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デルタトライナイト  作者: 水原翔
第一章 ラボンス突入編
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第0話 「輪廻、旅の終わり」

 音もなく、右も左も上も下もない。そんな宇宙で、僕たちは戦っている。

 手が、震えている。

 緊張?

 恐怖?

 ……いいや違う、興奮を押さえずにはいられないのだ。

 ようやく、こいつと決着をつけることが出来る。

 宇宙空間にぽかんと浮かぶ、大きな船。船の真正面には、巨大な人型が対峙し、互いに戦闘している。

 巨大な人型からは、際限なくエネルギー弾が飛んでくる。それに負けまいと、船からもエネルギー弾を発射。

 ただ、状況は人型が優勢のようで、弾が、船に次々と命中していく。

 船体が、大きく傾き始める。

 操縦室からは、ブザー音が鳴り響いていた。


「被弾! 破損率20%!」

「隔壁閉鎖。第5、第6ブロック壊滅」

 

 ――ダメか?

 乗組員と船長たちの、焦燥する声が飛び交っている。

 人型の攻撃を食らったようで、船体が大きく揺れており、船内のディスプレイには、被害状況が映し出されていた。

 その被害は甚大で、多数のブロックが破壊されている。

 船内の誰もが、圧倒的な力の差に愕然とする。


「バリアパワーを上げろ」

「バリアパワー、アップ……ダメです。持ちません!」

「ラボンスコア、オーバーロード、稼働限界です!」


 ――もう、ダメかもしれない。

 誰かがそういった。

 しかし、僕たちは諦めない。

 強すぎる……「敵」。

 普通に考えれば、倒す事なんて出来ない。無理だ。

 でもアイツは、いや、アイツと僕たちは、それを可能にした。

 もし、僕1人だったならどうなっていたことだろうか。


 成し遂げるための努力。

 その努力を支えてくれた仲間。

 仲間が生み出した、力。

 絶望的な状況でも、諦めない、僕たちがいる。


「やいおっさん、苦戦しているみたいだな」


 緊迫した操縦室に、1人の男の声。

 こんな状況にもかかわらず、落ち着いている。

 声の主である、長髪の男が現れ、それに続いて2人の男女が出てきた。その姿を確認した艦長は、息をつき3人のほうを向いた。


「……正直、あまり持たないぞ」


 状況は、芳しくないようだ。

 仲間はみな疲弊しきっている。

 だが、ここであきらめる理由がどこにある?

 

「大丈夫。私達には、トライスキルがあるわ」


 艦長の言葉に対し、彼女はそう言った。

 言葉が自信に満ちていて、今の状況をひっくり返せるんじゃないかって、期待感。


 ――きっと、いいリーダーになれるはず。

 彼女は、そんな完璧さを兼ね備えた力を持った。

 その完璧すぎる力を持つがゆえに、時に迷い、時に苦しんだ。

 けれど、今の彼女の瞳はまっすぐで、迷いがない。


「ああ、構うことはねえ、見せつけてやるぞ。俺たちの力を。MSCの力を」

 

 彼は、完璧ではなくとも努力し成し遂げる、屈強な強さを持った。

 彼の強さに2人がどれだけ救われたことだろう。

 彼の強さに2人がどれだけ励まされただろう。

 彼の強さは力ではない。消して諦めず夢を追い続ける心の力。

 僕は彼の芯の強さを知った時、彼に勝とうと努力した。

 よきライバルでもあり、よき友だ。


「いこう2人とも、最後の戦いだ」


 そして僕は、その2つの力を、調整する力。

 力なんて、なかった。

 でも、それでも僕自身にできる役割を一生懸命探した。

 この旅で、どれだけ自分自身と見つめあったことだろう。

 この旅で、どれだけ自分自身を憎いと思っただろう。

 この旅で、どれだけ自分自身を受け入れられたのだろう。

 3人の力がなければ、ここまで辿り着かなかった。

 これまでやってきたことは無駄じゃない。

 ……そう、確信する。

 

 ――待っていてくれる、あいつのためにも。

 僕たちのこれまでの全てを、この一撃に。


「行くわよ、トライスキル、マスター!」

「ぶっ飛びやがれ、トライスキル、ストロング!」

「これで終わりだ、トライスキル、コンディション!」

「「「デルタスキル・MSCマスター・ストロング・コンディション!!」」」

 3人の叫びとともに、艦隊から超巨大なエネルギー弾が放出され、あたり一面が光に包まれていく。



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