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デルタトライナイト  作者: 水原翔
第三章 星影の巫女編
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第43話 「再会」

 デルタトライナイト 第43話



「みつけた」

「ほ、星影の巫女!?何故ここに……!?」


 星影を誘拐した、色違い、白色のフードの男が、祭壇に向け祈りを捧げていたところに、足を踏み入れる。

 祭壇前を護衛していたステラ・ウンブラの教徒たちが、一瞬で横に倒れる。


「か、影落ち!? 何故だ……」

「許さない」


 星影は一瞬で移動し、男の背後に。

 男は魔法を唱えようとした瞬間、星影は男の首をつかむ。

 誘拐される時の弱さとは段違いだ。

 男は、自分の声が出せず、身動きがとれないことに驚いた。


「っ……」

 ――ソウダ。コロセ。ソシテオマエノタイセツヲウバエ

 声の言われるがまま、力を強める。


「ナツキッ!!」


 刹那。

 聞き覚えのある、声がした。

 星影は一瞬だけ手を緩めた。その隙を見せたため、男は星影から距離をとる。


「ふっ。助かりましたよ」

「てめえ」

「カ……エン?」

「おう? お前髪黒くしたのか。案外にあってるな」

「……」


 カエンの言葉を、星影は返さなかった。

 何かおかしい。


「カエン。星影の様子がおかしいよ」


 健次がそう言うと、男は高笑いしながら、星影に向けて魔法を放つ。糸のようなもので星影は縛り付けられ、身動きがとれなくなった。

 そして、男は叫ぶように語り始めた。 


「影落ちしたんですよ、我が巫女は。こうなってはもう、星屑になってしまう。手遅れです。次の巫女を見つけるだけです」

「影落ち?」


 クローバーもカエンも知らないようだ。

 星影の身に、何が起きたのだろうか。

 

「……なあ、あんた」

「なんでしょう?」

「何でこんな、人道がはずれたことするんだ?」

「フフッ。どうせ貴方たちはここで巫女に殺されるわけですし、いいでしょう。私の言葉であなた方もひょっとしたら我々の意志を共有できるかもしれませんからね」

「その可能性は微塵もないがな」

「フフッ。いいでしょう。我々の目的は、宇宙最大のコア。ユニバース・コアによる魔力供給。その魔力を浴び、ラボンスコアを破壊することで、上位存在に上がることが出来るのです」

「ユニバース・コアだと?」


 聞き慣れない単語。

 コアってラボンスコアだけじゃなかったのか。

 けど、そういうものがあるという確証は、この男の話からでは分からない。


「そうなのです。我々ユニバース・コアを手に入れるためには、バイパスたる星影の巫女の力が不可欠」

「つまりてめらは、そのわけわかんねえ理由のせいで、ナツキたちをこんなとこに閉じこめてたわけか?」

「ええ。崇高なことなのですよ!?」

「私利私欲の為に、人の命をもてあそんだわけかよ」

「私利私欲?いいえこれは人類がさらなるエネルギーを手に入れるために必要なことなのです」

「どんな理由だろうが、命をもてあそんでいい理由にはならねえ」


 カエンは、刀を抜刀し、構える。

 もう、負けねえ。


「勝てるんですか? 私に一度破れたのに」

「……さあな。けど俺は、俺に出来ることを精一杯やるだけだ。健次、クローバー先輩、いくぜ」


 火炎の言葉とともに、健次もゲートを構え、クローバーも右腕をバルカンに変形させる。 

 

「うん!!」

「ええ」

「火炎斬ッ」


 カエンの攻撃。白フードの男はひらりとかわす。

 交わした先へ、立て続けにクローバーがバルカンを回転させつつ機動を先読みして撃ち始める。


 被弾したかと思いきや、魔法障壁にはじかれ、球は落ちた。


「無駄ですよ」

「ゲート、最大解放」

 

 そう呟くと、カエンは自分の刀を地面に突き刺した。

 地響きが始まり、ゲートの水晶が真っ赤に燃えるように光り始める。

 星影に止められていた危険な行為。

 けど、カエンは今それどころではなかった。

 ゲートから引き出す魔力の最大解放。

 白フードの男は、その巨大さに驚いていた。

 

