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デルタトライナイト  作者: 水原翔
第三章 星影の巫女編
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第34話 「レリュール公国」

「第2の事件、こちらについてはすべて解決した訳ではないのじゃが、マギアス・ソサエティの話も含め、伝えておきたい点が3つある」


 学園長が三本指をたてて説明し始める。 


「1点目はまず、マギアス・ソサエティとブラッド家の関わり」

「2点目は、ケルタ鉱石について」

「3点目は、レリュール公国と今回の事件の関係について」


 エド・マクワドルはコーヒーにものすごい量のミルクを入れている。コーヒーミルクどころかミルクコーヒーだろうか。

 砂糖も5個くらい入れている。コーヒーではない別の何かになってしまっている。たまに自販機で見かけるような、ロング缶のめちゃくちゃ甘いコーヒー。けど、あれ皐月が好きだったなと健次は思い出す。


「マギアス・ソサエティは、ゲートを使用する魔法を良しとしない魔法原理主義者の組織名じゃな。ゲート反対派とも呼ばれておる」

「この組織は国境を持たず、各国の廃村となった村を拠点に、表面下で活動を続けておった。各国政府も警戒を続けておるが、この組織自体が目立った行動を起こすことは無かった」


 ケンジは話を聞きながら、少し星影がはっとした顔をしている事に気がついた。カエンも気づいたらしく、目でケンジに合図をする。あまりふれない方よさそうだ。


「先ほども伝えたとおり、金次第でブラッド家は殺人似関わるあらゆる依頼を引き受け、遂行する」

「マギアス・ソサエティとして目立ってはいないんじゃが、各国のゲートに関わる場所に、ブラッド家が今回のような事件を起こす例をいくつも聞いていてな。その背後にある組織が、マギアス・ソサエティであることは、ベルフライムの諜報機関の調査により分かっておる」

「その、マギアス・ソサエティが今回ブラッド家を使わずに、目立つようにフォグル工房を襲った訳って」

 

 ケンジが聞くと、エドは頷きつつ、話を進める。


「そうじゃな。それには2点目の、ケルタ鉱石について話しておく必要があるじゃろう」

 

 そう言ってエドは、机の中から石を取り出した。クエストの時にもみたが、何の変哲もない石に見える。


「ケルタ鉱石は、その名の通りケルタ村で採掘できる鉱石なのじゃが、ゲート工房でも使われるように、ラボンスコアによる魔法抽出率が現時点で一番高い鉱石での。世界標準のゲート用鉱石として使われておる」

「今回、俺たちがはめられたやつか」

「ええ……」

「だから気にするなよナツキ。誰にも分からねえだろ」

 

 星影はまだ、自分がマギアスの手助けをしてしまった事実に後悔しているようだ。


「そもそも今回の事件じゃが、発端はミンティ・フォグルが入っていた組織と大きく関わりがあるんじゃよ」

「アタイの盗賊団か?」


 そうだ。星影が持ってきたクエストは、盗賊団から取られたケルタ鉱石を、取り返してほしいという依頼だった筈だ。


「盗賊団……ではないのう」

「どういうことだよ!?」

「3点目の話に入るが、レリュール公国と今回の事件は深く関わりがあってのう。ミンティ・フォグルが所属していた組織は、盗賊団を名乗ってはいたが、実態はレリュール公国特捜部、情報課の特殊編成部隊だってことに」

「え?」


 ミンティからは聞いていたから、健次とミンティはあまり動揺しなかったが、

 カエンと星影は、驚いていた。


「盗賊団が……レリュール公国の政府機関」

「飛空艇がレリュール公国登録に疑問は持たなかったのかの?」

「税を安くするために登録しているのかと」

「確かに、税を安くするために、レリュール登録の船は多いことは確かなのじゃが。あの飛空艇はレリュール軍に運用されているタイプなのは、お主らにも分からんかったかの?」

「嘘でしょ……」

「まあさすがにレリュールの国自体が今回の事件に関わっていることなんて見当もつかなかったか」


 めちゃくちゃ甘いコーヒーを顔色一つ変えず飲み始める学園長。

 ケンジは先ほどの砂糖の量を考えると少し寒気がした。


「レリュール公国。ヘクセル・アルバートが治めるかの国は、国土面積も狭く、食料や製造など、輸入に頼っている国じゃ。しかしあの国が優れているのは、4か国の中でも情報収集能力に優れた点じゃの。その特捜部はある事件を追っておった。輸入しているケルタ鉱石がある日、とある集団にルートを絶たれ、盗まれる事件が起きたんじゃ」

「連中は事件を追ううちに、ベルフライム王国の中である組織が目立つように行動しているのをつかんだ。しかし自国の事件を自国だけで解決したい連中は、王国軍に自分たちの事情をばらしたくないため、”盗賊団”として活動しておったんじゃの」

「……じゃあアタイの仲間たちがやってたのは」

「レリュール公国に運ばれるはずだったケルタ鉱石を、取り戻したってところじゃろうな。盗賊と見せかけて」


 ミンティは動揺する。レリュール公国の部隊とは知っていたが、自分たちがやっていたことの本当の意味までは知らなかった。

 ベルフライム王国にばれないよう、活動していたらしい。

 しかし彼らは、ゾンゾ=ザス・ブラッドによってゾンビにされ、それをカエンが全員倒してしまった。だから、誰一人として生き残ってはいない。


「しかし学園長はなぜそれを」

「ベルフライム王国軍から聞いたのじゃ。軍はゾンゾ=ザス・ブラッドによってゾンビ化された遺体の身元調査で、全員レリュール人だということが判明してのう。元々レリュールの部隊がベルフライムでこのような動きをしていたのも、つかんでおったからの。ベルフライムはレリュールにそのことについて尋ねるも、未だに回答はないそうじゃが……」

「じゃあ、ゾンゾ=ザス・ブラッドが現れたのは」

「おそらくレリュールの動きを見て邪魔だと思ったマギアス・ソサエティが、差し向けた可能性が高い。そうベルフライム王国軍は睨んでおる。目立つように行動し始めたのは、レリュール公国にすぐ情報がいくためじゃろうな」

「……マジかよ」

 

 カエンも動揺していた。

 ゾンゾ=ザス・ブラッドは、カエンに因縁がある敵だったはずだ。


「けれど学園長、そんな情報って本来国家機密じゃありません?なぜ私たちに」

「正直、マギアス・ソサエティが本格的に動きだしたことは、世界全体に悪影響が出かねん。彼らの大きな目的は、世界中のゲートの破壊。特に今回のレリュール部隊壊滅と、ベルフライムのフォグル工房襲撃事件だけとっても、大事件じゃからな。事件の解決には王国軍などの我々大人が動く予定じゃが、君たちにも情報として知っておくべきじゃろうと思うて、呼んだわけじゃ」


 こうして、エド・マクワドル学園長から、今回の事件の事情を聞くことができた。






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