第22話 「謎の魔術師」
【登場人物】
新山健次 …主人公
篠山皐月 …主人公の幼馴染(行方不明)
カエン …健次のパーティーで、スカイベル学園受験生の1人。
星影ナツキ…カエンの連れ。同じくスカイベル学園受験生。
ミンティ・フォグル…元盗賊。盗賊団が壊滅したため、健次たちと行動をともにする。
ハーブ・フォグル…タルメ工業地区、フォグル工房の工房長。
レロッサ・アイスバイド…レリュール公国からの旅人
【状況】
現在地 :ラボンス「ベルフライム王国」タルメ工業地区
現在の目的:王立スカイベル学園の第二次試験に備えるため、ナハト魔法地区へ向かおう!
現在の状況:タルメ工業地区、フォグル工房で火災発生。
「おいおい……なんだこれ」
突如、謎の爆発とともに発生した、フォグル工房の火災。ミンティたちの安否を確認すべく、王国軍が来る前に中へ突入した健次たち。
レロッサ・アイスバイドによって開かれた道を進み、中へと突入すると、フォグル工房の警備員らしき人達が、皆倒れていた。
「惨いわね……」
星影が呟く。
「どうしよう。助けないと」
健次は、「この人達を助けないと」と思って、近づこうとした瞬間。
レロッサが止める。
「いや、もう手遅れや。それに。本来の目的があるんやろ?」
本来の目的……。
「……そうだね」
「ここは軍に任せて、先に行こうぜ健次!!」
カエンが先陣を切る。
見過ごせない現場だが、今は緊急事態だ。仕方がない。
「う、うん……!!」
「どうやら、ただの火災じゃないようやな。こいつら、誰かに倒された形跡があるで」
「……。気を引き締めていきましょう」
レロッサの魔法、洪水で、辛うじて進むことができる健次たち。それでも、金属が燃えて、とてつもない悪臭と、炎による熱は、防ぎきれていない。
でも、ミンティを助けなきゃ。
「うん!!」
「おう!!」
「せやな!!」
レロッサの洪水を続けたまま、奥へと進む4人。
そして、火災現場の近い、爆発したところへ向かう最中だった。
「敵影4、来るぜ……!!」
カエンがそう叫ぶと、炎の中から全身ローブで身を包み、顔を隠した集団が、突如現れ、爆炎の炎を飛ばし始めた。
4人はとっさに左右に別れ、火の玉を交わす。あんまりレロッサから離れると、耐火効果がなくなってしまう。気をつけなければ、自分の体が焼け焦げてしまう。
「くっ!!」
「魔術師ね。ブラッドでもないようだけれど、何者……?」
「ナツキ見ろ。あいつらゲート使ってねえぞ!!」
「なんですって!?」
カエンの言うとおり、魔術師らしき4人の集団は、ゲートのようなものを出さず、両手だけで魔法陣を描き、炎を出しているようだ。
一体、どういうことなんだろうか。
けど、そんなこと、考えている余裕なんてなさそうだ。
「相手しとる場合やないで。まずは突破や!!……氷の球!!」
レロッサが、耐火効果の魔法を出しながら、氷の球を、行く手を塞ぐ4人の元へ。
「いくで!!」
「すげえ……」
レロッサが進路を作る。カエンと健次はそれについていく。
すぐに立ち、追いかけようとするところを、星影が月の魔法で足止めする。
「喰らいなさい!! 月の重力!!」
星影お得意の重力魔法で、敵の動きを止める。これで時間は稼げるはず。
「ナイスやで星影ちゃん!!」
「さ、先に進むわよ!!」
レロッサとカエンの先陣で、爆炎の中を通り抜ける。
「爆炎があったのは、この向こうやな?」
「ああ。間違いないぜ」
とある工場の手前まで来る4人。周囲の状況を見回すと、フォグル工房全体が火事にあっている。というわけではないようだ。
「飛空艇開発ブロックが主にやられているわね」
星影は、昨日フォグル工房を訪問した際に、フォグル工房の構造を覚えているようだった。
かなり炎が広がっており、ここが何処だか分からない中。すごいなと健次は思う。
「せやな。さっきの連中と良い、間違いなく“放火”やろ。何を狙っとるんやろな」
「そんなことはどうでもいい!! 早く行こうぜ!!」
「……それもそうね」
「うん!!」
「きり無いな。また来るで」
そうレロッサが言うと、さっきのローブをした連中が、6人くらいで押し寄せてくる。
「どうやら乗り切るしかねえようだな? ケンジ、いけるか?」
「う、うん。なんとかやってみる!!」
本来の力を出せていない。ケンジのペンダントを握りしめ、ケンジは構える。
カエンに買ってもらった小型のダガーを抜き取りつつ。
「ケンジ用に刀、買わねえとな」
「来るわよ!!」
先程の連中と同じく、魔術師の集団は空中に文字を描き始め、それぞれの属性で魔法を繰り出し始めてきた。
カエンはとっさに2人にかこまれ、動きが取れなくなる。
「へへ、リハビリにはちょうどいいぜ!! 喰らいな、業火、無双撃!!」
魔法陣が描かれる前に、物凄い速さの刀の突きで、前後の魔術師を何度も何度も業火で焼き尽くす。
師匠から教わった、新技。
カエンは、夢の中で師匠のことを思い出しつつ、この技を繰り出していた。
見事、命中する。
連中は怯み、動きが鈍くなる。
「どうよ、俺の新技!!」
「調子に乗らないことね。セイッ!!」
そうやってカエンが調子乗っている最中に、もうひとりの魔術師が、雷の魔法でカエンめがけて攻撃してくる。
それを星影は槍ではじき、魔法を唱えた。
「月の衝撃!!」