「カエン、無茶は」

「健次。離れてろ。大火炎斬ッ!!」


 地面に突き刺した刀を取り外したカエンの刀は、太刀のごとく長く、燃えさかる炎を纏っていた。

 そしてその振りかざした威力で、男の魔法障壁が打ち砕かれる。


「なっ!?」

「必殺ッ!! 業火無双撃ッ!!」


 爆風が吹き荒れる。風の反動でクローバーも健次も思わず後ずさる。

 巨大なカエンの一撃が、魔法障壁を破った男に。


「ぐぁあああああ」


 見事に命中し、男のフードは焼け落ち、壁に思いっきり体をぶつけて倒れた。

 カエンの刀はそれでもなお、炎をともし続けている。


「観念しろ」

「フフ……」


 男は、ぼろぼろになった体にカエンに刀を向けられながらも、笑みを浮かべて笑い始めた。


「何がおかしい?」

「見事ですよ。成長が伺えますね。フフフ」


 男の肌が乾いた土のようにぼろぼろと床に溶け落ちていく。

 そして、ある紋章が腕に刻まれた、一人の男が現れた。

 それをカエンは、強く覚えていた。


「お前……。ブラッド家か!?」

「ご名答。私の名はアン=ハム・ブラッド。この場ではお初にお目にかかります」


 怒りを押さえていたカエンも、さすがに動揺したようで、にらむようにアン=ハム・ブラッドと名乗る男をみる。


「そう睨まなくても」


 目の前のステラ・ウンブラの団員の正体は、ブラッド家だった。確か、ヘレビス遺跡攻略の時に、クロウズ教官が遭遇したのを、健次は聞いたことがある。 


「何の目的でこんなこと」 

「私の特技は、人に擬態する事と、殺した人間の皮をかぶって、その人物の能力を使えることでしてね」


 カエンがその言葉を聞いた瞬間、刀を振りかざすが、アン=ハムはひらりと交わし、後ずさる。


「気が早いですね」

「てめえ、そうやって殺しを繰り返しているのかよ」

「カエンさん。でしたね。その通りです。私の特技なので」

「何で俺の名を」

「まあまあ。それはさておき、ステラ・ウンブラは確かにベルフライム軍に逮捕されました。けれど彼らは、特殊な魔法を持っていた。それが”星影の巫女”そしてユニバース・コアの力を手に入れるのに必要不可欠でしてね。牢獄にいる彼らの首領を、殺して皮を着ることで魔法が使えるだろうと、私の能力を見込んだマギアス・ソサエティの方々からのご依頼でして」


 アン=ハム・ブラッド。紳士服にシルクハットをつけた丁寧口調の男だが、話す内容は狂気じみていた。


「本当に、依頼さえあれば何でもやる組織のようですね」


 クローバーも話している最中だが遠慮なくバルカンを向け、攻撃を続ける。しかし一発も当たらずひらりとかわされる。さっきの男より格段に機動力が上がっている用に見える。

 

