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デルタトライナイト  作者: 水原翔
第三章 星影の巫女編
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第36話 「そして船は」

 地図にない場所。エド・マクワドル学園長とクロウズは、それを口にした瞬間、動揺していた。

 

「地図にない場所って、どう言うことだよ?」


 ミンティが尋ねる。 


「ワシも詳しくは知らん。ただベルフライムにそういう村がある事は聞いたことがある」

「星影、もしかしてだが」

「ええ。カエン。私の目的も一つ、ここで達成できるかも」

「けど確証はねえぜ?」

「そうね。それまでは話せないかも。ごめんなさい、何でもないわ」


 少し気にはなるが、何でもないといった星影に、言及はしないようにした。

 なにか、深い事情があるのかもしれない。

 

「しかし、このメンバーで向かわせて良いと思いますか?ここは飛空挺も飛行禁止区域の筈」

「そうじゃな・・・・・新山健次よ、手がかりはこの”地図のない場所”にあることは明らかじゃが、どうするかの?」


 答えは決まっている。

 どんな危険な場所だって、助けるんだって。


「行きます」

「そうか。・・・・・クローバー、お使いを頼めるかの?」

「ええ。同行ですか」

「そうじゃ。入学前に何かあっては困る。クロウズも準備等でうごけんからの」

「アタイももちろん行くぜ!」

「・・・フォグル。補習があるのを忘れているのか?」

「あ・・・・・くそぅ」

「ミンティ補習があるの?」

「ああ。条件付き合格だったからよ」

「道理で脳味噌が筋肉で出来ている貴女が、スカイベル学園に合格できたわけね」

「んだようるせえな金髪」


 いつもの口げんかが始まったかと思えば、


「ま、貴女にはもう迷惑はかけたくないし」


 と、星影は小声でつぶやいた。

 健次には分かったが、ミンティニハ聞こえなかったようだ。


「あん? なんか言ったかよ?」

「別に。うるさいのが一人減ってせいせいしているって言ったのよ」

「んだと金髪クソ眼鏡」

「素直じゃないなぁ」


 でも、口にでるだけ心配しているのかもしれない。


「健次。俺とナツキはもちろんいくぜ。スカイベル学園に入るために協力してくれたんだしな」


 カエンと星影は頷き、皐月の行方を探すのを協力してくれることに。


「学園長。私が同行するのはかまいませんが、飛行禁止区域となると、この場所へはどの手段が適切でしょうか」

「ナハトから途中まで飛空挺で行き、近くのザクセン商業特区から徒歩で向かうのが適切じゃろうな。操縦も頼めるかの」

「わかりました」

「いいんですか? クローバーさんまで」

「ええ。私も興味がありますし」

「クローバーの強さはお墨付きじゃ。ワシの護衛もしてもらってるからの」

「ありがとうございます」


 こうして、健次たちは、皐月の行方を探すべく、地図にない場所へ向かうことに。

 ただ期限もあり、1週間以内に学園に戻ってくる。あまり猶予はない。

 いったん解散し、部屋に戻ることに。

 もう日も傾いてきているため、明日の早朝、日空挺でザクセン商業地区へ向かうことにした。


 翌朝。食堂で朝食を済ませ、ミンティと別れ、クローバーとの合流地点、ウインドベル・ローレライの軍事区へ。飛空挺のドックがあり、軍事用の飛空挺や学園用の飛空挺がかなりの数配備してある。

 学園長の許可もあり、学園が保有する飛空挺を借りて、地図にない場所へ向かうことに。


「集まりましたね。早速出発しましょうか」

「よろしくお願いします」


 クローバーは昨日のメイド服とは違う、短めのフリルスカートにフリルのブラウスをつけていた。メイド服っぽいのは彼女のポリシーなのだろうか。

 カエンと星影、健次は着席し、クローバーは操縦桿を握って、飛空挺のエンジンを起動した。


 カタパルトデッキというのだろうか。飛空挺は駐機場からホバリングした後に、中央の滑走路に一端着陸する。

 そして、何かが連結したような音がした。


「カタパルト、セット完了。スカイベル002離陸します」


 その瞬間、ものすごい加速を初め、外に出た。

 たとえるなら、そう、ジェットコースターが降りるような感覚。


「うおおお!?すげえな」

「この飛空挺は本来カタパルトなんて不要なのですが」


 まあ、ホバリングするくらいだし、ヘリコプターみたいなものなのだろうか。

 だから別に、離陸は自分でできるのだろう。 


「じゃあなんで」

「私の趣味です」

「あ、はい」

 

