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デルタトライナイト  作者: 水原翔
第二章 フォグル工房編
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第23話 「捜査、ラボンスゲート革命」

【登場人物】

新山健次 …主人公

篠山皐月 …主人公の幼馴染(行方不明)

カエン  …健次のパーティーで、スカイベル学園受験生の1人。

星影ナツキ…カエンの連れ。同じくスカイベル学園受験生。

ミンティ・フォグル…元盗賊。盗賊団が壊滅したため、健次たちと行動をともにする。

ハーブ・フォグル…タルメ工業地区、フォグル工房の工房長。

レロッサ・アイスバイド…レリュール公国からの旅人。


【状況】

現在地  :ラボンス「ベルフライム王国」タルメ工業地区

現在の目的:王立スカイベル学園の第二次試験に備えるため、ナハト魔法地区へ向かおう!

現在の状況:タルメ工業地区、フォグル工房で火災。ハーブ・フォグルが誘拐されてしまった。

――騒動のその後。火は数時間後にベルフライム王国軍によって消し止められ、工場の全焼は免れることが出来た。

しかし、工場火災がもたらした被害はとてつもなく、おまけに開発中の飛空艇が1つ、何者かに盗まれてしまい、さらに工場長であるハーブ・フォグルが、誘拐されるという事件にまで発展した。

幸い、死亡者はおらず、皆襲撃したグループらにやられ、倒れていただけのようだった。

当然、健次たちもその場にいたので、翌日は、王国軍からの事情聴取を受けることになった。


「では、昨晩起きたことについて、一人ひとりどういう事をしていたのか、聞かせてください。あと、身分を証明できるものを」


 調査室。取り調べのように一人ひとり聞くのかと思いきや、担当の軍人がグループで集め、一人ずつ、様々なことを聞いていた。

 ベルフライム王国軍。初めてその人達をみる健次だったが、なんだか怖そうだな。というのが第一印象だった。

 軍服には、ベルフライム王国軍の紋章が、健次たちから見て右側に付いていた。

 星影とカエンは、マズいと思っていた。

 健次には、ラボンスで身分を証明できるものを作っていなかったからだ。

 ベルフライム王国軍は頭の固い連中であるから、健次に嫌疑をかけられる可能性がある。


「きみ、身分証は?」

「えっと、これじゃだめですかね……」


 健次は、自分のポケットから、中学校の身分証明証を出す。


「なんだこれは!? こんなものは証明にならない!! 貴様もしや!?」


 出した瞬間に、軍人が大きな声を張り上げる。

 しまった。

 ラボンスでの身分証明に、学生証じゃ意味がなかったと、健次は出して初めて気づく。


「まあまてや。そんな坊っちゃんになんもできへんやろ」


 レロッサが、軍人をなだめる。


「なんだ貴様は!?」

「ワイの顔に免じてや。無くしたんよその坊っちゃんは。問題はハーブっちゅう爺さんが何処へ連れ去られ、誰が連れ去ったんかが問題やろ」

「だから、貴様ら一人ひとりに事情をだな」

「……あんま出したくなかったんやけど、にいちゃんだけにはみせたる。ほら」


 意見を変えない軍人に、レロッサは自分の身分証明証を見せる。

 健次たちに聞こえないような声で、そして見えないように。

 その瞬間、取り調べをしていた軍人の表情が、緊迫したものに変わり。

 何か触れてはいけないような、そんな空気になった。


「……!?」

「ああ、言わんでええ言わんでええ。ただのレリュール人ってことにしてや」

「……わかった」

「……?」


 カエンとミンティ、健次は気にしていなかったが、星影だけがその2人の不審なやり取りが、気になっていた。


(……ただのレリュール人、というわけではないみたいね)

