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デルタトライナイト  作者: 水原翔
第二章 フォグル工房編
27/64

第26話 「突入、ステラド遺跡」

【登場人物】

新山健次 …主人公

篠山皐月 …主人公の幼馴染(行方不明)

カエン  …健次のパーティーで、スカイベル学園受験生の1人。

星影ナツキ…カエンの連れ。同じくスカイベル学園受験生。

ミンティ・フォグル…元盗賊。盗賊団が壊滅したため、健次たちと行動をともにする。

ハーブ・フォグル…タルメ工業地区、フォグル工房の工房長。

レロッサ・アイスバイド…レリュール公国からの旅人。

クロウズ …スカイベル学園の試験監督官。


【状況】

現在地  :ラボンス「ベルフライム王国」タルメ工業地区

現在の目的:ハーブ・フォグル捜索

現在の状況:タルメ工業地区、フォグル工房で火災。その捜査をすることに。

 クロウズの提案で、事態の真相に近づけるかもしれない。そういうこととなって、健次たちは、ハーブ・フォグルを誘拐した可能性のある、“マギアス”と呼ばれる組織の本拠地へ、向かうことにした。クロウズは軍と調整を行って、許可も出たらしく、問題なく行けるようだ。


「軍は、付いてこないんですか?」


 健次は尋ねる。犯人とおぼしき集団がいるならば、彼らも動くはずだ。


「いや、軍は動かなかった」

「何故です!?」

「……レリュール国籍の会社やからやろ。立場上ノータッチなわけや」


 レロッサが答える。だからどうだというのだ。


「どういうこと……?」

「下手したら、レリュールに対しての敵対行為になりかねないかもってことよ」


 星影いわく、下手に軍が公式で動いたとすると、ベルフライムにとって良くないことととらわれるようだ。なんだかややこしい。


「だからこそ、君たちに学園長はお願いしたんだ。この現状を少しでも変えれるかもしれない……とな」


 クロウズはまっすぐな瞳でこっちを見る。

 健次は、事の重大さをだんだん分かってきた。

 けど、ここで下がってたまるものか。と。

 助けたいんだ。

 ヒーローに、なりたいんだ。

 

「あれ……」

「どうした?健次?」

「あ、いや、なんでもないよ」


 ヒーローに、なりたい?

 そんなこと、中学生になって、一度も考えたことなかったのに。

 何か、自分でもよく分かっていないけど、忘れかけていた何かを、思い出しそうな気がする。過去の自分の、小さかった頃の、本当に抱いていた、夢――。

 けど、考えても仕方がない。今優先すべきは、マギアスに行くことだ。


「……ここが、マギアスね」

「けど、誰もいねえぞ?」


 星影とカエンが、あたりを見回す。

 不穏な空気が流れる、怪しい工場には、人が誰一人としていなかった。

 前に、健次たちがケルタ鉱石を渡したときには、黒服の男たちが何人かおり、門から通らせまいと、厳重にしていたはずだ。

 それが今、もぬけの殻となっており、人の気配がしない。

 

