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デルタトライナイト  作者: 水原翔
第二章 フォグル工房編
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第27話 「探索、そして真相」

「ついたぞ……」


 船を降りた後、クロウズの先導で、ステラド遺跡にたどり着いた一行。

 健次は、その遺跡の大きさに、ただただ驚いていた。

 よく、東京ドーム何個分とかいう表現を使うのを聞くけれど、そもそも東京ドームがどれぐらいの大きさなのか健次は知らないので、それに例えることは出来ない。

 例えるなら、エジプトのピラミッド。

 大きさとしては、それぐらい、巨大なものだった。

 石で作られた遺跡には、人が入れるほどの大きさの扉に、フードをかぶった集団が出入りしていた。


「でかい……」

3大戦士デルタトライナイトにまつわる遺跡だからな。前のヘレビス遺跡とは違い、ここはそうであることが分かっている」

「けどよ、そんな場所、奴らの本拠地にしちゃってて良いのか?」


 カエンがクロウズに尋ねる。


「よくはないな。たしかここは、ベルフライム政府が管理していたはず。しかし様子がおかしいな」

「掲げてあるあの」

「っ……」


 星影は、頭を押さえ、気分が悪そうに、うずくまっていた。

 その様子に気付いたカエンは、星影に声をかける。

 

「ん? どうしたナツキ?」

「なんでもないわ、ただちょっと、昔のことを思い出してしまって」

「あれか……」

「あれって?」


 健次が尋ねるが、星影とカエンは答えずに。


「健次は気にしなくていい。まあ、ちょっとしたことだ」

「いや、でも星影、体調悪そうだし」

「大丈夫よ……問題ないわ」


 星影とカエンは、何か言えない事情を隠しているのだろうか。それはひょっとして、ブラッド家のことだろうか。


「ブラッド家?」

「いいや、そうじゃねえ。まあ、今は話す話じゃねえな。時が来たら……だ。どうするナツキ、外で待機しとくか?」

「問題ないわ」


 星影は、立ち直してカエンのほうを真っ直ぐ見る。

 健次は、気になるけれどこれ以上詮索しないでおいた。

 そういえば、カエンはブラッド家と因縁があるのは分かってたけど、健次自身、星影のことは何も知らない。

 ただ、知識が多くて。

 ただ、ちょっと高飛車で。

 ただ、ちょっと皐月に似ていて。

 今まで、そのことについて何も触れていなかったけど、やっぱり気になる。

 けど、今はそんな暇はないし、話してはくれないだろう。

 何か、星影とカエンに深く関わる事情が、この遺跡にあるのだろうか。


「さっさと行こうぜ。アタイも準備はできてる」


 ミンティは、今か今かと準備していた。

 愛用の、銃型のゲートを構えて。


「せやな。ただ、あの魔法連中、何も考えてへんようで考えとる。揚げ足とられんように気をつけんと、やられるで」

「そうだな……。取り敢えず、私を先頭に、君たち3人はついてくるといい」

「アタイは後ろから迎撃する」

「ワイは後方担当やな」

「「「はい!!」」」


 こうして、それぞれの立ち位置が定まった。クロウズ監督官の先導のもと、カエン、星影、健次がそれについてきて、ミンティが後ろから迎撃。そして後方の敵を、レロッサが仕留めるという、布陣だ。


