意味はわかる。
けれど、それをどこか納得できない自分がいて、もどかしくて。
復讐と。そして、自戒と。
カエンは、拳を握りしめる。
「そして、何の用だ?」
殺気。
ずっと感じていた。
入学式のときから。
自分が一人になるところを、狙っていた。
『我は、影』
「は?」
『貴様自身であり、貴様ではない。影』
「意味わかんねえし」
声は、ゆっくりとカエンの前に近づいてくる。
カエンは、刀を構え、ゲートに手をかざす。
『無駄だ。今の貴様に私を超えることなど』
「どうかな、火炎斬ッ!?」
『本当に、何も覚えていないのか?』
「何も覚えていない、だと?」
攻撃はあたりもしなかった。
影はひらりと交わし、カエンの背後に立つ。
『ククク、何れわかる。お前の本当の正体に。そしてお前はいつか、お前が見た光景を、自分の手で再び』
影は、そうつぶやいて消えていった。
「くそっ!! 意味わかんねえ!!」
★★ ★
「カエンは?」
「……風にあたってくる。と言ってたわ」
「めずらしいな、あいつこういうイベントごと好きだろ、多分」
ミンティと星影と合流する。
なんだかんだ、他のメンバーと何を話したら良いのかわからなかったから、
結局集まることになった。
「多分、バカ騒ぎするほうね。こういった立食パーティのようなものはあまり好まないし」
「そう、か」
「それにしてもよかったな、あんたら。国王に表彰されてよ」
「そうね。おかげで変に注目浴びちゃってるけれど」
星影は、気にしていたようだ。
「ま、いずれにしもいいことじゃねえか」
「あのあと、ミンティは国王様に呼ばれたの?」
「ん、ああ。なんで知ってるんだ?」
「ちょっとね。でも良かったよ。ミンティが一番頑張ったんだし」
「一番ってこたぁ、ねえよ。健次たちのおかげだ。そのおかげでじいちゃんが助かった。それだけのことだ」
「けど」
「いいんだよ、アタイは。あんまり大勢の前に出るのなれてないし」
そういうミンティを見て、少し寂しそうな顔をしたのを察したのか、星影がつぶやいた。
「……良いのよ。脳筋女の悩みをたまには聞いてあげようじゃない」
「あのな。なんで上から目線なんだよクソアマ」
「なによ」
「ちょ、ちょっと待ってよ2人とも」
「そうよ、喧嘩したら貴方達のきれいな顔に穴あけるわよ♪」
と、冗談なのか、本気なのか、笑顔で現れた人物は、制服姿のクローバーだった。
唐突な言葉に3人共驚いた。
「クローバー先輩」
「ごめんね、表彰のこと。黙ってて。驚かせようと思ってさ」
「いえ」
「まー楽しむんだよ。喧嘩はだめだからね」
「「はい……」」
この学園で一番怒らせてはいけない人物だ。
そう、3人は悟った。
「そうだ。明日、学園長が呼んでいるから、もろもろのオリエンテーションがおわったら尋ねるよう―に。星影さんは特にね」
「ええ。承知しました」
「……私も、迷惑かけちゃったわね」
「ま、いいんじゃない。こうして元気でいるわけだし。皐月にも一歩近づけたことだし」
「それもそうね。さ、カエン呼んでくるわ」
「あ、僕も行くよ」
「ちょ、ちょっとまてよ、アタイも!!」
そんな光景を、
睨むような顔で見つめる、少女が一人。
そばに立つ大柄の男。
「何よ、あれ」
「レンゲ、どうかしたのか?」
「いいえ兄様。ちょっと妬いていただけ」
「珍しいな。ああ、あの表彰の。てか妬いてるとか素直だな」
「そうです。とくにあの男、まるで強さを感じない。それでいてあんな待遇を受けるなんて」
「不服か?」
「ええ。一度戦って確かめる必要が」
「別にほっときゃいいだろあんなの」
「いいえ、妙にムカムカするわ」
「落ち着けよ。不良みたいだぞ」
「……うるさいっ!! 気になることはわかるまで気になるんです!!」
(レンゲがああになってまで気になる存在、興味深いな)
「レンゲ殿~~ゴロウ殿~~お待たせした」
そして、その2人に挨拶する、屈強そうな男がまた一人。
「ゼレング。遅いぞ」
「すまぬすまぬ。なかなか美味なもので目移りしてしまうのでな」
「しかし、それにしても感服だな、この船の大きさには。」
「そうでござるな。さすがベルフライム王国が誇る巨大船。船の中にいるとは思えない感覚でござる。ましてや空に浮かぶものに乗るなど」
「……ああ。とんだ経済力だぜ」