「おかしいな……」

「アカン、見てみ、あれ!!」

「!?」


 レロッサが叫んだ瞬間、マギアスから何隻かの飛空艇が、離陸体制に入り、浮上していた。

 それも、健次たちが来たタイミングに近いように。


「くそ、我々が来ることを察知していたのか!?」

「……アタイ、追いかけてくる!!」

「ちょ、ちょっと!? 待ちなさいよミンティ!!」


 ミンティはその光景をみて、郊外の方へ走り去っていった。それを星影たちは追いかけようとするが、かなりの速さで追いつけなかった。


「……なんて足よ」

「早いね、ミンティ」

「しかしまずいな。これはアタリかもしれん」

「どないするんや? 嬢ちゃん追いかけるか?」

「とりあえず軍に至急報告する。居場所だけでも掴んで置かなければ」


 クロウズは水晶を取り出し、何か話し始めた。

 健次はその光景を見て、まさか携帯みたいな物がこの世界にあるのかと思った。

 まあ、それは後で聞くとして――。


「追いかけましょう!!」

「ああ、単独行動が一番危険だからな」


 ひとまず、ミンティが飛空艇を止めていた郊外に、健次たちも急ぐことにした。



 郊外にたどり着くと、ミンティが離陸準備をしており、なんとか単独行動するミンティにたどり着くことが出来た。


「乗り込むぞ!!」

「「「はい!!」」」


 クロウズの掛け声とともに、3人は返事をし、レロッサも後から付いてきた。なんとか浮上する手前で乗り込むことが出来て、間に合った。


「は、走ったぁあ……」


 健次は、息が上がっていた。

 こんなに全速力で走ったのは、初めてだったかもしれない。

 改めて、自分の体力の無さを実感する瞬間だった。

 他のメンバーは、健次ほど息を上げておらず、呼吸もあまり乱れていなかった。

 皆、走ることに慣れているのだろうか。

 健次は、体力をつけなくちゃいけないなと、心から思った。

 そして、ミンティのいる操縦室に入ると、マギアスで浮上した船を捉えたようで、全速力で追いかけようとする、ミンティの姿があった。


「ミンティ!!」

「んだよクソアマ」

「んだよじゃないわ。何一人で突っ走ってるの!? 危ないわよ!!」

「わーってるけどよ!!」

「まあそのことは後で良い。とにかく追いかけるぞ、これは君の船なのか?」


 クロウズが尋ねると、ミンティは複雑な顔をして


「アタイの船では、ねえよ。けど、アタイの仲間の、大切な、船だ」

 その返答に対して一人、レロッサ・アイスバイドは、船の外装や模様を見て、さっきから何も喋らずに、何かを考えていた。


「……レロッサさん? どうかしたんですか?」

「あ、いや、なんでもあらへん」

「出すぜ!!」


 機構用ゲートエンジンが起動し始め、恐らくミンティはフル加速のような状態になり、物凄い勢いでエンジンの回転数が増していくような音がする。


「ちょ、ちょっと!? こんなに急加速したらエンジンに!!」

「……今は爺ちゃんの行方が大事だ!!追いかけるぜ!!」


 ミンティは操縦桿を握りしめ、物凄い加速をし始める。

 息を上げていた健次も思わずびっくりして、そこら辺の棒に掴まる。

 ほんと、すごい急加速だな……。


「いたぞ!! 前だ!!」


 カエンが目視で確認すると、ミンティの船と同じくらいの飛空艇が3隻、どこかへ向かっていた。

 かなりの急加速をした船は、ものの数分で彼らにたどり着く。


「……来るぞ!!」


 クロウズが何かを察すると、飛空艇のタラップから、フード姿の人間が何人か出てきて、何かを唱え始めた。

 恐らく……魔法だ。


「チッ!!」


 火の柱。そう呼ぶにふさわしいものが、こちらの船めがけ、一直線に飛んでくる。

 それもかなりの大きさだ。まるで、シューティングゲームのレーザー光線のように。

 ミンティは、それを華麗な動きで回避する。が、正直この動きは、酔う……。

 健次は、気分が少し悪くなった。

 けど、そんなこと思っていられるか……。


「あれが、ゲートを使わない、魔法か」


 クロウズが、


「感心してる場合か!! 二度目がくるで!!」


 再び、向こうの集団が何かを唱え始めると、今度は物凄い暴風が、こちらを襲ってくる。

 その勢いで、飛空艇は巻き込まれ、激しく船体が揺れ動く。

 急降下や、急上昇を繰り返して、気分はまるでジェットコースターだ。

 健次はなんとか体制を立て直して立つ。

 ミンティは、舌打ちをしながらなんとか体制を保つ。

 左手で操縦桿を握り、スイッチを押すと、上からトリガー付きのスコープが、降りてきた。


「なにそれ?」

「備え付きのゲート銃だ。これで仕留める」


 船体の中央が開き、機関銃らしき物体が出て来る。

 ミンティは、右手でそのスコープを握りしめ、彼らめがけて撃つ。

 しかし、船体の制御と、攻撃を同時には、かなり難しいようで、船体が揺れ動き、おまけに彼らの船には攻撃が当たらなかった。

 それどころか、彼らも反撃を繰り返す。


「それ、僕にやらせてもらってもいい?」

「あ?」


 操縦と攻撃。

 その2つの動作を、ミンティ一人にまかせていいのか。

 健次はとっさに思って、ミンティの隣りに座る。

 気分は、悪いけど。

 黙って、見てられるか。


「これが、トリガー?」

「ああ……頼む」

「うん!!」


 ミンティも了承したようで、健次にそのまま攻撃の役割をまかせる。


「貴方、射的が得意なの?」

「わかんない!!」

「えっ……」


 わかんないんだ。

 けど、やりたい。

 好奇心もあるけど。

 ホントはそうじゃない。

 こんなに必死になるミンティを見て。

 心が揺れ動かないといったら、嘘になる。


