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デルタトライナイト  作者: 水原翔
第二章 フォグル工房編
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第21話 「デルタトライナイト、燃え盛る炎」

【登場人物】

新山健次 …主人公

篠山皐月 …主人公の幼馴染(行方不明)

カエン  …健次のパーティーで、スカイベル学園受験生の1人。

星影ナツキ…カエンの連れ。同じくスカイベル学園受験生。

ミンティ・フォグル…元盗賊。盗賊団が壊滅したため、健次たちと行動をともにする。

ハーブ・フォグル…タルメ工業地区、フォグル工房の工房長。

レロッサ・アイスバイド…レリュール公国からの旅人


【状況】

現在地  :ラボンス「ベルフライム王国」タルメ工業地区

現在の目的:王立スカイベル学園の第二次試験に備えるため、ナハト魔法地区へ向かおう!

 フォグル工房火災から数時間前。

 ミンティと別れた後、健次たちはタルメ工業地区の小さな宿屋に宿泊していた。

 宿屋の1階には、夕食を振る舞ってくれるスペースが有り、そこで健次たちは、夕食を取っていた。


「盛りの量がすごいね……」


 最初についたケルタ村よりも、かなりの量を盛ってある夕食に、健次は圧倒されていた。

向こうが家庭料理ならば、こっちはダゼンスでいう学生が食べる食堂のドカ盛りのようである。

そういえば、健次は、祖母に、ごくたまにだが連れて行ってもらった覚えがある。


「このあたりは工場労働者も多いから、その量に合わせてあるのでしょうね」


 嗜む程度に、ゆっくり食べる星影。食べ方って性格出るよなぁ。

 皐月だったら、ぱくぱく食べていたような気がするし。


「こんなに喰えるかな」

「あら、カエンにはちょうどいい量みたいよ」

「もぐもぐもぐ……ぷはーっ!! うめえ!!」


 星影の言うとおり、カエンはこのドカ盛りをぺろりと平らげていた。

 それに食べるのが早い。食べ方にしても対象的である。


「ほんとだ」

「もっとゆっくり噛みなさいよカエン、太るわよ」

「えー。めんどい」

「もう……」


 一瞬星影が母親のように見える健次だった。本当に性格が出る。


「ま、これだけ食べたのだから、夜はかなり行けるわね」

「ん? どういうことだ?」

「ふふふ。まさか忘れたとは言わせないわよ……二次試験のこと」

「あ」


 カエンは不意を突かれた顔をした。


「あらあらカエン。貴方まさか忘れていたとは言わないわよね?」

「な、なあ星影、今日くらいは……」

「何が“今日くらい”よ!! 馬鹿じゃないの。貴方も快気したわけだし、今からやらないと試験に間に合わないわ!!」

「お、おう……」

「あはは……」


 そこに、泡の立つ飲み物を持って、一人の青年が声をかける。


「まあまあ喧嘩しなさんな」


 カエンたちよりも年上に見え、割りと綺麗な服を来た青髪の青年が、声をかけてきた。

 ちょっと似非関西弁なのが気になるが、育ちの良さそうな格好だ。


「誰……?」

「急に会話に入って悪い。ワイはレロッサ・アイスバイド。ちゅうーもんや。レリュールからの旅人でな。なんだかあんたらが楽しそうやったから、つい」

「ああ、便宜置籍船国の」

「よーしっとんなニーチャン。まぁそういうのしか売りのないちーさな国さかい、いろんな国を回ってみたくなったんやな」

「そうなんですか」

「自己紹介しないとな。俺はカエンだ」

「私は星影ナツキ」

「僕は新山健次です」

「よろしゅーな。同じ宿の宿泊客同士、仲良くしよーや」


 突然話しかけてきたレロッサ・アイスバイトという男の、話を聞くことになった。


「遺跡探検家……ですか?」


 星影は若干嫌がっていたが、健次にとっては新鮮だったので、その男の話を訊くことにした。レリュール公国は、星影から便宜置船国のことを聞いていたので、その国のイメージしかなかったからだ。

