序章 旅の後
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淀んだ空気が漂う森の奥深くに、その城は建っていた。それは王国や帝国によくあるオーソドックスな城であったが道らしい道も無く、獣の類が一切寄り付かない城は、あまりにも不自然だった。
いつもは静寂に包まれている筈のその城は、喧騒に包まれていた。
塔の最上階で、響き渡る轟音を後目にデセイトフル・ペルソンは窓から空を見上げていた。
「空は何時でも、何処であっても綺麗だ」
そっと呟いた言葉に溜め息が混じる。謁見の間から聞こえる戦闘音は、幾つもの壁と距離があっても絶えず聞こえてくる。
かなりの時間その音は続いて、突然音が消え、静寂が訪れた。
しばらくして塔の階段を駆け上がる音が聞こえたかと思うと、ノックも無く部屋に部下が入ってきた。
「ペルソン様!」
「どうした」
「大変です! 陛下がっ……魔王陛下が勇者との戦いで崩御されました!」
デセイトフルは哀しそうに笑って、
「そうか」
ーーボンッ
部下を殺した。
炎を小さく爆発させただけの魔法攻撃だが、生き物の命を奪うには充分だった。肉が焼ける臭いが漂う。体が全体的に消し飛び、血肉が辺りに散らばっていた。
解毒剤と紫色をした板状の魔石を取り出し、まず一気に解毒剤を飲む。どす黒い液体が気管に入り噎せる。次にスイッチとなる板状の魔石を割った。これで城は毒に侵される。いつも通り、皆死に絶えるだろう。召使いも、部下も、ーーかつて共に旅した仲間も。
もうとっくに涙は枯れていた。それでも哀しさは消えない。慣れない。もう何回目だ。
堪えられなくなって、窓の空へ向かって叫ぶ。
「一体何時までこの茶番を続けるつもりなのか、 ……!」
世歴563年第2期:スィーア期。彼は仲間が居ながら、しかし孤独だった。