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デルタトライナイト  作者: 水原翔
第三章 星影の巫女編
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第38話 「無力」

 少しうれしかった。健次は2人に誉められてそう思った。

 これまでの戦闘は、カエンと星影なくしては、健次は手も足もでなかったからだ。


「コツ、つかんできたみたいね」

「え、ああうん。みんなをみてきたから」


 見よう見まねではあるが、いろんな人の魔法を見てきて、いくつか戦闘を繰り返して。

 星影の言うように、コツをつかんできたのだろう。


「てかよ、健次ってその武器しかなかったよな」


 一番最初にカエンがくれたダガーをみて、カエンが言う。

 あと、このペンダント。

 思えば、攻撃のサポートはみんなにしてもらっていたから、あまり気にしていなかった。

 フォグル工房で、ハーブ・フォグルはバリアブルストーンがあれば武器が作れるといっていたけれど、まだ見つかっていない。


「……とにかく、ここの脱出が優先です。続いて下さい」


 クローバーの言うとおり、ここはまず脱出することが先だろう。 


「一体、何が起きてるんです?」

「分かりません。ただ、何者かが私たちの行動をよく思っていないようなことは確かみたいですね。またきますよ」


 ためらい無くクローバーはバルカンで敵を次々に倒していく。


「無言だな。まるでゾンビみたいだが」

「生きてはいるみたいですね。偽物の兵士かと思っていましたが、本物のようです」

「……たかが図書館に、どれだけいるのよ」


 星影の言うように、軍人がひっきりなしに押し掛け、攻撃を繰り出している光景を見ると、図書館なのに異常だ。

 それだけ、重要なものが保管されていたのだろうか。

 

「業火……無双撃!!」


 カエンの炎が襲い掛かる兵士たちの行く手を阻む。

 相変わらずカエンは強い。


「ナツキ!! 後ろ!!」


 カエンが叫ぶと、星影の背後に青い全身ローブ姿の集団が現れた。

 周囲が突然暗くなる。

 その異様さは、マギアス・ソサエティの魔術師たちと似ている、狂気。


「あ……」


 ローブの男の一人が、魔法を使い、星影に放った。

 カエンが気づき防ごうとするが、間に合わず。

 

 星影は一瞬にして、意識を失い床に倒れた。

 

 クローバーは、バルカンを、ローブ男に向け集中放火する。

 しかし、見えない壁のようなもので、男はそれを防いだ。

 魔法の、壁なのだろうか。


「ナツキッ!!」

「星影!?」

「このやろう!! 業火……ッ! 無双撃ッ!」


 意識を失った星影の元に襲い掛かる集団。

 カエンは必死の抵抗で刀を振りかざし、彼らを払おうとするが、クローバーと同じく見えない壁で防ぎ、はじき返された。


「嘘だろ。硬てぇな!!」

「……カエン、離れてて、”コンディション”であいつらの盾を暴く」


 エマ・バースのときに仕組みを暴いたコンディションなら、彼らに攻撃を当てられるはず。

 そう思い健次は集中する。

 調整しろ。

 調整しろ。

 敵の魔法を見極めろ。

 自分にしかできない強さを引き出せ。

 全体を見極めろ。

 この盾の仕組みを。


「トライスキル!! コンディション!!」


 健次のトライスキル、コンディションが発動する。

 そして健次は敵の攻撃を防ぐ魔法の正体を見極めた。


「見えたッ! カエン、クローバーさん、お互い挟み撃ちするように攻撃してみて!!」


 2人は頷き、健次の言うように挟み撃ちするように向かい合い、攻撃を繰り出した。


「大ッ……火炎斬ッ!!!!!」


 敵の魔法は、一方からの攻撃を反射する。

 ただ、二方向同時攻撃は防げない弱点があったのだ。

 それを健次は”コンディション”で見極めた。

 攻撃は見事に当たり、ダメージを追った集団は一気に分散する。

 その隙に星影の救出へ向かおうとするが、スピードは敵が上だった。

 2人の男が健次の前に立ちふさがり、炎魔法を繰り出した。

 カエンもクローバーも近寄ろうとするが、倒したはずの兵士たちも押し寄せ、

 20人対3人の状態となった。

 盾の正体がコンディションでつかめたとしても、この状況じゃ、自分の身を守るのに精一杯だ。


「ナツキッ!!」


 星影は抱えられ、フード姿の男たちに連れ去られそうになる。

 追いかけようとする3人だが、足元を鎖で縛られ、一時的に身動きが取れなくなった。


「クソッ、動けねえ」

「弾切れ、みたいですね」


 カエンもクローバーも追い討ちはできなかった。

 健次も、コンディションを使った反動からか、自分のゲートの属性変更ができなくて、魔法が出せなくなっていた。


「ようやく探しましたよ、私たちの巫女」


 1人だけ、フードの色が違った男が、星影を抱えながら現れた。

 男は話し始める。

 カエンはその男を見て、始めた。


「てめえ……」

「おや、おやおやおやおやおやおやおやおやぁああ!? その赤髪は、わが巫女を連れ去った極悪人ではありませんか。 その憎たらしい顔はよく覚えています。あなたを殺す義務がありますが、まずは巫女がこの地へ舞い戻ったことが何よりの喜び。これは実に喜ばしいことでございます。ああ、今日はなんて日なのでしょうか」


 男はカエンをみて話す。

 カエンとこの男は、何か因縁があるのだろうか。


「ステラ・ウンブラ」


クローバーがその言葉を口にした瞬間、笑顔だった男の表情が変わる。


「崇高なる我々の団体名を、意地汚い口で話す出ない、人間もどき」

「っ……」


 冷静沈着に見えたクローバーも、さすがに怒っているのは健次にもわかった。

 クローバーは構えて、思いっきり右ストレートを男に振りかざそうとするが、軽く流される。義手からスチームが噴出す。

 あの一撃、直撃したらものすごく吹っ飛ぶレベルのパンチではなかったろうか。


「その金属もゲートなのでしょう? 汚らしい」

「ナツキを返せ」


 カエンも男に刀を振りかざすが、男は片手で受け止める。


「星影の巫女を返せと? 彼女は元は我々の巫女なのです」

「星影の巫女?」


 初めて聞く言葉。

 星影とカエンに、昔何かあったのだろうか。

 カエンは何か知っている。


 それに、それに……無力だ。

 今の力では、到底太刀打ちできない。

 目の前の男はたぶん、エマ・バースよりも強い。

 コンディションを使ってしまった今、健次には術がない。

 なんて、無力なのだろうか。


「カエン、逃げますよ。太刀打ちできる相手じゃない」

「ちっ、健次!」

「うん!」


 目の前の男は強い。

 カエンも怒りの感情を見せていたようだが、それは理解しているようだ。

 全速力で駆け抜け、距離をとる。

男は妨害をすることもなく、逃げていく3人をただ見ていた。


「ふふ、それでよいのです。これで10年間中止となっていた、星影の儀式を執り行うことができる。ようやく、ようやく!! このときをどれだけ待ち望んでいたことか!!」


 そう、一人で叫び、星影を抱え闇に消えていった。



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