 何でもない会話でも、皐月の手がかりにつながるかもしれないから。


「そや。まあ自称やけどなぁ。各地を巡って、いろんな遺跡を探検するのが趣味でなぁ。そこで出会うねーちゃんとかと交流するのも醍醐味なんやで」

「遺跡……ですか」

「せやで。ベルフライムは古代遺跡が多くて興味深いわぁ。特に3大戦士デルタトライナイトの伝説も多く生まれとる」

「デルタトライナイト……」


 健次は呟く。エデンに言われた、3大戦士デルタトライナイト

 その手がかりは未だ、何も掴めていない。

 ひょっとしたら何か知ってるのかと、カエンはレロッサに尋ねる。


「あんた、詳しいのか?」

「詳しいっちゅーか。伝承で聞いた程度やな」

「知ってること、教えてもらえますか?」

「ワイの知識程度でよければやけど……まあそやな、ワイから歴史の勉強、レクチャーしたる」

「……まぁ良いわ。試験の知識にも関わってくることだし」


 こうして、突如現れたレロッサ・アイスバイドによる、3大戦士(デルタトライナイト)の説明が始まった。


「まず、何をもって3大戦士デルタトライナイトって言うのか、知っとるかいな?」

「はい。2000年前に悪魔が訪れて……」


 ラボンスに来て初めて訪れた、遺跡を思い出す。

 あれは、3大戦士デルタトライナイトになるための試練だった。


「せやな。それを倒すべく現れたのが3大戦士デルタトライナイトやな。その3人の名前、知っとるか?」

「……マスター、ストロング、コンディションの3人だと聞いてるわね」


 初めて聞いた。なんだその名前。


「せやせや。星影ちゃんよーしっとるなぁ。そやねん、完璧さを司る、エルザ・マスター、2000年前最強の戦士と言われたガルグ・ストロング、そして宇宙を夢見た学者、タレス・コンディション。この3人が編み出した合体技が、MSCマスター・ストロング・コンディションちゅー技や。これらを総称してトライスキルって呼んどる」

