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デルタトライナイト  作者: 水原翔
第二章 フォグル工房編
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第25話 「捜査、マギアス」

【登場人物】

新山健次 …主人公

篠山皐月 …主人公の幼馴染(行方不明)

カエン  …健次のパーティーで、スカイベル学園受験生の1人。

星影ナツキ…カエンの連れ。同じくスカイベル学園受験生。

ミンティ・フォグル…元盗賊。盗賊団が壊滅したため、健次たちと行動をともにする。

ハーブ・フォグル…タルメ工業地区、フォグル工房の工房長。

レロッサ・アイスバイド…レリュール公国からの旅人。

クロウズ …スカイベル学園の試験監督官。


【状況】

現在地  :ラボンス「ベルフライム王国」タルメ工業地区

現在の目的:ハーブ・フォグル捜索

現在の状況:タルメ工業地区、フォグル工房で火災。その捜査をすることに。

 フォグル工房の火災と、ハーブ・フォグルの行方を探るため、

 健次とミンティは、フォグル工房に話を聞く役目となった。


「健次、アタイに思うところがある」


 捜査開始した開口一番、ミンティは気になることを言い始めた。


「聞かせて」

「ああ。アタイらが一番最初に来た時、変なやつが、爺ちゃんのとこに来てたろ?」

「変な、奴……?」


 健次は、ミンティに言われて思い出す。

 ハーブ・フォグルが、口論していた、全身真っ黒の青年。


「たぶん、そいつが関わってるかもしんねえ」

「どういうこと?」

「似てたんだ。爺ちゃんを誘拐したやつに」

「……!?」


 健次は、フォグル工房の火災の時に、ハーブ・フォグルを誘拐した、名乗るほどでもないと語った青年を思い出す。彼は最初に見かけた時全身真っ黒のスーツで気が付かなかったが、ミンティの言うとおり、顔が似ていたのかもしれない。


「だから、そいつに詳しいやつをまず、当たってみようぜ」

「分かった。いこう」


 ミンティに連れられ、解体作業中の作業員達に話を聞き始める。

 皆、作業で忙しそうだったが、ミンティの質問には的確に答えてくれていた。

 3年も工房を離れていたミンティだったが、どうやら工場の職員には信頼されているらしい。

 それは単に、ハーブ・フォグルの孫娘である。という理由ではなさそうだ。

 ミンティは、言葉遣いこそ荒いが、一人ひとりに挨拶して、状況を聞いたり、指示を的確に出したり。と、てきぱきとこなしている。

 おまけに、健次と一緒に通り過ぎただけでも、50人くらいのスタッフはいたのに、全てのスタッフの名前を覚えて、話しかけているのだ。

 健次だったら、クラスの人達ですら、名前を覚えていない人がいるのに。


「3年間開けてたのに、よく名前覚えてるね」

「まあ、アタイはここで生まれて、ここで育ったからな。家族見てえなもんだ。それなのに、アタイは皆を裏切るようなことをして、こんなことになってよ……もう、何も失いたくねえんだ」

「ミンティ……」

「あ、多分アイツだぜ。スコット、ちょっと時間あるか?」

「ああ、お嬢。Dブロックは軽微な損害ですから、すぐ初められそうですけど」

「いいや、そのことじゃなくてよ。アタイが帰ってきたときの話なんだが」


 スコットと名乗る従業員は、青年のことを言うと、ああ、あいつですかと答え、すぐにわかったようだった。


「最近ウチにしつこい営業をしてくるやつですよ。外資系で、レリュール人だったかな」

「企業名は?」

「確か、マギアスとか言ったような……」

「マギアスって、聞いたことねえな」

「ほら、最近タルメに工場を立てた連中ですよ。ケルタ鉱石を大量に輸入してて、何造ってるのか全くわかんない、怪しい連中っす。親方に業務提携の依頼があって、速攻断りましたけど。何度も食い下がってきて、さらに上から目線なものだから、さすがに親方も頭きたようで」

「え……? ミンティ、それって」


 健次は、思い当たる節が合った。

 星影が言っていた、3000エデルを取得するクエストで、ケルタ鉱石を渡すクエストだ。

 ミンティは、やっぱりかと小声でつぶやいて、唇を噛み締める。


「あの連中かもな」

「う、うん。……あれ、どういうことなんだ?」


 フォグル工房の事件に、自分たちが関わったクエストが関係している……?

