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デルタトライナイト  作者: 水原翔
第四章 ブラッド編
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第48話 「入学式」

「それでは、王立スカイベル学園の入学式を執り行います」


 クローバー先輩が司会だったのか。

ナハト魔法特区の巨大講堂。大勢の来賓が訪れている。

 さすが、王立学園という事はあるのだろうか。

 

 自分と同じ制服を着た人間が、何百人かいる。

 このメンバーがスカイベル学園に入学して、ウインドベル・ローレライ号に新たに乗る、乗組員たちなのだろう。

 中学校の入学式とは、わけが違う。

 皐月も、この場所に連れていきたかったな。


「……式辞。ザイル・フォン・ローレライ国王陛下、お願いいたします」


 会場がざわつく。

 国王陛下が、挨拶に来るとは、この学園、相当すごいんだな。と思う。

 ザイル・フォン・ローレライ。

 初老だが、壇上に現れた瞬間、その場の空気そのものを掌握する。

 さすが、一国の君主だ。

 一瞬、国王が自分と目があった気がした。


「ベルフライム王国、君主である、ザイル・フォン・ローレライだ。本日は、王立スカイベル学園への門を開いた300名の皆、入学誠におめでとう」

「……さて、スカイベル学園はラボンスの世界でも唯一無二の移動型学園だ。机に座った勉学だけではなく、全国を舞台とした“国“そのものを学ぶ教育を方針としている。世界情勢は刻々と変化し続けており、ベルフライム国民もまた、その変化を乗り越えられる人材を創出する必要がある。私の祖父であるリコイル・フォン・ローレライが作り上げた、このウインドベル・ローレライ号を守り続けるため、その信念を受け継ぐため。日々切磋琢磨し、それぞれの道を見つけていただきたい。」


 拍手喝采。

 このザイル・フォン・ローレライという国王は、かなり人気のようだ。

 この拍手がそれを物語っている。


「私がこうして国の代表として挨拶しているのは、例年の慣習でもあるようだが、今回は別の目的もある」


 ザイル国王の声のあとに、クローバーが言葉を放つ。 


「……表彰。カエン、星影、新山。壇上へどうぞ」

「は? おい呼ばれたぞナツキ、ケンジ。」

「いいから行くわよ」

 

 カエンが戸惑う中、3人は大勢の注目を浴びる中、壇上へ。


「諸君!! 彼らは学生だが、あることを成し遂げてくれた。それは国が誇るフォグル工房の親方、ハーブ・フォグル誘拐事件を見事に解決し、この国の財産の一つを守ってくれた。その働きと勇敢さに、心からお礼を申し上げたい」


「……なんでミンティは?」


 ミンティは壇上に呼ばれなかった。

 おそらく、元盗賊ということもあるのだろうか。

 彼女が一番、おじいさんを助けたのに尽力したというのに


 しかし、疑問を持つ前に、ここは場を乗り切るほうが先決だろう。

 ザイル国王の手から直接、3人に表彰状が渡される。

 目立つの、あまり嫌なんだけどな。


「ありがとうございます」

「君がケンジだな。まずは感謝しよう」

「どうも」

「……君が思うことはごもっとだが、すまない。私も彼女を呼びたかったんだが、大臣の意向でね。

致し方なく従わざるを得なかった。彼女には大衆がいない場で、改めて感謝を申し上げたいと思うよ」


 ザイル国王はケンジだけに聞こえる声で話した。


「…………。」


 政治的。

 ベルフライム王国も、国だ。

 やはりそこには何かしらの意図があるのだろう。

 というかまず、元盗賊に表彰するのもあれだよな。イメージ的に。と健次は思った。


 ミンティはどういう表情をしているのだろうか。

 大勢の人に囲まれて、彼女を見つけることができなかった。


 式は続く。


 様々な行事が執り行われた。


 そして、

 ウインドベル・ローレライ号の発艦式が始まった。

 甲板に入学した学生、教官が並び、みんなテープを持っている。

 船はゆっくりと、重い腰を上げながら、浮上していく。

 機構型ゲートの重々しい音が鳴り響く。

 船のエンジンと仕組みは違うのだろうが、それに似た何かを感じる。

 色鮮やかだ。


 同じ班の4人であるカエン、星影、ケンジ、ミンティは、一緒にその光景を眺める。

 