 変わった人だなあと思う健次だった。それに、カタパルトを趣味で使わせてもらえるなんて、なんかそれもそれですごい気がする。

 

「まあ趣味半分、テスト半分ってところでしょうか。見ての通り、軍事用の飛空挺のスクランブル発進に備えた機構で、点検のためテストしたのです」

「なるほど」

「そういえば、ずっと気になっていたのですが、フォトン先輩の腕って」

「ええ。義手ね。あと、クローバーでいいですよ」

「義手・・・・・」

 

 クローバーは右腕の手袋を外すと、緻密似作られた金属製の腕が見えた。


「珍しいでしょうか。バルカンになる義手です」

「は?」

「こんな感じにね」


 クローバーが右腕を降る動作をした瞬間、右腕は変形し初め、丸く6つ穴のあいたバルカン似変形した。


「便利でしょう?」


 あのときの金属音はそれか、と健次は思った。

 銃口を健次に向けられているので、めちゃくちゃ怖かった。


「大丈夫、撃たないので♪」

「は、はい・・・・・」


 腕を普通の腕に戻し、クローバーは再び操縦桿を握り始めた。


「これもフォグル工房製です。特注で作って頂いたのですよ。すごいですよねゲートって」

「確かに」

「敵にしない方がよさそうだな健次」

「うん、そうだねカエン」

「賢明ね」


 聞こえないように話していたのに、聞こえていたようだ。気をつけなければ。


「ザクセン商業地区へはあと2時間くらいでしょうか。」

「けっこうかかりますね」

「そうですね。ザクセン商業地区は、帝国の国境付近にありますから、中心部に近いナハトからは、少々離れたところにある事になりますね」

「なるほど」


 それにしても、やはり星影の元気がない気がする。


「星影?」

「え、ええ。何かしら」

「すこし元気がない気がしてさ。大丈夫?」

「ええ。大丈夫よ。皐月って子、見つかると良いわね。けれど・・・・・ようやく納得したわ」

「何が?」

「貴方が私に向けていた視線よ。少し気になっていたのよ。皐月って子に似ているって事」

「そなのか」

「ええ。言っておくけれど、私の記憶の限りでは、皐月って知り合いはいないし、家族にもいないから」

「う、うん。だからずっと言わなかったんだよ。皐月にうり二つの姉妹とか親戚とかいるって話なんて、聞いたこと無かったから」

「そ」


 気にしていたのだろうか。先ほどの話を。

 まあ、他人のようにみていたという話も、なんだか気味が悪いかもしれない。


「まあでも、正直に言ってくれて助かったわ」

「うん。最初にあったときに気づいてたのかと」

「あのときは寝ぼけていると思っていたのよ。

本当に似ているなんてことは今まで知らなかったわ」

「そうだったのか」

「で、その皐月って子はどんな子なの?貴方の彼女?」

「優しい子だよ。彼女ではないけど」


 何でそんなことを聞くのだろうかと健次は思った。 


「そ」

「・・・・・この世界にくるきっかけを、与えてくれた子なんだ」

「じゃあ、私は皐月に感謝しなきゃね」

「え?」

「多分、その子がいなかったら、私はこうしてスカイベル学園に入れなかったと思うし」

「僕のおかげじゃなくて?」

「それは買いかぶりよ」

「えー」

「けど変な感じね。改めて、ダゼンスの人間ってことで結構気構えてたけど、私たちと変わらない人間で、こうしてちゃんと話し出来るわけだし」

「そういう考えもあるか」 

「ええ。貴方だってそうじゃない? こうしてくる前は不安だったんじゃないの?」

「そうだね・・・・・。皐月が後押ししてくれたからかな」

「ね、ずっと気になっていたのだけれど、貴方は無理矢理この世界に引き吊り込まれたわけじゃないわよね」

「うん」

「皐月って子が見つかったとして、貴方は元の世界に帰るの?」

「皐月が許せばだけど、僕の父さんの手がかりを探したい」

「あなたの父上?」

「うん。このペンダントを送ってくれた人なんだ。ラボンスにいるかどうかはわからなくて、手がかりもないけどさ」


 皐月に夢中になって、探すことを後回しにしていた。

 緊急事態で、気が動転していたのかもな。と、健次は思った。

 学園に戻ったら、改めて学園長に親父の行方でも尋ねてみようか。


「そう、見つかると良いわね・・・・・」


 星影を元気づけようとしたが、自然と話が逸らされて、自分の話をしてしまったな、と思う健次だった。

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