 そんな可能性が出てきたけれど、これは一体何を意味してるんだろうか。

 考えても分からなかった。


「とりあえずありがとうスコット。奴らのことは分かった」

「いえいえ。お嬢の役に立てたようでなによりです」


 スコットと別れ、ミンティと話し始める健次。


「怪しいな……」

「うん。確証はないけど、その人達が関わってる可能性もあるかもね」

「爺ちゃんに対する逆恨みか?」

「うーん……」


 けど、それなら、星影たちの言っていた、“反対派”とは結びつかない気がする。

 本当に、営業を断られただけだったのだろうか。

 考えても、分からない。

 このことは、ちゃんと星影達に伝えるべきだろう。

 だけど、直接的に結びつかないのなら、少しでも結びつくための証拠探しをするべきなのではないだろうか。


「当時の事、もっと詳しく調べたほうが良いかもね」

「火災の前後ってことか?」

「うん。その当時、スタッフさんたちに、変わったことがないか、聞いて回るとか」

「だな。クロウズって人にも言われてたし」


 こうして、2人は聞き込みを再開し、火災当時の状況について知っている従業員に、片っ端から話を聞いた。


「疲れるな、これ」

「うん。思ってたより重労働だね。刑事ドラマみたいにサクサクと話進むわけじゃないし」

「ん? ドラマ……?」

「あ、いや、なんでもないよ。特に気になること、なかったよね」

「だな。工場は夜動かねーことになってるし、あとは警備員ぐらいか?」

「警備員さんって、今やられちゃって診療所なんじゃないっけ」

「いや、無事な奴がいたはずだ。いってみようぜ」

「了解」


 そして、2人は警備員たちがいる守衛室へと向かった。


「おい、ちょっと話ききてえんだが」

「お嬢!? こちらは現在問題ありません……!!」

 戦闘用の甲冑と、剣をもつ警備員が、ミンティをみて畏まる。

 やっぱり、お嬢さんなんだなと、健次は改めて思う。


「ああ、まあそんなことはどうでもいい。それよりききてえんだが、火災当時の状況について」

「ホントに不覚でした。事件当時は、巡回担当が不審人物を目撃して、向かおうとした矢先で、いま診療所にいるやつから連絡があったんです。それで向かおうとした他の警備員も、奴らにやられてしまって」

「奴らというと、フードに身を包んで、ゲートを使わずに魔法を使う集団だったですか?」


 健次は、犯人について尋ねる。大事なことだ。


「はい。そうでした。一体奴ら、何者なんでしょうか」

「爺ちゃんの警護担当者って、ここにいるか?」


 ミンティは、気になることがあるようだ。


「いえ。今軍に取調中です」

「そうか」


 その後、警備員に詳しく話を聞いた。

 事件時刻は深夜。工場の稼働も終わり、警備員が巡回していた矢先、突如奴らは現れて、警備員を襲っていったそうだ。

 幸い、けが人だけで済み、死傷者はいない。

 重症な警備員もいたようだが、今診療所で治療中のようだ。


「しかし、入り口以外は結界を張ってあるのに、どうして奴らは……」

「けど、事件は起きた。アタイらも何か対策しねえと、マズイぜ」

「……そうですね」

「ちなみに、結界を破った痕跡はあったのか?」

「いえ、というか、突然現れた・・・・・感じでした」

「突然、か」

「気になるね」

「ああ、まあ戻って報告だな」


 こうして、ある程度のスタッフから聞き込みを終え、所定の場所に戻る健次とミンティ。既に、カエンに星影、クロウズにレロッサが、その場に待機していた。


「戻ったか」


 クロウズが言う。

 戻ってすぐ、6人の情報交換が始まった。

 最初に、星影たちのグループが話し始める。


「まずは、私達ね。フォグル工房を出入りする、いろんな関係者に当たってみたわ」

「これが、全く収穫なし。どいつもこいつも、事件のことは初めて聞いたみたいだぜ」


 カエンは、お手上げだぜ~といいながらため息を付いていた。

 外部の人間は、あまりこの出来事を知らないようだった。


「情報統制が敷かれているから、当然のことかも知れんな。まあご苦労だった」

「まあ、しゃあないで」


 クロウズは、仕方ないさと呟きながら、話し始める。


「俺達は、軍に状況を聞いてみた。軍の状況によると、魔法の使用痕跡から、ゲートではなく、オリジナル魔法を使った痕跡があったようだ。それに、向こうからの犯行声明もあったようだからな。間違いなく、“ゲート反対派“か、それに準ずる連中の犯行とみて、問題ないだろう」