「あくまでも目的は“ハーブ・フォグル”の救出。不要な戦闘はなるべく避けるように」

「了解しました」

「……皆さんに、強化魔法をつけます。月の加護モード!!」


 健次は頷き、クロウズが駆けていくところについていく。

 星影は、月の加護、モードで全員の攻撃力を上げる。


「まずは、門番からやな!!」

「ああ、行くぞ!!」


 奇襲をかけるように、クロウズが先陣を切る。

 遺跡の扉付近で待機していた警備担当のフードたちを、目にも留まらぬ速さで、クロウズは斬りつける。

 背中に背負う大剣を、軽々しく振り回し、軽快なステップで敵に斬りかかる。

 まさに、獲物を狩る虎のような、そんな姿。

 その速さに、魔法を発動させることもなく、一瞬で終わり、星影はかなり驚いていた。


「行くぞ!!」

「早い……」

「やっぱつええな……軍人って」


 門をくぐり、中に入ると、一気に明かりがつき始める。

 恐らく、魔法の灯籠なのだろう。クロウズが入った瞬間に、一直線に灯り始めた。

 そして、侵入を感知したのか、再び次の集団が襲い掛かってくる。

 その奇襲勢をミンティはいち早く気づいて、魔法を避けつつ、トリガーを引いた。


「喰らえ!!」


 しかし、クロウズのように一撃必殺とはならず、空中で回転して魔術師たちは避け、呪文を唱え始めた。そして、雷魔法を発動させる。

 呪文を唱える声は小声で、何を言っているのかは健次には理解できなかった。

 その魔術師の放つ電気は、ミンティめがけて一直線に飛ばされる。

 まさに、雷に打たれたかのように。


「うああっ!!」

「ミンティ!!」

「くっ。セイヤッ!!」


 クロウズが雷魔法を放った魔術師を背後から斬りつける。いつの間に後ろに回ったんだ。

 ミンティはその雷魔法でやられたようで、銃を手放し、地面に倒れ込む……が。


「クソッタレ!!」


 ミンティはそう叫んで、立ち上がる。クロウズ監督官は軽々しく倒してるとはいえ、相手はかなり強いと、健次は思っていた。

 雷で打たれた人間が、すぐに立ち上がれるのだろうか。

 いや、そんなことはどうでもいい。

 彼女は、助けたいんだ。

 喧嘩別れして、3年間も会っていなかったけど、ミンティにとって、ハーブ・フォグルは確かに家族なんだ。

 だから、焦りもするし、こうして諦めずに立っている。

 だったら僕も、負けてられるか!!

