第36話 「そして船は」
地図にない場所。エド・マクワドル学園長とクロウズは、それを口にした瞬間、動揺していた。
「地図にない場所って、どう言うことだよ?」
ミンティが尋ねる。
「ワシも詳しくは知らん。ただベルフライムにそういう村がある事は聞いたことがある」
「星影、もしかしてだが」
「ええ。カエン。私の目的も一つ、ここで達成できるかも」
「けど確証はねえぜ?」
「そうね。それまでは話せないかも。ごめんなさい、何でもないわ」
少し気にはなるが、何でもないといった星影に、言及はしないようにした。
なにか、深い事情があるのかもしれない。
「しかし、このメンバーで向かわせて良いと思いますか?ここは飛空挺も飛行禁止区域の筈」
「そうじゃな・・・・・新山健次よ、手がかりはこの”地図のない場所”にあることは明らかじゃが、どうするかの?」
答えは決まっている。
どんな危険な場所だって、助けるんだって。
「行きます」
「そうか。・・・・・クローバー、お使いを頼めるかの?」
「ええ。同行ですか」
「そうじゃ。入学前に何かあっては困る。クロウズも準備等でうごけんからの」
「アタイももちろん行くぜ!」
「・・・フォグル。補習があるのを忘れているのか?」
「あ・・・・・くそぅ」
「ミンティ補習があるの?」
「ああ。条件付き合格だったからよ」
「道理で脳味噌が筋肉で出来ている貴女が、スカイベル学園に合格できたわけね」
「んだようるせえな金髪」
いつもの口げんかが始まったかと思えば、
「ま、貴女にはもう迷惑はかけたくないし」
と、星影は小声でつぶやいた。
健次には分かったが、ミンティニハ聞こえなかったようだ。
「あん? なんか言ったかよ?」
「別に。うるさいのが一人減ってせいせいしているって言ったのよ」
「んだと金髪クソ眼鏡」
「素直じゃないなぁ」
でも、口にでるだけ心配しているのかもしれない。
「健次。俺とナツキはもちろんいくぜ。スカイベル学園に入るために協力してくれたんだしな」
カエンと星影は頷き、皐月の行方を探すのを協力してくれることに。
「学園長。私が同行するのはかまいませんが、飛行禁止区域となると、この場所へはどの手段が適切でしょうか」
「ナハトから途中まで飛空挺で行き、近くのザクセン商業特区から徒歩で向かうのが適切じゃろうな。操縦も頼めるかの」
「わかりました」
「いいんですか? クローバーさんまで」
「ええ。私も興味がありますし」
「クローバーの強さはお墨付きじゃ。ワシの護衛もしてもらってるからの」
「ありがとうございます」
こうして、健次たちは、皐月の行方を探すべく、地図にない場所へ向かうことに。
ただ期限もあり、1週間以内に学園に戻ってくる。あまり猶予はない。
いったん解散し、部屋に戻ることに。
もう日も傾いてきているため、明日の早朝、日空挺でザクセン商業地区へ向かうことにした。
翌朝。食堂で朝食を済ませ、ミンティと別れ、クローバーとの合流地点、ウインドベル・ローレライの軍事区へ。飛空挺のドックがあり、軍事用の飛空挺や学園用の飛空挺がかなりの数配備してある。
学園長の許可もあり、学園が保有する飛空挺を借りて、地図にない場所へ向かうことに。
「集まりましたね。早速出発しましょうか」
「よろしくお願いします」
クローバーは昨日のメイド服とは違う、短めのフリルスカートにフリルのブラウスをつけていた。メイド服っぽいのは彼女のポリシーなのだろうか。
カエンと星影、健次は着席し、クローバーは操縦桿を握って、飛空挺のエンジンを起動した。
カタパルトデッキというのだろうか。飛空挺は駐機場からホバリングした後に、中央の滑走路に一端着陸する。
そして、何かが連結したような音がした。
「カタパルト、セット完了。スカイベル002離陸します」
その瞬間、ものすごい加速を初め、外に出た。
たとえるなら、そう、ジェットコースターが降りるような感覚。
「うおおお!?すげえな」
「この飛空挺は本来カタパルトなんて不要なのですが」
まあ、ホバリングするくらいだし、ヘリコプターみたいなものなのだろうか。
だから別に、離陸は自分でできるのだろう。
「じゃあなんで」
「私の趣味です」
「あ、はい」