「……すげえな」

「ええ。スカイベル学園の生徒しか見れない、景色ね。」

「けど、まさか表彰されるとは思ってなかったぜ。おかけで大注目だ」

「そうね。あまり目立ちたくなかったけど、色んな意味で注目されているわね」

「ミンティが一番頑張ったのにな」


 カエンの一言で、ミンティは少し目が潤った。


「あ、アタイは別に、あんたらがいてくれたからだし」

「同感だわ」

「お、めずらしいなナツキ」

「別に、ちょっと嫌な感じがしただけよ」

「だよな~なんで俺ら3人だけだったんだろ」

「……デルタトライナイトだから?」

「関係はあるかもしれないわね。学園長も国とつながっているみたいだし、その存在を公にはしなかったみたいだけれど」

「どういうことだ?」

「ベルフライム王国としての諸外国へのアピールよ。歴史上の存在になりえるかもしれない3人を持ち上げる、ね。」

「よくわかんね」

「まあ、考えても仕方ないよ、今はこの景色を、楽しもう」

「だな」


「ね、星影、一つ聞いてもいい?」

「ええ」

「リコイル・フォン・ローレライが国王の祖父だとすると、この船って製造して何年くらい経っているの?」

「ちょうど100年よ。改修を繰り返しているから、そこまでボロくはないけれど」

「100年!?」

「古い船だから、ところどころに綻びが出ると思いきや、意外とそうでもないのよ」

「おうおう。ここでアタイの出番だな」


 ミンティが目をキラキラさせながら話し始める。

 あいも変わらず、機械のことになると目の色が変わる。本当に好きなんだろうな。

 制服も似合っており、以前の盗賊のような格好よりはだいぶ良い気がする。


「ケルタ鉱石、まあこれを巡ってアタイはあんたらに迷惑かけちまったけど、この石がベルフライムでは大量に採れる。コイツのメリットはなんと言っても、軽くて丈夫であることだ。それにゲートエネルギー伝達効率もいいから、船体そのものにエネルギーを通しやすい」

「そうなのね。前々から疑問に思っていたけれど、船ってどうして浮くのかしら」

「おおう、いいところに目をつけたな星影。」


 ミンティのこと、なんだかんだ嫌っていた星影だが、

 こうした話になると、前のめりに聞いてくる。やはり勉強するのが好きなのだろうか。

 しかし、こんな巨大な船が浮くのはたしかに興味がある。


「実は、機構型ゲートにも、属性があるって事は知ってるか?」

「そうなの?」

「お、ナツキでもしらないことがあるのか」

 

 カエンが珍しがる。たしかに。


「そりゃあるわよ、機構型ゲートには私疎いし」

「まあ属性の概念を考えてるやつは少ねえよな、勝手にラボンスエネルギーを動力エネルギーに変換しているだけのやつもいるらしいし。基本的な仕組みは人が持ってるゲートと同じ原理で、属性も同じだ。木・火・土・金・水・月・陽。主に船が浮く原理は、月の機構型ゲートを利用してる」

「なるほど、重力ね」

「さすが月使い。そう、飛空艇は主に月の機構型ゲートだ。重力制御して船体そのものを軽くする。そのゲートエネルギーがいかに船体全体に行き渡るか。それが大事だ……いや、それも大事なんだが、話を戻すぜ」

「機構型ゲートの特徴は、いくつもの属性が使える。人じゃないから、ものが大きければ大きいほど、ゲートエネルギーとの均衡が取れるからな。まあそのへんは星影のほうが詳しそうだが、大抵の船は火属性を使い船を動かしている。」

「おー。」


 なるほど。だからエンジンと似た音がするのか。

 エンジンも、家にあった図鑑に載っていたが、内部で燃焼を起こしてエネルギーを出す。

 ゲートも、飛行機のエンジンと似たような原理なのか。


「なるほどね。機構型ゲートについては私も知らなかったけれど、基本構造は似ているのね。」


 そんな2人の会話を聞きながら、船は浮かび始めた。



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