 そんな思いで、健次は虹色のゲートを掲げ、襲いかかる敵に攻撃を繰り出そうとする。


「雷には、土!!」


 健次の虹色のゲートが、茶色に変わり、多数の小石が地面から浮き上がり、敵の魔術師集団に解き放つ。


「サンド・スティール!!」


 しかし、属性を変えど、健次の攻撃は彼らのフードに傷をつける程度だった。

 彼らがひょうと手をだすと、手の周りに魔法陣が浮き上がり、炎魔法で健次の土魔法を防ぐ。

 炎で土が燃えるのかよ!?と健次は驚いてしまったが、これは魔力の差なのかもしれない。


「やっぱり、まだダメか……」

「火炎斬ッ!!」


火炎は、迫り来る敵をクロウズに負けじと倒し続ける。火災の時といい、病み上がりなのにもかかわらず、かなりの動きだ。

 そんな様子を、健次はただ、見ているしかなかったのが、くやしい。

 何か、火炎たちに手伝えることはないだろうか。


月の恵モーゼン。これで大丈夫よ」


 星影は、傷ついたミンティを、回復魔法で癒やす。

 ミンティはそれでありがとよと呟き、再び攻撃を続ける。


 健次が気づくと、戦闘は終了していた。


「急ぐぞ!!」


 クロウズが叫び、みんなは頷いて奥の方へ進んでいく。


「……見てみたけど、やっぱりヘレビス遺跡と似てるわね。歩いてる最中にみた壁画とか、恐らく同じ時期のもののようね」

「みてえだな。それより星影、大丈夫か?」

「え、ええ。まあ、なんとかね」


 カエンが心配するのも無理はない。星影は遺跡の文様を見るたびに、顔が青ざめ、息が少し上がっているようにも見える。

 戦闘で疲れているのか、とも感じたが、そうではない。明らかに、いつもの星影とは違う、何かがあった。

 カエンはそうやって、星影をところどころ心配していたが、大丈夫の一点張りで、すこし無理しているようにも見えた。

 一体、何があったのだろうか。

 そんなことを考えていても、他のメンバーは魔術師との戦闘を継続していた。

 次の集団が再び、襲い掛かってくる。


「キリがないな……レロッサ、すこし大きめな魔法、打てるか?」

「余裕やで」

「分かった。敵を誘導するから、そこに打ち込んでくれ」

「はいよ!!」


 クロウズの誘いに、レロッサは了承して、クロウズは敵の魔術師たちを誘い込み、中央に寄せる。


「今だ!」

「おっけーい! 喰らえ、大洪水グレート・フルード!!」


 火災の時よりも大きめの、物凄い量の水が、魔術師たちを襲う。

 2人の攻撃で隙が出来たようで、クロウズはそのまま進むぞ!!と叫んで奥へと進んだ。


 こうしてたどり着いた場所は、かなり広めの空間だった。

 これまで狭い通路で戦ってきたせいもあってか、余計に広く感じる。

 そこの目の前に、ハーブ・フォグルは拘束され、周囲を松明で照らされていた。

 他に、人の気配がない。



「着いたようだな。」

「爺ちゃん!!!!」


 その姿を見て、ミンティは一目散にハーブの元へ走っていこうとする。

 が、しかし、クロウズが叫んで止める。


「待て!!」


 その声でミンティは立ち止まり、クロウズのほうを向いた、次の瞬間だった。

 上の方から、巨大物体が落下し、ミンティの目の前に崩れ落ちるように着地する。


「うわあぁっ!?なんだこれ!?」

「……おい、あれって」


 カエンが、その姿を見て呟く。

 ミンティの、健次たちの目の前に現れたのは、ヘレビス遺跡の時に見た、巨大甲冑、そのものと、かなり似た、巨大な人形だった。

 そして、直立不動のまま、赤い目がこちらを睨んでいた。


「間違いないわ。ヘレビス遺跡の時のものよ」

「……つまり、これも3大戦士デルタトライナイトの試練、というわけか?」


 そう、クロウズが言った瞬間。


「ちょっと、違いますねえ」


 第一声で、その声の主が分かった。

 ハーブをさらい、この火災事件を起こした、張本人、マギアスの青年、その人が、文様があるフードを来て、こちらの方に現れた。


「貴様は!?」

「……初めてお目にかかります。“壊滅のクロウズ”さん。マギアス……いえ、マギウス・ソサエティの、プラクティカス。エマ・バースと申します。以後お見知りおきを」

「やはり、あんたはんらやの仕業というわけやったか」


 レロッサが尋ねる。


「仕業? 何か私達が悪いことでも?」

「しらばっくれるんじゃねえ!! 爺ちゃんを誘拐して、工場燃やしやがって!!」

「あら、貴女は……なるほど。なるほど!! なるほぉおおおおおおおおおおおど!!!いやあ、実に滑稽。はははははは!!!」


 ミンティの問いに、エマと名乗る青年は気味の悪い笑い方をした。

 あまり、話したくない人種だと、健次は一瞬で思った。


「何がおかしい!?」

「いやあ。おかしいのはあなた達ですよ。オリジナルの魔法がどれだけすばらしいか、それをちゃんと理解していない。ましてや“ゲート”なんぞという、気味の悪い装置ばかりに頼って。そんな世の中が、おかしい!! おかしい!!実ぅうううううううううううに、おかしい!!」