変わった人だなあと思う健次だった。それに、カタパルトを趣味で使わせてもらえるなんて、なんかそれもそれですごい気がする。
「まあ趣味半分、テスト半分ってところでしょうか。見ての通り、軍事用の飛空挺のスクランブル発進に備えた機構で、点検のためテストしたのです」
「なるほど」
「そういえば、ずっと気になっていたのですが、フォトン先輩の腕って」
「ええ。義手ね。あと、クローバーでいいですよ」
「義手・・・・・」
クローバーは右腕の手袋を外すと、緻密似作られた金属製の腕が見えた。
「珍しいでしょうか。バルカンになる義手です」
「は?」
「こんな感じにね」
クローバーが右腕を降る動作をした瞬間、右腕は変形し初め、丸く6つ穴のあいたバルカン似変形した。
「便利でしょう?」
あのときの金属音はそれか、と健次は思った。
銃口を健次に向けられているので、めちゃくちゃ怖かった。
「大丈夫、撃たないので♪」
「は、はい・・・・・」
腕を普通の腕に戻し、クローバーは再び操縦桿を握り始めた。
「これもフォグル工房製です。特注で作って頂いたのですよ。すごいですよねゲートって」
「確かに」
「敵にしない方がよさそうだな健次」
「うん、そうだねカエン」
「賢明ね」
聞こえないように話していたのに、聞こえていたようだ。気をつけなければ。
「ザクセン商業地区へはあと2時間くらいでしょうか。」
「けっこうかかりますね」
「そうですね。ザクセン商業地区は、帝国の国境付近にありますから、中心部に近いナハトからは、少々離れたところにある事になりますね」
「なるほど」
それにしても、やはり星影の元気がない気がする。
「星影?」
「え、ええ。何かしら」
「すこし元気がない気がしてさ。大丈夫?」
「ええ。大丈夫よ。皐月って子、見つかると良いわね。けれど・・・・・ようやく納得したわ」
「何が?」
「貴方が私に向けていた視線よ。少し気になっていたのよ。皐月って子に似ているって事」
「そなのか」
「ええ。言っておくけれど、私の記憶の限りでは、皐月って知り合いはいないし、家族にもいないから」
「う、うん。だからずっと言わなかったんだよ。皐月にうり二つの姉妹とか親戚とかいるって話なんて、聞いたこと無かったから」
「そ」
気にしていたのだろうか。先ほどの話を。
まあ、他人のようにみていたという話も、なんだか気味が悪いかもしれない。
「まあでも、正直に言ってくれて助かったわ」
「うん。最初にあったときに気づいてたのかと」
「あのときは寝ぼけていると思っていたのよ。
本当に似ているなんてことは今まで知らなかったわ」
「そうだったのか」
「で、その皐月って子はどんな子なの?貴方の彼女?」
「優しい子だよ。彼女ではないけど」
何でそんなことを聞くのだろうかと健次は思った。
「そ」
「・・・・・この世界にくるきっかけを、与えてくれた子なんだ」
「じゃあ、私は皐月に感謝しなきゃね」
「え?」
「多分、その子がいなかったら、私はこうしてスカイベル学園に入れなかったと思うし」
「僕のおかげじゃなくて?」
「それは買いかぶりよ」
「えー」
「けど変な感じね。改めて、ダゼンスの人間ってことで結構気構えてたけど、私たちと変わらない人間で、こうしてちゃんと話し出来るわけだし」
「そういう考えもあるか」
「ええ。貴方だってそうじゃない? こうしてくる前は不安だったんじゃないの?」
「そうだね・・・・・。皐月が後押ししてくれたからかな」
「ね、ずっと気になっていたのだけれど、貴方は無理矢理この世界に引き吊り込まれたわけじゃないわよね」
「うん」
「皐月って子が見つかったとして、貴方は元の世界に帰るの?」
「皐月が許せばだけど、僕の父さんの手がかりを探したい」
「あなたの父上?」
「うん。このペンダントを送ってくれた人なんだ。ラボンスにいるかどうかはわからなくて、手がかりもないけどさ」
皐月に夢中になって、探すことを後回しにしていた。
緊急事態で、気が動転していたのかもな。と、健次は思った。
学園に戻ったら、改めて学園長に親父の行方でも尋ねてみようか。
「そう、見つかると良いわね・・・・・」
星影を元気づけようとしたが、自然と話が逸らされて、自分の話をしてしまったな、と思う健次だった。