「ゴホン、さて、取り調べを再開する」


 その後、事情聴取は進み、健次たちは昨日起きた出来事を、包み隠さず話した。

火災の音のこと。

謎の魔術師集団のこと。

そして、ハーブ・フォグルが攫われ、飛空艇が奪われたということ。

 あくまでも、ミンティ・フォグルを助けようと、突入したこと。

 ミンティは、取調中は上の空のようだった。


 ようやく長い事情聴取が終わり、ほっとつく5人。

 犯人には関係ないことがわかり、開放された。

 かなり怒られたけど。


「いや~長かったぜ」

「草臥れるわね」


 カエンが背伸びしながら、詰め所の門を出る。

 プレートには、ベルフライム王国陸軍、タルメ支部と書かれていた。


「あの、レロッサさん」

「なんや? 新山はん」

「さっきは、ありがとうございました」

「気にせんでええで。別にラボンスで身分証ない連中だっておるから、軍もそんな気にせんかったやろ」


 健次がレロッサに礼を言う。


「……にしても、かなりあっさりと健次の正体を探求しなかったのは、何故なのかしらね」

「さあな。気が変わったかなんかやろ」

「そう……」


 星影は、レロッサ本人に何か聞こうとしたが、思いとどまる。

 隠してるからには、何か事情がありそうだからだ。

 


「にしても、ミンティ助けにいったただけなのにひどいよな、この仕打」


 カエンが、欠伸をしながら呟く。

 まあ、本来は王国軍の救出を待つべきだったんだろうけど。


「感謝はするぜ。けど爺ちゃんが……」


 悔しそうに、ミンティは言う。

 3年間お世話になった盗賊団がいなくなり、更に肉親のハーブまでいなくなるなんて、彼女にとっては相当ショックだったんだろう。


「まあ、軍の捜査を待つしかなさそうね。私たちにそんな権限はないわけだし」


 と、星影は言う。

 詰め所に行く前に星影に聞いたが、ベルフライム王国軍は、治安維持の組織で、日本で言うところの、自衛隊と警察と消防と救急の役割を、軍それ一つで済ませているようだ。

 それって、かなり大変なんじゃないかな。と健次は思った。


「せやな~けど時間かかりそうやで。何しろあの軍人の兄ちゃん、頭硬そうやし。ゲート使わない魔術師なんて、信用せえへんかったやろ」

「……そんなに不思議なんですか? ゲートを使わないことって」


 ラボンスは結構、ファンタジーな世界だ。ラボンスゲートという仕組みを知らなくて、健次がこういう世界に来たならば、昨日みたいな魔術師がいることに、不思議はないはずだ。

 今更だが、ゲートを使わずに、魔法を使うということが、どれだけ異常なことなのか、健次には理解できなかった。


「……ちょっと場所変えましょう。ミンティも疲れているようだし」

「だな、腹減ったし。メシくおうぜー」


 星影の提案で、場所を移動することに。

 さすがに、詰め所の前で長時間いるのは良くないと思ったのだろう。カエンも了承して、 近くのレストランに立ち寄ることに。

 テーブル席に腰掛け、話を再開する。


「さて、話の続きやけど……ゲート使わない集団が、何故珍しいってことやっけ? 変なこと聞くなぁ坊っちゃん」

「彼、ダゼンスから来てるのよ」


 星影が補足する。ラボンスの住民にとって、ゲートを使うことはごく当たり前のことのように聞こえる。


「ダゼンス? は? まさかあのダゼンスからかいな? 通りで何も持ってへんわけやな」

「はは、僕も未だによくわかんないんですけど」

「そりゃ、しゃあないな~。ま、じゃあなんも知らんわけやな」

「ええ」

「そならワイがまた教えたるで。元々、ラボンスの民は昨日の集団みたいに魔法をつかいよった。それが200年前、“ゲート革命”の話やな」

「へー」


 以外にも、カエンも知らなかったようだ。

 健次が言う前に言ったので、少しびっくりする。


「カエンも知らなかったの? ちゃんと勉強しなさいよ」

「いやあ、わりいわりい。歴史ってのはどうもとっつきにくくてよぉ~」

「まあ覚えとき。学生なら常識になる話やで。200年前、丁度ラボンス全土を揺るがす事件があったんや」


 レロッサは話を続ける。

 健次にとっても、ラボンス史で受験するわけだから、聞いていて損のない話だと思う。


「……事件?」

「そや。200年前は昨日みたいな魔術師が、ラボンスにわんさかおってな。ありとあらゆるものに魔法が使われよった。けど、それの致命的な欠点を、見つけたやつがおったんや」