星影がそう唱えた瞬間、槍のゲートが光はじめ、小型の魔法陣が展開される。
その魔法陣が敵めがけて一直線にとおり、星影はそのルート通りに、槍を思いっきり投げる。
攻撃、見事に命中。
「わりいナツキ。てか腕あげたな」
「もう。まだまだね。まだ未完成だから、あまり出したくはなかったのだけれど」
ハイタッチする星影とカエン。
油断しているようで、星影に追撃のチャンスを与えている。いい連携だ。
残り、3人。
「すげえ……」
改めて健次は思う。この2人、強いなと。
「ゲートを使わへんやつとは、珍しいもんと出会うな。こりゃいい土産になるわ」
魔術師の一人が、小型のダガーでレロッサを狙い始める。
レロッサはそれをひょいひょいと避け、後ろに下がる。
「あんたら、喋らへんのか?」
「…………」
一言も発さない魔術師に、レロッサは、「ははん。そういうことか」と呟き、自分の弓を出す。
「言っとくけど、ワイの弓は遠距離だけやないんやで」
そうレロッサが言った途端、レロッサの武器である弓の本体、胴の部分が急にナイフのように尖り、弦が片方に収縮される。そして、弓は小型の2本の刀に分離した。
「れっきとしたレリュール製や。うらやましいやろ?」
「すげえ……」
「さ、いくで。とおっ!」
2つの刀で、斜め切りをするレロッサ。
敵の背後に立ち、排除する。
そして、自分も見とれている場合じゃないようだ。
あと、2人いる。
1人はカエンと星影がなんとか戦っているようだけど、もう1人だ。
健次が動かないことに気づいたのか、物凄い勢いで近づいてくる。
「くっ!!」
「…………」
力はない。だけど属性変化できるゲートは、自分にはある!!
健次は、ミンティが出していたような、雷を心のなかで連想する。
その瞬間、健次のペンダントが、黄色に変化する。
「喰らえ、雷鳴!!」
ミンティが使っていた技の、見よう見まねの雷魔法。
なんとかタイミングを合わせるが、敵は別の魔法を繰り出し、それを防ぐ。
一体、何を使ったのだろうか。
「効かないっ!?」
「…………」
「喰らえ、火炎斬ッ!!」
そんな中、カエンが健次と相手する魔術師を切り倒し、魔術師は床に倒れ落ちる。
「無事か健次!?」
「あ、うん。なんとか……」
うまく戦えなかった。健次は自分のゲートを握りしめ。そのことを後悔する。
このままじゃいけない。
強く、ならないと。と。
そう思いながら、あたりを見回すと、もう敵の気配はなくなっているようだった。
「もう来ないようやな。しかし驚いたで」
武器をしまい、レロッサは倒れた魔術師たちに触れる。
「……ゲートを使わない集団。初めてみたけれど、何者なのかしら」
星影も気になって、倒れた魔術師のローブを覗く。
見たこともないような複雑の紋章が貼ってあり、なにかしら、これ……と呟きながらその紋章を剥がした。
「ゾンゾ=ザス・ブラッドのゾンビでもなかったみてえだしな」
「まあそんなん気にしてもしゃーないやろ。考えてもわからないことなんてこの世の中にはいくつもあるし、あんま気にせんでええ」
「そうだけど……」
「ま、そういうことだぜナツキ。先に進もう」
「……」
「振り返るな、健次。先に行くぜ」
健次は、ただ立ち尽くして倒れた6人を眺めている。それをカエンは察したのか、声をかけ、そのまま連れて行く。
「なんか妙な事考えてるかもしれねえが、殺るか殺られるかってのは日常だ。相手が殺意があるんなら、俺達は倒さなくちゃいけねえ」
「うん、分かってる。わかってるんだけどさ……」
巨大甲冑でもない。
ゾンビでもない。
モンスターでもない。
本物の、人間の、死。
カエンの言うことは、頭では分かっている。
考えるな。考えちゃダメだ。
相手は敵だったんだ。それに意思疎通もできなかった。
なら、仕方がない。
けど、健次はココロの中で、自分の中には覚悟が足りていないんだと、強く実感する。
カエンや星影、レロッサたちにはあって、自分にはないもの。
覚悟だ。
強さもそうだけど、ちゃんと敵と向かうための覚悟。
それが足りなくて、結局今回はみんなの力を借りてしまったのだと。
「行きましょう。本来の目的を見失わないで」
星影の言葉で、我に返る。そうだ。
爆炎の最中、ミンティたちを助けなきゃ。
★
健次たち4人は、そのままフォグル工房での爆発元、ハーブ・フォグルがいるところへ向かう。5階建てのビルの屋上のようだった。たどり着くと、炎と吹き荒れる風の中、叫ぶミンティと、それを嘲笑うかのごとく立つ、一人の青年がいた。
「ミンティ!! 無事!?」
健次は叫ぶ。ミンティはその声に気づき、こっちを振り向くが、涙ぐんでいた。
一体、何があったのだろうか。
気づくと、青年の背後に、ホバリングする飛空艇が浮いていた。
「おやおや、遅かったようですね。けど、ここまで来たのは褒めてあげましょう」
「誰だお前は!!」
カエンが叫ぶ。
「名乗るほどのものでもないですよ。では」
そう言って、青年は飛空艇に乗って、どこかへ飛んでいった。
「待て、待てよぉおおおおおおおおおおお!!」
ミンティは叫び飛空艇を追いかけようとするが、このままいくと確実に落っこちるので、星影が腕をつかみ、止める。
「無茶よ、死にたいの?」
「爺ちゃんが……」
「ええ?」
「爺ちゃんが、誘拐された」