「犯行声明ですって!?」


 星影は驚く。


「ああ。公にはなってはいないが、連中はハーブ・フォグルの人質の代わりに、フォグルゲート工房の生産停止要求を突きつけてきた」

「送り主は、そのゲート反対派だったんですか?」

「いや、出処は軍で捜査中だ。しかし期限があってな。明後日の日没までにその事実が確認できなければ、ハーブ氏の命の保証はないとな」

「ちくしょう!!」


 クロウズから伝えられたことに、ミンティは激情する。

 無理もない。自分の親が誘拐されて、その上命の保証までないかもしれないときた。


「私からは、以上だ」

「健次は、何か収穫はあった?」


 星影が尋ねる。

 健次は、聞き込みの状況を詳しく離した。


「マギアス……か」


 レロッサが反応する。やはり、レリュールの会社だから、レリュール人である彼は、何か知っているのだろうか。


「何か、知っているのか?」


 クロウズが尋ねる。


「いや、レリュールではあんまり知られとらん。けどワイの知り合いから聞いたことはあるんや。ちょっとヤバい組織らしい」

「というと?」

「詳しい内容まではわからん。けどなんか密輸して、ヤバめなもん造っとるという噂は、聞いたことあるで」

「……きな臭いな」

「ちょ、ちょっとまって健次。私達が受けたクエストの受け渡し先が、その“マギアス”だったの?」


 意外にも、星影は一番驚いていた。いろいろと調べてあって、彼女が持ってきたクエストであったから、てっきり知っていたのかと健次は考えていたが。

 何故そんなに、驚いているのだろうか。


「確証はないけど、多分。それがどうしたの? あくまで噂でしかないし、鉱石渡してエデルもらったじゃん?」

「……その話、詳しく聞かせてもらえないか?」


 クロウズは、どうやら気になるようで、健次達に尋ねる。

 星影は青ざめていたが、健次は話すべきだと思って、話した。

 ケルタ鉱石のクエストのこと、ブラッド家と合流したこと。ゾンビ化した、盗賊たちをカエンが倒したこと。


「……ふむ」

「あんたら、悪運強いなぁ。ケルタ鉱石って今国際条約で取引制限されとる、貴重な鉱石なんやで」


 レロッサが頭を掻きながら、ため息を付いて答える。


「え、ホントにそんなすげえのかあの鉱石」

「カエンは黙ってて」

「でもそれ、“奪われた”のを俺たちが盗賊から取ってそいつらに渡しに行っただけだぜ? なんか変なとこあんのか?」


 カエンが尋ねる。星影が青ざめるのも、レロッサが言うことも、よくわからない。

 だから、どういうことなのだろうか。


「んー。端的にいうと、あんたはんらは知らん間、悪い連中の取引に、加担した可能性があるってことやで」

「え、えええええええええええ!?」

「……ほんと、私って馬鹿だわ。ちゃんと調べるべきだった」

「まあ、その話はややこしくなるから、今は置いておこう。まずは、状況の整理だ」


 すっげー気になるんですけど!?

 まあ、クロウズの言うように、状況の整理が優先だ。

 犯行声明も出た以上、なによりもハーブ・フォグルの身柄確保が最優先事項だ。

 敵の正体がゲート反対派だという証拠が掴めても、その連中が何処にいるのか、全くわからないからだ。

 星影はコホンと咳払いをし、状況の整理に入る。


「そ、そうですね。ミンティ。まず、事件の前日に、“マギアス”を名乗る会社が、業務提携をフォグル工房に依頼したのよね?」

「ああ。スコットが言ってた。変な連中だから、爺ちゃん断ったみたいだけど」

「その依頼は、前々から続いていたの?」

「みたいだぜ。ほんとにしつこいから、爺ちゃんキレてよ……あいつら、ただじゃ済まさねえぜ」

「そして、事件は起こった。起こった場所って、詳しくわかります? クロウズ監督官」

「クロウズでいい。被害が大きかったのは、“飛空艇ブロック”だったそうだ。そこに設置された火の刻印ルーンによって、爆発が起きたようだ。これも、ゲートを使った痕跡はなかった」


 ダゼンスで言う、爆弾のような役割なのだろか。

 健次はここで質問するのは野暮な気がして、そのまま聞き流す。


「ありがとうございます。そして、私達はフォグル工房に突入して、例の魔術師集団と、遭遇した」

「強かったよなあいつら」


 コホン。と再び星影は咳払いをする。


「その後、魔術師の連中と、そのマギアスの営業担当だった男に顔が似ていた人が、ハーブさんを誘拐。これであってるかしら」

「ああ。間違いないぜ」


 聞き込みをして、犯行声明も出てて、彼らの目的がフォグル工房の停止だということがわかった。

 けど、未だよくわからない点がある。

 マギアスという会社が、今回の事件に関与している可能性だ。


「マギアスとゲート反対派って、何かつながりがあるのかな?」

「話を聞いただけじゃ、偶然かもしれへんな。ワイもヤバイもんつくっとるしかきいとらんし、反対派がでてきたタイミングと、たまたまかぶっとったかも知れへんで」

「そうね。結びつける確かな証拠もないし、理由もわからない」

「……それなら、本陣を直接調べてみる。というのはどうだ?」


 クロウズが、提案する。


「え、それって、大丈夫なんですか?」


 健次は尋ねる。ただ、怪しいと言うだけで調べられるのだろうか。


「一応、学園長の許可もあるし、軍の許可も出ている。私から軍に要請して、マギアスの捜査をできるように掛け合おう」


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