「欠点?」

「そや。“魔法を使いすぎる”ことの欠点。まあ禁忌やな。それに触れた人間がおって、ラボンス全土から日の光が消えてな、天変地異が起きたんや」

「2000年前の3大戦士デルタトライナイトが解決した、悪魔の事件の再来だって言われてたわね」


 健次は、最初のヘレビス遺跡で目撃した、壁画を思い出す。

 悪魔か……。

 一体、どういうものなのだろうか。


「そうなんですか。因みに、その“禁忌”って……?」

「正直、誰も知らん。何者かによって隠蔽されておってな。とにかく、素の状態で魔法を使っちゃいけへんで~ってなるきっかけになったんや」

「具体的に、どうなっちゃったんですか?」


 禁忌、というが、それでどうなったのかが気になる。

 健次は、素朴にレロッサに聞いてみた。


「魔法が暴走したのよ。魔法が術者を上回ってね。中には魔法を使うだけで体全身が燃えたり、水になって消えたり。聞くに耐えないぐらい、大変な事件だったらしいわ」


 その疑問を、星影が答える。

 魔法が“暴走”。

 それによって、人間が燃えてしまったり、水になって消えたり、天変地異が起きたりと。

 かなり、危険な事件だったようだ。


「せやで。元々魔法を使いおった人間は、マナ、ようは魔力やな。それがどこから来とるか解明してへんかった。その仕組みを、きちんと原理を証明したのが、探検家のダン・マクワドルと、発明家のエルダー・フォグル。スカイベル学園長の祖先と、今のフォグル工房の創設者やね。それが見つけたんやで」


――マクワドル。

 そういえば星影に、スカイベル学園の理事長が、エド・マクワドルという名前だったことを聞いたことがある。学園には結構いろんな歴史があるんだな、と健次は思った。


「“ラボンスコア”を見つけて、それがマナの根源だということを突き止めたの。そこで2人は、異常事態にある魔法を制御するため、ゲートを作った。これが後に、ゲート革命と呼ばれるようになる、ラボンスの仕組みがガラリと変わった出来事よ」


 ゲート革命って、ダゼンスで言う産業革命みたいなものと想像していた健次だったが、いろいろと事件があったようだ。

 なるほど。それでラボンスの民は、“ゲート”を使うようになったのか。


「せや。つまりワイらが持ってるラボンスゲートは、元々魔力を“制御”し、安全に使うために持ってるもんなんや」

「そうだったんですか。けど、ちょっと待って下さい。200年前ってわりと最近だし、それまでは魔法は普通に使われていたわけですよね?」


 もし、危険性があるとしたら、1800年間もそんな魔法が暴走する事件起きなかった、ということに健次は疑問に思う。


「せやで」

「けど、200年前に事件は起こった」

「せや。まあ何故なんか解明したやつはおらへん。とにかく200年前は、その事件を食い止めるために、各国政府のお偉いさんや軍が必死になって止める方法を探してな。ようやく2人が見つけて、国際条約で“魔法”そのものをゲートなしで使うのを禁止にしたんや」

「ちょっと待って。じゃあ昨日の人達って……」

「せや……条約違反。まー犯罪者やな」

「黒服と直接関わっているかどうかはわからないけど、恐らく犯行グループの関係があることは間違いなさそうね。所謂、“反対派”ってことなのかしら」

「鋭いなぁ星影ちゃん。ワイもその線、あると思うで」

「おい、どいうことだ、分かるように言えよ!!」


 カエンが、よく理解していなかったようだ。

 確かに、複雑な話であることは違いないだろう。

 そこでレロッサは咳払いをし、話を続ける。


「ゲート造って、魔法制御できて、魔法の暴走は起きへんくなった。それで問題は解決したんや。表面上はな」

「……この話は、続きがあるのよ」

「魔法原理主義者、つまりゲート反対派って聞いたことあらへん?」

訂正点

ゲート革命の時期

2,000年前⇒200年前に変更。

該当箇所の話も変更してあります。

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