「まず、聞かせて。貴方がそちらの、ハーブ・フォグルを誘拐して、工場に放火した事件の、首謀者ね?」


 星影は、冷静に尋ねる。


「ええ。あんなもの必要ありませんし。この男もただちに殺したいですが、いかんせん取引がありますしねえ」

「んにゃあろおおお!!!」


 ミンティがエマに向けトリガーを引くが、巨大甲冑の守りですぐに弾かれる。


「……クロウズ監督官、間違いないようです」

「分かった。我々は、貴様を放火、及び誘拐の現行犯で拘束させて頂く」

「へえ……そうやってあなた達は、私達をいつまでも、縛る。縛る。しばああああああああああああああああああありつける!!」


 クロウズの問いに、叫び返すエマ。

 喋れば喋るほど、気味が悪い。


「おい!! てめえ!!はやく爺ちゃんを開放しろ!!」

「開放? 忌々しいフォグルの一族を、開放? 嫌です無理です遠慮します。せっかくオリーブもクレソンも消せたのに、おまけにレリュールの忌々しい虫どももブラッドに頼んで消してもらったのに、開放だなんて、そんな馬鹿な真似、できるわけ無いでしょう!!」

「……まさか、お前が父さんと母さん……それに盗賊団のみんなを、殺したのか?」

「ああ、口が滑ってしまいました。失敬失敬。どうせあなた達は、ここで消える運命ですからまあいいでしょう」

「ミンティ……」

「てめえ!!よくも!!」

「ふふふふふふふ、その怒りにかられる感情、実にいい。いい!!私が貴女を殺さず、周りからどんどん殺していったのは、貴女にそんな才能があったからだと思ったんですよ。真の魔法の探求のためならば、いかなる手段を使ってでも、貴女を手に入れたかった!!」


 エマ・バースが語る、真相に怒り狂うミンティ。

 無理もない。彼女の人生を狂わせたのは、他でもない、彼なのだから。

 彼の、魔法の探求という、くだらない理由のために。

 ミンティは、その瞬間、亡くなった自分の両親の、オリーブ・フォグル、クレソン・フォグルの顔を思いうかべた。

 仕事が忙しくて、相手にしてもらえなかった。

 けど、本当は、もっと話がしたかった。

 その機会を、その生命を、かけがいのないものを全て、この、エマ・バースは奪ったのだ。

 

「だから貴女を、今の感情のまま、いただきますよ?」

「なんだと!?」


 その一言で、健次は一瞬で察した。彼女が、ミンティが危ないと!!


「まずい!! ミンティ!!」


 気づけば、全速力で走り出していた。

 ――ヒーローに、なれやしない。

 ずっと、そんなことばかり考えていた。

 小学生の頃は、あんなに思っていたのに。

 ヒーローになりたいと、思っていたのに。

 何故、そんなふうに思ったのか。

 それは、他でもない。親父だ。

 世界中に飛び回り、世界中の困っている人々を助ける。

 親父は、常に、そう言っていた。

 探検家だったのに、なんだか医者みたいなことを言ってて、今思うと笑ってしまうが。

 そんな親父がかっこよかったのだ。

 だから、ヒーローに憧れた。

 だけどそんな親父も、行方不明になって。

 いつしか、そんなものになれやしないなんて、嘆いてしまったんだ。


 けど、本当にそれだけの理由か?

 本当に、ヒーローになりたいと、思った理由はなんだ?

 新山健次は考える。

 自分にとってのヒーローを。

 ミンティが、今怒り狂って涙を流している。

 そんなミンティのもとに、巨大甲冑がミンティを掴もうとしている。

 助けなくちゃ!!

 ――ヒーロなんて、なれやしない……じゃない。

 諦めていたんだ。進むことを。

 諦めていたんだ。自分の夢を。

 必死に戦うカエンたちを見て。気づいたんだ。

 悲しい顔なんて、見たくない。

 みんな、笑っていたい。

 だから、僕は……


 ヒーローに、なりたい!!

 

 健次は、ミンティを突き飛ばして、巨大甲冑の攻撃を受けようとする。

 それに気付いたカエンが、ワンテンポ遅くなって、健次に近づく。

 星影も、健次のまさかの行動に驚いて、はっとする。

 レロッサはいち早く、巨大甲冑の動きを止めようと、魔法を繰り出す。


 そして、カエンは叫んだ。


「健次ィイイイイイイイイイイ!!」




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