「ミンティ、操縦よろしく!!」

「言われなくても」


 その光景を見て、星影はふっ、と少し笑い、カエンの方を見て。


「しょうがないわね。カエン、私達は甲板に出ましょう」

「おう、ぶっ飛ばそうぜ!!」

「足止めはワイに任せとき!!」

「降りてくるぞ!!」


 クロウズの言うとおり、敵の船の一隻が丁度真上にいるようで、そこから幾つものフードを被った集団が、降りてきた。

 何かを唱え、魔法陣が展開されると、彼らの手に剣が握られる。

 恐らく、魔法で剣を召喚したのかもしれない。


「……間違いないみたいだな」


 マギアスが、魔法反対派と関わっているかもしれない疑惑は、確信に変わった。

 クロウズは、背中の大剣を取り出し、構えた。

 カエンも、腰に据えた刀を抜刀し、火のゲートを発動させる。

 星影も、槍を取り出して、月のゲートを発動させる。

 レロッサはひょうひょうと敵の攻撃を避けつつ、弓のゲートを取り出す。


「遠距離武器でこんな近距離、大丈夫なのか?」

「問題ないで」


 そう言うと、レロッサの弓が、2つに分裂し、双剣になった。


「……ほう、分離か」

「せやで!! いくで!!」

「……ああ。2人とも、準備はいいか」

「ええ。」

「おう!! やっつけようぜ!!」


 小さな甲板の上に、次々とフードをかぶった集団が降りてくる。

 それを4人は次々にゲートを使い、倒していく。

 一方、健次とミンティは、船体操縦を維持しつつ、他の2隻の船の攻撃を避けながら、船の武器で敵を狙う。


「あたらない!!」

「……馬鹿みてえに撃っちゃだめだ。とにかく深呼吸して、ゆっくりトリガーに指を当てろ」

「う、うん!!」


 ミンティのアドバイスを受けながら、健次は攻撃を再び繰り返す。

 そして、その攻撃がうまく船にヒットすると、左にいた船に命中したようで、ゆっくりと地面に落ちていった。


「……ナイス!! やるじゃねえか」

「なんとかね」


 こうして、少しの時間、敵の攻撃と応戦している最中、急に4人が応戦していたフード集団が空中に浮遊し始め、船に戻っていった。


「あれ、もう終わりか?」

「……引いていくわね」

「あれは……」

「遺跡、やね」


 甲板の4人が、去っていくフード集団を眺めた後、先の方を見ると、何かが見えてきたようで、遺跡があるとレロッサは言った。


「……ふう。終わった?」

「止んだみてえだな」

「お疲れ様。やるわね健次。上出来じゃない」

「はは、なんとかね」

「……しかし、ここはどこや?」


 レロッサが船のレーダを見て、現在位置を把握しようとする。

 その問いに、クロウズが答えた。


「ステラド遺跡……か」

「ステラド遺跡?」


 ミンティがその言葉を繰り返す。遺跡は、ヘレビスと同様の作りをしており、上から見てもかなりの大きさだ。


「また、遺跡ね」


 星影が答える。

 ヘレビス遺跡と同じく、3大戦士に関わりがあるのだろうか。

 去っていく船は、その、ステラド遺跡へと、向かっていくようだった。

 ミンティの船も、ゆっくり着陸し、敵にわからないように、離れた位置に着陸させた。


「なあ、嬢ちゃん、この船ってレリュール製やろ?」


 着陸した瞬間、レロッサは唐突に尋ねる。


「そうだけど、それが?」

「いや、ただ聞いただけや」

「行こうぜ。爺ちゃんはよ助けなくちゃ」


 ミンティはそう言って、船から降り始める、健次や星影、カエンやクロウズもまた。

 レロッサはその後をついてきて、再び船を見つめ、呟いた。


「まさか、ここで見つかるとは、な」


 そうつぶやいて、レロッサは、健次たちを追いかけた。



 ★


 そして、そのステラド遺跡の何処かで。

 拘束されるハーブに、その光景を見つめる一人の青年。


「……おとなしく、してくださっているようで何よりですね」


 変な笑みを浮かべながら、青年はハーブに話しかける。


「おまえ、この前の……マギアスか」

「覚えていただいているようでなによりです!! ハーブ・フォグルさん。いや、我々魔法原理主義者の、最大の敵対者・・・

「……変な連中とおもっておったが、なるほど。ワシを誘拐した理由もそれか」

「ええ。私たちは王国に、いえ、ラボンス全土に、魔法の素晴らしさを教えるべく活動しております」

「能書きはいい。最初から、このつもりだったんだな」

「ええ。ただ、貴方の命までは、奪うつもりはありませんから、ご安心を。ただし、今の所は、ですが」

「ラボンス政府があんたらの望みをやすやすと受け入れるはずがない。ワシを捕らえたって、意味などないぞ!!」

「まあまあ落ち着いて。貴方は分かっていないのです。ゲートがいかに忌々しいものであるかを。汚らわしいものであるかを」

「何を!! 魔法で人は死んだ!! お前らこそ忌々しい!!」

「ほんとうに、あなたは、あなた方は、なにもわかっていない!! この、魔法の素晴らしさを!!」


 そう青年が唱えると、青年の周りのフード姿の連中が、一斉に魔法を唱え始めた。

 しかし、その瞬間、ハーブの前にいたフードが、急に炎上し始め、焼け焦げて消えていった。


「……!?」

「あらあ、貴方は選ばれなかったのですか。残念ですね」


 その光景を、卑劣な笑みを浮かべ、笑う青年。


「これを異常だと思わないのか!?」

「何がですか?」

「……狂っている」

「私達からしたら、ゲートで縛り付けるあなた方のほうが、狂っていると思いますけどね」

「くっ……」


 ハーブは、ただ、その異様な光景と、奇妙な人物たちを、ただただ見ておくしか、なかった。


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