「うーん。依頼だけじゃなくブラッド家もちゃんと理念をもって行動させていただいているのですが。まあいいでしょう」

「つまり、星影を誘拐したのもマギアス・ソサエティの依頼で、行動しているってこと?」

「その通りですね。まさか影落ちしてしまうとは思いませんでしたが。まあそれでもいい媒介にはなってくれるでしょうし」

「てめえ」

「あと、もう一つ聞いていい?」

「ええ」

「皐月を、篠山皐月を誘拐して、閉じこめているのも君らなの?」

「篠山皐月? どなたでしょうか」


 アン=ハムの口振りだと、本当に知らないように見える。


「エデン・ゲート付近で誘拐したんじゃないのかよ!?」

「エデン・ゲート? ブラッド家がそこに足を踏み入れたたことは知りませんが」

「どういうことだ?」


 健次は、ブラッド家が目の前に現れたのなら、皐月の居場所を知っているはずだと尋ねた。しかし、アン=ハム・ブラッドは、その件については知らない表情をしている。

 嘘をついているのか、本当に知らないのか、もしくは、

女神エデンが、嘘をついていたのか。


「まあ、計画は失敗ですね。別の巫女を探すことにしましょう。あなた方はせいぜい、あの影落ちした巫女に、殺されてください」


 そう、アン=ハム・ブラッドは一言呟き、一瞬で消えてしまった。


「待てッ!!」

「行ってしまいましたね」

「ああクソ、訳わかんねえ……」

「確かにそうだけど、カエン、星影が」

「……」


 星影は無言のまま、縛られた魔法を無理矢理解く。

 いつもの冷静な星影と違う強引さで。

 影落ち。そうアン=ハムブラッドは言っていたが。


「ナツキ」

「カ・・・エン」


 落ちていた刀を取り、星影は立ち上がる。

 星影の体から、黒い靄が出てきている。


「もう、みんな死んでしまえばいいのよ」


 そう星影が呟くと、黒い靄からいくつもの影が地面の土を媒介にして人の形をした小型のゴーレムを多数形成し始める。

 そして星影は、カエンめがけて刀を振りかざした。

 カエンはそれを受け止める。

 健次とクローバーは、ゴーレムを1体1体倒し始めるが、倒しても倒しても、星影の影から次々と再生を始める。


「あの時と、同じか」


 カエンは反撃をしない。

 星影の攻撃をすべて受け止める。


「落ち着け、ナツキ」

「……」


 カエンの頬に傷がつく。

 わずかだが血が流れ始める。


「いてえぞ」

「……」


 それでも攻撃をやめない。

 カエンは反撃をせず、それでも攻撃を受け止め続ける。

 そしてまた、腕に傷を受ける。


「ナツキ。ここでくたばっていいのかよ。取り込まれていいのかよ。お前の考えがあって、俺の目的とも近かったから、ここまで来たんだぞ」

「……」


 このままでは、カエンが攻撃を食らい続けて死んでしまうと思った健次は、カエンに声をかける。


「カエン!!」

「健次。コンディションを頼む。俺の声じゃ届かねえみたいだ。多分」

「分かった」

「いいと思います。影落ちってそもそもなんなのか分かりませんし。使ってください」


 クローバーとカエンの言葉に、健次は頷く。

 そして自分のゲートを出し、唱えた。


「トライスキル、コンディション!!」


 星影にむけ、コンディションを唱えた。

 その瞬間、いくつもの複雑な歯車が目の前に現れる。


 調整しろ。

 調整しろ。

 星影の、闇を見極めろ。

 暴け。

 調整しろ。


 そして、すべての歯車の調整が完了した瞬間だった。

 とたんに、すべての時間が止まる。

 クローバーも、ゴーレムさえも。

 すべての、時間が自分以外に止まったのだ。

 ただ違うのは、カエンと星影は動いている。


「なんだ、これ」


 調整が完了した瞬間、その瞬間、星影からも黒い靄がはずれる。


「闇だよ、健次君。多分カエンさんにも、健次君にもあった」

「ほ、星影!?」


 星影が、健次君という言葉を使うことに違和感。

 彼女はどうしたのだろうか。


「ちょっと星影さんの体を借りてるんだよ」

「え、ちょ、ちょ、どいうこと!?」

「久しぶりだね。健次君」

「ひょっとして、皐月か?」


 この世界に来て。

 タイセツを奪うという声で、いなくなっていたかと思ったのに。

 なぜ星影から話しているのかはよくわからないが、彼女はたしかにそこにいた。

 篠山皐月。健次の幼馴染で、この世界に一緒に入った一人。


「マジかよ。ナツキが皐月だったってことか?」

「うーん。ちょっと違うかな。正確には私が妹で、ナツキが姉」

「意味が分からねえんだが」

「私しか知らなかったから。忘れさせたもん。わざとね」

「どういうことだよ、皐月?」


 姉がいるなんて知らなかった。

 それに、忘れさせたって、皐月が何かしたのだろうか。


「話は長くなるから、この闇を倒してから。かな。それまでは私がお姉ちゃんを押さえとくからさ」

「わかった」


 星影になった皐月?が言うと、健次は頷く。

 

「……健次、わけわかんねえがやるしかねえみたいだな」

「うん」


 目の前の黒い靄に、カエンと健次は立ち向かう。

 2人はそれぞれゲートを構えた。


「あとは、お姉ちゃんが”マスター”を手に入れるだけかな」


 皐月はそう、呟いた。

 


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