「MSC……?」


 3人の名前をただくっつけただけに聞こえる。

 エデンからは、トライスキルというだけは聞いていたから、具体的にどういうものかわからなかったが。


「まんまね」


 と、星影が言う。まさしくそうだ。正直ちょっとダサい。


「まぁネーミングセンスはあんまないのはワイも思うわ。けどその技は、全てのゲート技を凌駕した、超強力なエネルギー弾になるんやな」

「全てのゲート技を凌駕って、すげえなおい」

「伝承やから多少は大げさに伝えられとるかもしれへんけどな」

「なるほどね。トライスキルってそういうことだったの」


 エデンの言っていた事。

 入手方法まではまだ分からないが、トライスキルがどういうものだということがよく分かった。


「ちゅーか。あんたら伝承の人物らにそっくりやな~」

「どういうこと?」


 健次が聞く。


「エルザ・マスターは完璧すぎて読んだ本を完全記憶するくらいのタマだったそうや。そんな感じで知識武装するのが、星影ちゃんにそっくりやな~と思ってな」

「……馬鹿にしてます?」

「してへんしてへん!! 気を悪くしたら謝るわ。で、ガルグ・ストロングはカエンはんみたいな脳筋やったそうや」

「誰が脳筋かよ!! 俺だって考えるときはある!!」


 さり気なく馬鹿にしてると思ってカエンが怒る。

 まあまあと健次がなだめるが。


「あら、どの口が言うのかしら?」

「うるせえナツキ!! 俺だって勉強ぐらいするぜ!!」

「そう。じゃこの後その確認をしようかしら」

「おうおうどんと来いや!!」

「後にしなよ2人とも……」

「で、新山はんがそのタレス・コンディションにそっくりやな。ガルグとガルグはしょっちゅう喧嘩しとって、その仲裁をしてたってのがタレスらしい」

「そうなんですか……」


 タレス・コンディション。一体どういう人物だったのだろうか。


「星影ちゃん、かわええから、ナンパされんようにせんとな。どっちかがカレシかいな?」

「そういうのじゃないわ。私たちはスカイベル学園をめざしているの」

「あー受験生かいな。こりゃ時間とっちまったなぁ。いやーすまんすまん、話が長くなってしもーたな、ここはワイの奢りや」

「……い、いいんですか?」

「楽しい時間を取っちまったせめてもの詫びや、堪忍しぃ~」


 そう言って、勘定を払って、レロッサは去っていった。


「なんだったのかしら」

「まあ、おもしれー人だったな」

「ただの酔っぱらいに絡まれたようなもんじゃない……全く」

「まあまあ」

「で、2人とも、ちょっと崩れちゃったけれど、覚悟してよね」

「「ゴクリ」」


 こうして、星影の鬼の勉強特訓が始まった。

 元々、当初の目的であったから、健次自身覚悟はしていたが、星影の特訓は、思っていたよりもスパルタで、だいぶ詰め込みだった。

 その勉強特訓も深夜に差し掛かった頃。

 無事に終わって、くたくたになる2人。


「うえー……久々に頭使ったぜ……」

「星影、スパルタだね」

「まあな。まあこの調子でやってもらえば、なんとかなるだろ」

「だね。頑張ろ」

「おう」


 スパルタだったが、星影の教え方はうまく、かなり頭に入る内容だった。

 いろいろ考えてくれていて、準備してくれてるようで、思っていたよりもきつくなかった。

 ただその疲れを気付いたのは、横になった瞬間のようで、健次とカエンは、すぐに寝てしまった。


「な、なんだ!?」

「外からだ」

「ちょっと見てみるか」


 急いで外に出るカエンと健次。星影も気付いたようで、宿から出てくる。


「星影!!」


 カエンが叫び、星影も気づく。


「カエン。健次。かなりの音だったわね」

「ああ、ちょっとマズいんじゃねえか。これ」

「どこからかしら――」

「あ……」


 健次が音の方向に指をさすと、フォグル工房からかなりの爆炎が立ち上がっていた。

 周辺住民もかなり困惑しており、深夜だと言うのにかなりの人々がその炎をただ見ている。


「火災!?」

「おい、まさかフォグル工房からか!? ちょっと様子を……」


 カエンが行こうとするのを、星影が止める。

 確かに危ない。あの中へ行くのは。


「待ちなさい!! 危ないわよ!!」


 ――次の瞬間。

 再び爆音とともに、別の工場が爆発し、大炎上する。


「うわっ!!」

「ちっ……またか!!」

「ミンティたち、大丈夫かな……」

「原因はともかく、軍の到着を待ちましょう。私達も避難する必要があるかも」


 星影の言うとおり、工場の爆発は瞬く間に燃え広がり、タルメ工業地区の他の工場に引火せんばかりの勢いである。

 

「軍が、消火してくれるの?」

「ええ。おそらくタルメ工業地区に駐留する、ベルフライム軍の魔法兵士たちが、水魔法でなんとかしてくれるはずよ。……とにかく私たちは、ここから離れた方がいいわ」

「けど、ミンティが!!」

「健次。貴方の気持ちはわかるけど、あんな爆炎の中に一人で突っ込んでいくつもり?」

「けど……」

「俺が行ってくる」


 そう答えたカエンは、頼もしさというより、どこか焦っている感じがしていた。

 そのカエンを見て、健次はふと我に返る。

 自分があの爆発に、突入できる術もないし、安全もない。


「カエン!! あなたも無謀よ、バカじゃないの!?」

「大丈夫だナツキ。俺は火のゲートだぜ? 燃えてたまるかっての……」

「ちょ、ちょっとカエン!! もう……」

「追うよ、星影!!」

「馬鹿じゃないの!? 死ぬわよ!?」

「……仲間が死んでさ、せっかく肉親に会ったのに。こんな最後じゃあんまりだ!!」


 ミンティ・フォグル。ハーブさんとの関係は健次にはよくわからなかったけれど、少なくとも彼女は3年間、盗賊団とともに活動していた。

 その盗賊団員全員が、ゾンゾ=ザス・ブラッドによって、ゾンビ化され、カエンの手によっていなくなってしまったのだ。

 カエンに直接的な非はないにしても、カエン自身どこか心残りだったのだ。

 そして、健次もまた。


「待てや、にーちゃんたち」

「え?」


 夕食に絡んできた、レロッサ・アイスバイドが現れる。

 

「レロッサさん!?」

「ワイに任せとき!! ワイの魔法は水。氷魔法のエキスパートや」

「……嘘くさ」

「まあ百聞は一件にしかずや。まずは見てみい」


 そう言って、レロッサは燃えたぎる炎の真ん中で、何かを唱え初めた。

 レロッサは、自分の武器を出す。弓だ。

 弓の中央部に、水色の水晶がある。それが恐らくゲートだろう。


洪水フルード!!」


 レロッサがそう唱え、彼は弓の弦を引き、離した。

 その瞬間、炎に包まれた空間に、ものすごい量の水が、弓から放たれる。

 矢もないのに、まるでそこから矢が飛んでいるかのごとく。


「すげえ……」

「急ぐで!!」


 4人は、燃え盛るフォグル工房の中へ、入っていった。


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